予言の場所
登城したリマたちは再び謁見の間で整列していた。レイラは国王に謝罪と事の経緯を述べる。国王にしてみれば、ティルナ教会の内政悪化が露呈したに過ぎない。
「いまいち状況が把握できんな。そなたたちは精霊になるのだろう?」
「陛下、ランティスは比較的中立とはいえ、僕を精霊の子と用立てる以上一枚噛んでいただかないと教会の思うつぼです。我が国が不利益を被ると言ってもいい。今回はシルフィ・ハーツに矛先が向いているだけ。いつレム・バウエルに向けられるかわからない。この役割に僕らの意志は反映しない。いつ逆手に取られてもおかしくないのです」
「ウェルスは彼女を諦めるつもりはありません。教会に帰化する意思がないのであれば引き続き保護対象です」
精霊の子の存在が完全に揃っていない今、世界情勢の権力勾配に精霊の子が巻き込まれている。今回のポーラ・アーネストの出現は、トール四家とティルナ教会の地固めをより強固にするものになるだろう。現教皇は教会に帰化したアーネスト公爵家の前当主だ。
「当事者の僕らにも知らせることがままならない“儀式”。それを知るために僕はこの人たちと協会本部のあるトールへ向かいます」
「親書の回答をこの場でいただいてもよろしいですか?」
レイラの目的のひとつ。ウェルス国王からの親書を届ける役目。シルフィの保護と精霊の子の捜索許可をもらうこと。
「親書の内容か」
「ランティス領土での捜索の許可をいただきたいのです」
「我々は新たな手掛かりを得ました。『塔の様な建物』だそうです」
何か考えているような間があって、国王は顔を上げた。
「一致する建造物は一つだな。……この国での捜索を許可しよう」
「ありがとうございます!」
「感謝いたします」
一行は城の別室で地図を広げながらテーブルを囲んでいた。レイラがシルフィの手紙と前回の預言を紙に書きながら、順を追って整理する。
【対の光、影となり一方は衰える 輝ける天馬の導きは 我ら精霊の加護によって護られる】
【月は涙し、偽りの光を映し出す 真の輝きは、己が秘めし力により 解き放たれる】
「シルフィはカロルで、『輝ける天馬』つまり光の精霊のことを預言した。その後、月の精霊の子が現れた」
「光の精霊は対。『太陽』と『月』」
「一方は衰えるんだろ?なら月の精霊は衰えてるだろ」
「『偽りの光』ってどういうだろう?光ってはいるんだよね?」
リマがこめかみに指を押しあてながらうーん、と唸る。
「僕は夢の方が気になるな。アレ当たるし」
「そうね、鮮明な手掛かりはアレ」
「で、レイラがさっき言ってた『塔のような建物』ってなんだ?」
「アステール遺跡、じゃないですか?」
と、珍しくリマが答えた。
「アステール遺跡…?」
「あんたはブレイズランドから出たことないものね」
繰り返したアレフにレイラがそう言った。
『アステール遺跡』とは、ランティス領土にある巨大な塔の建造物であり、天文学が発達した場所である。現在でも天文学の中心として、月や星の観測などの研究が行われている。
「この世界にある最も高い建造物、つまり塔ってわけ」
「そこに誰かが居たんだよね」
「じゃあ行ってみようぜ」




