第4章 その11
満身創痍の黒騎士。その巨体が、ついにわずかに揺らめいた。エイリンは、その一瞬の隙を見逃さなかった。
「――今よ!」
彼女が放った渾身の一矢は、しかし、騎士の執念が勝り、再び空を切る。
「しぶとい……!」
その間にも、ルードが吹き飛ばされたリアンの元へ駆け寄る。
「リアン! しっかり!」
聖なる光がリアンの体を包み、傷を癒していく。彼は血を吐きながらも、力強く頷いた。
「これで……終わりなさい!」
フィアの魔力が、最後の輝きを放つ。彼女の全身全霊を込めた魔弾が、黒騎士の胸を正確に貫いた。凄まじい魔力の奔流が騎士の体内で炸裂し、その巨体はついにバランスを崩し、地響きを立てて膝をつく。
「やったか……!?」
だが――。
「まだだ……まだ終わらせぬ……」
邪神官の呪詛が響き渡る。黒い靄が膝をついた騎士を包み、その体を無理やり立たせようとする。まるで、壊れた操り人形のように。
「まだ動くっていうの!?」
「眠っていろ!」
リアンが、癒えたばかりの体で疾風のように駆ける。彼のレイピアが、鎧の隙間を正確に穿ち、騎士の胸に深く突き立った。
「しぶとすぎるわ!」
ミアルヴィもまた、騎士の首筋目掛けて漆黒の刃を振り下ろす。
二人の決死の追撃に、騎士は呻き声を漏らすが、それでもまだ、倒れない。
「――ここで、終わらせるッ!!」
最後に戦場を支配したのは、レンの怒りの咆哮だった。彼はバスタードソードを天に掲げ、ありったけの力を込めて、無防備な騎士の脳天へと叩き込んだ。
ゴシャッ、という生々しい音と共に、騎士の兜が砕け散る。黒鉄の巨体は完全に沈黙し、その瞳から赤黒い光が永遠に消え失せた。
「……終わった……」
誰もが安堵した、その瞬間。
「見事。だが、手遅れだ」
冷たい声と共に、邪神官の体から禍々しい光が放たれる。
「さあ、絶望に目を焼くがいい。我が主の御前の輝きに――!」
まばゆい閃光が世界を白く染め上げ、レンたちの視界を無慈悲に奪った。
「ぐっ……目があっ……!」
「くそ、何も見えない……!」
暗闇と混乱の中、仲間たちの悲鳴が響き渡った。




