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精霊の御子  作者: 壱原 棗
第6章:凍った心
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消えた少女の過去

 氷結の洞窟から撤退した一行は、ソレクに戻ってレムの救出の計画を立てていた。戦闘力を考えた時レムが凍結封印の予測できなかったにせよ、火属性のアレフが自由なのはまだこちらに希望がある。


「フラウを意識のあるまま連れて行くのは無理ね。アレフみたいに気絶すればいいんだけど」

「俺が勝手に気絶したみたいに言うな。子供の身体だろ?ならどこかに隙はある」

「レム寒いの辛そうなのに。はやく氷の中から出してあげないと」


 リマはソレクに着いてからレムの様子と戦闘の動きが鈍くなっていることに薄々気づいていた。

魔力の威力もおそらく下がっている。


「人質の意があるのか、あるいは成り行きか……」

「あの、そちらの銀髪のお嬢さん、もしかして氷結の洞窟から戻ってきたのですか?」


 四人が集会場に点々とあるストーブの近くで毛布で暖を取りながら話をしていると、先ほどリマとレムが出会ったシスターらに再び声をかけられた。


「はい。確かに女の子には会いました」

「キリアと名乗っていたわ」

「あの子に会ったんですね!?」


 感極まった様子で彼女は声をあげた。本人ではないけどね、とレイラは心の中でごちながら女性を見た。


「なぜこの街はあの子を保護していないの?孤児院の子供だったのでしょう?」

「二年前に失踪したんです」


* * * * *


 あの子が孤児院に来た時、耳が聴こない口の聞けない子でした。

 病院で診てもらった所生まれつきのようで、それでも笑顔を良く見せてくれていたんです。

 ただどうしてもコミュニケーションが難しい所が否めず、孤児の出入りが激しい子供たちの中で孤立していってしまった。


 それからしばらくして事件が起こりました。目撃した子供の話では、別の子供が嫌がるキリアの髪を引っ張って、頭に付いている髪飾りを触ろうとしたそうなんです。止めに入った大人もいました。

 でも気付いた時にはその場にいた全員が、ひどく身体が冷えた状態で意識を失っていた。キリアだけがそこから居なくなっていました。



「私たちはあの子の気持ちを何一つ汲んでやれなかった」

「その頃の子供はとてもデリケートよ。何か必ずサインを出していたはず。耳が聞こえないなら特に」

「私たちは……私はただ、あの子に生きてて欲しい。憎まれてもいい。できるなら幸せになるように祈らせてほしい…」


 レイラに指摘されてか知らずか、シスターがその場に泣き崩れてしまった。激しい後悔の感情が伝わる。リマが最初に感じた感情と、レムの感じた違和感はこれだった。


「これ以上、あの子のような子供を増やしたくない。この街としても最大限に孤児院のサポートをしてるが、土地の荒廃が増えるのに比例して、孤児も増えているんだ」

「世界が滅びへ向かっているんだ……」


 その場にいた面々がざわつき始めたところで、アレフがテーブルを叩いて立ち上がった。


「チッ、聞いてられるか。話は終わった」


 うんざりするようにそう吐き捨てるとアレフは不機嫌のまま乱暴に扉に向かって歩き出した。リマとディアンも立ち上がり、二人は街の人々へ会釈をするとレイラと共にその場を後にした。


「待って!」

「……」

「待ってよアレフ!」

「うるせえ、聞こえてる!!」

「あぅ…」


 建物を出てから雪道をずかずか歩くアレフにリマが声をかけても無視され、ようやく追いついた時には頭を鷲掴みにされた。掌がものすごく熱い。

(まずい、アレフすごく怒ってる)


「なんなんだあいつら、虫酸が走る」

「そう言ってやるな、アレフ。中心部から少しはずれればこういった状況はいくらでもある。戦争がないだけマシなんだろうけど、スラム化や治安の悪化は増える一方だ」


 ディアンに諭されてアレフはリマの頭部から手を離した。街の人たちの言い分もわからないわけではない。戦争が起きるような切迫した時代ではないがここ近年は自然災害が多く、そのせいで親を失った子供などが増加しているのだ。

 支援と復興の繰り返しが追いつかなくなってきている。


「おい、レイラ。あの洞窟の中で俺が全開を出したらどうなる」

「おそらく奥の空間そのものは土地の持つ純度の高い魔力で護られているから、崩れるようなことは起きないはず。ギルドの報告によれば上級クラスの魔物も討伐した記録があるから、激しい戦闘でも問題なさそう。流石に出口まで塞がないでほしいけど…」

「精霊と取引なんてうんざりだ。力尽くででもやる。移動はできるのか」

「できるけど、戦闘になった場合は貴方達に頑張ってもらわないといけなくなるわ」


 レイラが以前ディアンの光の魔力を借りて発動した光系の移動魔術は上級の術であり、術者が訪れたことのある地点に一瞬で移動できるものの、膨大な魔力を消費する。

 封印術(アブスター)で本来の魔力を伴わない今の彼女では、立て続けの戦闘に対処できないようだった。


「さっき戦ってみた時に感じたんだけど、フラウに接近して集中した方がパワー的にこっちが有利だと思う。できるだけ短期決戦の方がいい」

「フェンリルは私が範囲攻撃で注意を引きつける」


 ディアンとリマの案を飲んでレイラは魔術を発動させた。


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