騎士と共に
アステール遺跡は王家によって管理されているため、条件付きで許可がおりた。さらに許可証の発行が必要になる。
王都を出発する時刻にある人物が現れた。レムと共にやって来たのは、ロゼからリマたちを護衛してくれた騎士の青年だった。
「本日付けで小隊から派遣されました。ディアン・ダグラスと申します」
「陛下が彼も連れて行けってさ~それが条件のひとつだよ」
「それだったらいいけど……なんでこの子?」
「アステール遺跡は王家の許可証がいるから、冒険者や関係者が発行の順番待ちをしてるんだ。今回、僕たちは割り込んだも同然」
「遺跡には騎士団が駐在しています。その責任者が私の兄でして……」
「つまりコネ、か」
「そう!僕らがあの塔に入る正当な理由が必要になる。」
「違うってば。ディアンと言ったわね。我々はどういう集まりか話は聞いてるの?」
アレフとレムの頭をレイラが軽くはたき、困惑した表情のままのディアンに向き直った。
「はい……お二人が精霊の子だと」
ディアンからしたらよくある上層部のイレギュラーな護衛をこなして帰還しようとしていたところを、突然政務官たちに囲まれなぜか国王の前でこの辞令を告げられた。国王が自ら事の経緯を説明したとなればこれは“勅命”の意味合いへと変わる。ディアンはこの状況にずっと委縮していた。
「そ。なら、よろしく頼むわね。敬語は結構よ」
「ですが……」
にっこりと微笑んだ彼女によって、反論は遮られた。
「よろしくねディアン君」
「ディアンでいいよ。こちらこそよろしく」
****
遺跡に向かって王都を南下すると小さな森に入った。抜けることには苦労しないが、規模のわりに木々が生い茂っているので暗い。そのため魔物の数が多いので、いつもより頻繁に遭遇する。
「俺が魔術やったら燃えるぞこれ」
「ちょっと視界が悪いな」
「かなり生い茂ってるしね~」
「……来るわよ」
レイラが警告するやいなや、アレフとディアンが一斉に駆け出した。剣を鞘から抜きながら、ディアンが魔物に斬りかかったところに、遠距離からジャンプしていたアレフの蹴りが、一番大きな魔物の真上に直撃した。叩き落とした足を軸に体を捻ると、もう片方でも蹴りを入れる。
そのわずかの間に、ディアンがその魔物の足を切り裂いた。むこうは問題なさそうである。
数が多いと判断したレムが、膝をついて両手を地面に付け、小型の魔物の周りに大きな穴を開けた。
「とどめ~!」
と、いつの間に移動したのか、樹の上から穴で足場を無くした魔物に向かってレイラが落雷を落とした。落ちる直前にディアンがリマの腕を引いて自分の方へ退かせた。とん、と背中に彼の鎧に当たる。
「おっと、大丈夫?」
「ありがとうディアン」
「無理に参加しなくていいのに」
「少しでも、慣れておきたくて。怪我してない?」
「大丈夫だよ。ありがとう」
レイラはリマの元気がないことに引っ掛かったが、無理もないなと思い声を掛けるのを止めた。前を向き直すと、光が差し込んでいて、森の終わりが見えてきた。
森を抜けると、すぐに巨大な建造物が見えてきた。天候にによっては、森を抜ける前からうっすら見えるらしい。高さはおよそ300mほどで、黒いレンガのような素材で少し粉っぽい印象を受ける。
入口に近づくと、その前には仮設住居のようなものが並んでいた。おそらく、研究者たちの宿泊施設などだろう。人が賑わっている中をディアンが先頭で歩き、1つの建物に入った。
騎士たちや冒険者が出入りしているので、きっとここが駐在所兼、発行手続きをするところだろう。ディアンは辺りを見渡して、目当ての人物を見つけて声を掛けた。
「兄さん!」
「おう。ディアンじゃないか!」
兄と呼ばれた人物は、久しぶりだな、と言って彼の頭をわしわしと撫でた。
「みなさん紹介します。兄のライアンです」
「アステール遺跡駐在小隊長、ライアン・ダグラスと申します」
ディアンと同じ薄青色の髪で、体つきは彼より一回り大きく身長も高い。兄の顔から一瞬で騎士の顔に戻って礼をした。
「陛下の親書と許可証です」
と肝心のそれをレイラが差し出した。彼はざっと目を通すと直ぐに、少々お待ちくださいと言って奥に戻った。
「いいな~お兄さん」
「リマちゃんは兄弟いるの?」
「ううん、一人っ子だよ。でも教会に預けられた子のお世話とかしてたかな」
「そっか~」
「……へぇ!!」
「まじか」
レムとそんな会話をしていたら、突然レイラとアレフが声を上げた。どうかしたの?と言えば
「ダグラスさん家の家族構成よ」
はい、もう一回。とディアンの肩を叩いた。
「えっと、兄が一人に姉が一人。弟が二人に、妹が二人…です」
「七人兄弟姉妹……」




