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精霊の御子  作者: 壱原 棗
第3章:緋色の焔
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依頼

 場所を宿に移して村人たち話を聞くと、いわくその魔術師は最近何度か村で小火を起こしているらしい。

 それに対してレイラは差し出されたフルーツジュースを飲みながら結論を促した。


「で、その魔術師を捕まえて欲しいと?」

「あぁ。こう何度もあっては村長として黙っておけない。しかし逃げ込む場所が、我々には入れないのだ」

「ギルドか何かに頼めばよかったんじゃないの?」


 世界各地に設置されている独立組織であるギルド。かつて自警団や傭兵を生業としていた者が設立したと言われ、現在は「なんでも屋」のような立ち位置で人材を斡旋する組織となっている。

 各地から依頼される内容に応じて受注し、冒険者やどこにも属さない傭兵や魔術師などの大切な収入源でもある。

 もっとも、魔術師人口は少なく職に関しては引く手数多のため、ギルドを利用するような者はさらに少ない。


「魔術師がいないと入れない区域でな。もともとここらのギルドは武闘派ばかりで、魔術師はてんでいない」

「つまり犯人は身元が割れるおそれがあるのに、小火なんて中途半端なことを起こして逃げては立て籠っている、と」


 変なの、とレイラの後ろに控えていたレムがぼやいた。


「その場所は?」

「村から北東に外れたところに『熔岩の洞窟』と呼ばれる場所がある。そこに入って行くのを目撃されている」

「そんな灼熱地獄みたいな場所に行くのに、タダ働きは御免こうむりたいわ」

「もちろんそれなりの礼はする」



 『熔岩』と聞いてあからさまにレイラは顔をしかめる。

すかさずそう言った村長をレイラはじっと眺めてから、後ろを振り返った。


「どうする?御三方?」

「困っているようなので、助けてあげたいのですが……」

「戦闘になったらリマちゃんどうする?」

「そうねえ、依頼をされたのはあたしだから、一人で行ってもいいんだけど」

「ここで待ってるだけなんて嫌です。私は大丈夫!この人たちの力になりたい」

「その方があたしも心強くて助かるわ」


 大きく頷いたレイラがパンと手を叩いて立ち上がった。


「それじゃあとっとと済ませちゃいましょう。必要なものもあるし。お礼は後払いでいいわ。戻ってきてから決めてもいい?」

「もちろんだ。よろしく頼むよ」


 締まりのない感じが気にかったが、リマたちはレイラに従って宿を出た。



「なんか意外だなぁ」

「どうして?」

「あまり利は見込め無さそうなのに、人助けをするんだなぁって」


 目的の場所へ行くためには必要な物が多い。それらを揃えるべく、店で買い物をしている時に、レムが籠を抱えながらそうぼやいた。


「あたしはこの国の魔術師なの。陛下の手が及ばない綻びは少しでも取り除くわ」

「忠誠心?」

「まあね」

「……」


 国や主君への忠誠心というものは貴族にもある。ただ育った環境ゆえなのかレムにはどれも薄っぺらく感じてしまう。

 ハーフエルフであるレイラは幾星霜を経て抱いた重たいものなのだ。ある時代の国王が掲げた理想のもとに、ハーフエルフが自由に生きることを許された最初の国なのだから。


「恩に報いたい気持ちは、あなたにもあるでしょう?」


 先をゆくレイラが振り返り、目を細めて怪しく笑う姿に、敵わないとレムは感じた。

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