21.修行3
クロトは朦朧としながら悪路を進む馬車の中で目覚めた。
頭がものすごく重い。寒気もする。どうやら流血しすぎて血が足りないらしい。
目の前にはニーナがいて、クロトが起きたことにきづいている。
「おい弟子。あの魔物をどうやって倒した?」
頭が重い中、思い出す。絶倫と巨根のスキルで倒したということなのだろうか。
正直に話すかどうするか、考えるのも辛い。
「絶倫…と巨根のスキルを発動して」
ニーナは笑顔でクロトの腹部を殴る。
「そんなスキルの効果ないでしょ」
ニーナはロッキーから受け取った資料の一つの胡散臭い本を指さしながらいう。
「私も長生きして、博識なの。人間たちの文字くらい読めるのよ。
この本にはそのスキルが書いてあるけど、どう見ても魔物殺せるはずないのは分かるわよ」
「………」
クロトは悩む。そもそも体調が良い時でも、あのウサギを倒せてもっともらしい作り話をすぐに
作れる気がしなかった。
「もういいわ。ロッキーからもらった資料にジョナサンという冒険者と仲が良かったと書いてあったわ。
そいつから何かしらのマジックアイテムを受け取ってたんでしょ?」
「…はい」
クロトは取り合えず、肯定してみる。
「他にマジックアイテムは隠し持ってるわけ?」
「いえ、もうありません」
「なら、いいわ。そんなアイテム使ったら修行にならないからね」
「頑張ります。でも体調がものすごく悪くてダメなんです。」
「それは大変ね。私が何とかしてあげる」
そいうとニーナはクロトの額を触り、何かブツブツ唱える。
ニーナは何かを感じ取ったようで、ロイに馬車を停めるように指示を出す。
すると近くで体調が良くなる薬草を集めるといい、馬車からでていく。
ロイはニーナがいなくなったことで仮眠を取ろうとする。
しかし、突如クロトの容態が急変する。
クロトが苦しそうに暴れだす。ロイには何が起きているかが分からない。
クロトの首輪の効果が発動して、クロトが息ができない状態になっていた。
ロイは青ざめている。クロトが意識を失ってる間、あのニーナが看病といって
クロトに地味にダメージを与えながら、すぐに死なない弟子は見込みがあるといって
お気に入りのようなことを言っていたのを思い出す。
もしもニーナが戻る前に死んだら、どんなとっばちりがくるかロイには想像がつかない。
最悪のことを考えるとニーナに殺される。
ロイは考える。一つのことを思いつき実行に移す。
積み荷の油を近くの木にかけて、火をつける。
火は瞬く間に大きくなる。これでニーナが気づけば、何とかなるはず。
ニーナは薬草を集めていた。馬車のある方角を見てみると何故か煙がみえ、
山火事が起きているようだった。
「なんてことなの…私が離れた隙にこんなことになるなんて」
ニーナは急いで馬車のある場所に戻る。
その方向から馬車がニーナの方に向かってくる。
火事で興奮した馬が暴走していた。暴走した馬車に飛び乗ると、馬を落ち着かせて止める。
そして、荷車にいる弟子を確認する。
息をしていない、心臓が止まっているようだ。長年の経験で電気系の魔法を当てれば、
心臓が動きだすことがあるとニーナは聞いたことがあった。
クロトを乱暴に荷車から放り投げる。
ひたすら電気系の魔法をクロトに当てまくることにした。
ロイは暴走した馬車を追って、やっと追いついたと思えば
クロトがニーナに電気系の魔法で何度も何度も撃ち込まれている状況で合流した。
それは恐ろしい光景だった。
手足は焦げていて、頭の髪の毛も全部ぬけ、死体を必要以上にダメージを与えているとしか思えない状況だった。
「やっと成功した」
ニーナはそういうと、ボロボロになったクロトを荷台に放り投げる。
「ロイ、出発よ」
「クロトさんを快方しないと…」
「あれが見えないの」
ニーナが指さすと、山火事がものすごい勢いで広がっている。
風向き的にこちらには延焼が広がってないが、いつ風の方向が変わるか分からない。
納得したロイは馬車を出発させた。
ニーナは採取した薬草を加工していた。
ロイは後ろをちらっと見た時に揺れる馬車の中でも器用に調合するニーナを見直していた。
普段はがさつで、でたらめな人と思っていた。しかし、仲間が危機的な状況なら
こんなにも頼りになって、薬の調合までできてしまう凄腕だと。
しかし、実際はニーナが採取したのは毒草ばかりであった。
それを弟子のクロトの体に塗りたくっていった。
クロトは揺れる馬車の中で生死の境をさ迷っていた。
自動修復で肉体的なダメージは回復できるはずだった。
しかし、ニーナがクロトに塗りまくった毒草が回復の邪魔をしている。
唯一の救いは毒を直接飲まされなかったことだった。
馬車は半日ほど走り続けて、運よく山火事の影響のないエリアまで移動できた。
今晩はここで野営することにした。
ロイはすっかり疲労困憊、クロトは満身創痍、まともな体調なのはニーナのみだった。
野営のためクロトの包帯をロイが交換するために外す。するとロイの手が炎症を起こす。
すぐに近くの小川で洗い流す。戻ると焚き木のあかりでニーナが何かを調合している。
ロイはそれが毒草であることをしる。
「そ…それは…毒草ですよね?」
ニーナは不機嫌そうにロイを睨む。
「森の民のエルフのやっていることを疑うのかい?」
「エルフには薬草かもしれませんが、我々人族には毒です。」
ロイはその薬を自身の左手に塗る。炎症が起きる。
ニーナは信じられないものをみたような表情でみている。
ニーナは自信の手にそれを塗る。ニーナには猛毒耐性があるため変化は無い。
「貴方のいう通りのようね。人族にこれが毒とは初めて知ったわ」
ロイもエルフと人族の違いだということで納得したようだった。
実際はニーナが毒草と薬草の区別ができないだけであった。
クロトに塗られた毒をニーナが落としていく。
翌日、クロトは外見は自動修復で治っているが、目覚める気配がない。
かなり弱っていた。
ニーナは地図をみて、ロイに当初予定していたコースから外れた位置にある町によることを
指示する。医者にクロトの様子を見せるしかないと判断した。




