手合わせ
「さーてと!俺も混ざってくるかな~」
「えー?」
「俺の姿でも拝んでろよ、な!」
出会った時はボウガンを使っていたので、サイモンが魔術を使う戦闘を見たことがなかった。確かレイラが自分の弟子だと言っていたっけ。
ガゼボを出て中庭の中央に移動すると、アレフとの手合わせが終わったのか、珍しくレムがディアンと剣を合わせていて、二人の真ん中でアレフがあぐらをかいて眺めていた。
「よっ!暇そうだな」
「まぁな……」
「俺と手合わせしないか?なんでも有りでいいぜ」
アレフは上の空でサイモンに答えた。目は真剣に二人を追っていたが、サイモンが言うなりハッとしてこちらを向いた。
「ただし!レガースは取ってくれ。あくまでも“手合わせ”だ」
俺は素手だし、と言ったころには彼は臨戦状態だった。
「いくぞ!」
「よーく見てろよリマ!」
「え!?」
リマが驚くと同時に、アレフの左足がサイモンに向かって伸びた。すかさず彼は右腕で庇い、間合いをとって魔術を放った。その魔術を見て、リマは彼の言った意味を理解した。右手から高速で放たれ、アレフの足元――芝生を捉えて草を切ったそれは。
「水!!」
「勢いよく噴射される水は、鋼鉄も切り裂くからね」
「レム、終わったの?」
いつの間にか剣を収めた二人が、リマの隣に並んでいた。
「うん。きゅうけーい」
「……あっ、焦げた!」
二人を見入るディアンがそう言うと、レムは苦笑した。
「あーあ。これ以上やったら庭師が泣いちゃうよ」
と言っている間にも空中で小さめの爆発音が響く。火の精霊の子であるアレフに対し、ずっと水系の魔術で対抗しているから無理もない。
「おにーさーーん。そろそろ止めてくれないと、さすがに我が家が壊れるんだけど~!!」
その一声で二人の動きがピタリと止まった。
* * *
「サイモンは水系の魔術が得意なのよ」
「リマの参考になればと思ってな」
夕食の席で、レイラとサイモンがそう言った。リマが彼に親近感が湧くのは、自分と同じ属性のコアを纏わせているためらしい。
「私にも…出来るようになるかな?」
「何言ってんだよ。出来るようになるって」
シルフィを本部から奪還するのに、話し合いとはいかないだろう。リマは顔を伏せて唇を噛んだ。
「にしても、“四霊柱”が動いてるんだな」
「その“四霊柱”ってなんだ?」
唸るように言ったサイモンを横目に、アレフが疑問をあげた。
「教会の神官――というより、『幹部』と言った方が正しいかな。教皇直属の部下四名で構成されてるんだけど、会ったのは僕も初めてだったよ」
「教会はトール国政の相談役でもあるから、教皇が騎士団を持っていて、普段はそれの指揮をしてるんだ。ほぼ軍人と同じ扱いだから滅多に聖職者として公には出ないんだけど…」
「で、いつトールに向かうんだ?」
「儀式が迫ってるから早い方がいい」
「レムの言う通りね。計算すると今から1週間以内には行われるだろうし」
「船の旅券は取れそうなのか?」
「それでしたら、明日の昼の便を手配できました。到着は夜になるかと…」
サイモンの問いに答えたのは、食後の飲み物を運んできた老執事だった。




