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世界統一

第1話 役小角


 皇居を辞した義経は、フチに紹介された役小角に会うために大和(現在の奈良県)の葛城山に向かっていた。その時、義経の頭の中に働きかける声があった。

「ぬしか。話は、フチ女からきいておる。ケムの者だそうじゃのう。それは、どうでもいいが、仙道の事を少し話しては見ぬか」

 些か驚いた義経だったが、

「仙道様は崑崙山にお住まいでございます。崑崙山に辿り着くのは、酷く難儀なものでございます。また、仙道様はあまり人と会う事を好まぬようでございます」

「では、崑崙山に辿り着けば、仙道に会える可能性はあるのじゃな」

 役小角は、修験道の開祖とされる。そのためもあってか役行者と呼ばれる事が多いようだ。彼は若い時に、孔雀明王の呪法を学んでいる。それから、各地を旅して歩き修験道の道を開く。本人はそれにもの足りなくなり、仙道への修行を続けている。フチと出会ったのは、各地を旅していた時の事であった。彼は、かれこれ500歳くらいになる。

 役小角は、崑崙山に向かう事に意欲的である。しかし、彼には1つ解決しなければならない問題があった。彼は、4~5歳の童子と暮らしていた。童子は、2年ほど前にある夫婦から託された者だった。と、言うより役小角の目に適い、夫婦を説得したという事の方が正しいようだ。彼は、この童子を連れて義経と同行するのがよいと思っている。

 義経は、彼を仙道に会わせる術を持っていない。しかし、仙道がきまぐれで里に来る事があるかもしれない。今のところ仙道のお気に入りは静だけである。巡り合わせとは、こういう事をいうのであろうか。役小角は、静の師となる。目的は、仙道と出会う事であるが、そのための一番の近道は静と共にいる事だと思っている。同時に、童子への教えも行わなければならない。彼は、崑崙山に向かっても仙道と会える可能性の低い事を知っている。仙道と彼とでは、あまりにもレベルが違い過ぎるのだ。先ずは、仙道の気を引く事から始めなければならない。

 カムイは、己を自然に委ねる。厳しい修行を徹底して行うわけではない。役小角は、厳しい修行を己に課している。目的は仙道になる事だ。但し、仙道になれるのかは、本人にも確信はない。そのためにも仙道と出会いたいと思っている。

第2話 Rの説明


 義経が、テムジンのところへ戻ったのは、1214年の事であった。テムジンから相談を受けた義経は、Rと接触を取る事に決めた。

「この世界の事をもっとよく知りたいのですが、教えて貰えないでしょうか」

 Rは,義経達の持つ知識を確かめた。やはり、知っているのは、インドとヨーロッパの事だけのようだ。

「君達の知らない土地の事から始めようか。先ず、シュリーヴィジャヤ王国の先には海を越えて、多くの島々と大陸が1つ存在する。次にエジプトのアイユーブ朝の南には広大な大陸が1つ存在する。最後に君達の知っている西方の先には、海を越えて大陸が2つ存在する。土地という意味では、これが全てだ。しかし、直面するであろう問題が3つある。1つ目は、インドだ。この地に私の知らない世界のタイム・トラベラーが居るようだ。この者達が、何者で、目的が何なのかは分からない。この時代に介入して来るのかも分からない。君達がインドに向かう時には、4門艦を発動させて同行させよう。1つは、アイユーブ朝の近くの民族問題だ。この地域を統治するのは、困難だろう。我々の世界の歴史では、解決に5千年必要とした。最期の1つは、君たちが西方と呼ぶ大陸だ。ここの文化は、君達のものとはまるで異質のものだ。少なくとも、君達はそう感じるだろう。この3つの問題を解決出来たら、後の事を考えるといい」

 義経にとっては、余りにも広大で複雑な問題であった。

「先ずは、3つから始めるか」

 テムジンには、何がなんなのかよく理解出来ていない。

「俺は、目の前の事を片付けるだけだ」

 Rは、インドの問題の解決に動いてくれているようだ。

「同じタイム・トラベラーとして、私が問題を処理しなければならない」

 リーガルの指揮で4門艦は、インドに向かっていた。そこで、警告を受ける事になる。

「停まれ。お前達は何者だ」

「私達もタイム・トラベラーだ。話がしたい」

 彼らの持つ船は、あまり上等とは言えない。その事は、彼らも気付いているだろう。

「どういう話だ」

「君達がここに存在する理由についてさ」

 彼らは、抵抗する事を諦めているようだ。歴然とした戦力の違いは如何ともしがたい。

「我らは、1万年近く前に出来たブランチ・ワールドに取り残されたのだ。この地は、ブランチ・ワールドの一部だ。我らの世界では、ブランチ・ワールドの構築を阻止しようとした。持っている限りの宝器を注ぎ込んだ。完全なブランチ・ワールドの構築は阻止出来たが、この地だけが残った。そして、我らは取り残された。我らの世界が今どうなっているのか分からないが、戻りたい」

「ブランチ・ノードの地点が分かっているなら、時折の点を使って戻してやれるかもしれない」

 彼らは、ブランチ・ノードを経由して、元の世界に戻った。無事に辿り着いたのかは確かめられない。

第3話 静と役小角


 静は役小角と、直ぐに仲良くなった。お互いが、其々の能力と素養を認め合い、静は役小角に尊敬の念を持ち、役小角は静の成長に希望を持った。静は「小角の爺さま」と呼び、小角は「静の巫女」と呼ぶ。静にとって、遥かに高い能力を持つ役小角の指導は優しく、時には厳しかった。静の能力は、瞬く間に向上した。しかし、静は、残り2つの宝器を手にしなければ、音巫として完全体とならない。静の鍛錬は何処まで続くのであろうか。静の成長と2つの宝器の取得は関係あるのだろうか。

 小角は霊樹の下で、静かに訊ねた。

「この霊樹は、多くの者に文字を授けているそうじゃな。わしにも、何かくれるのかのう」

「霊樹様のお頼みしては」

 小角は、異なる2つの木簡を授かった。そこには「道」と「探」という文字が刻まれていた。

「さて、道は些か察しの付くものだが、探はどういう意味であろう。仙道を探せと言う事かの。いや、そのような個人的な都合の文字ではないはずじゃ。義経にでも訊ねてみるか」

 その頃義経は、これからの世界統一の方法に悩んでいた。

「もはや、私の手には余る。もっと全体を見通す軍略家が必要だ」

 小角は、Rの推薦する劉基の元に赴いた。劉基は、14世紀に明を建国するに際し大きな功績を上げた人物である。彼は、優れた軍略家であり、政治家でもあった。その劉基は、突然の小角の出現に驚いたが、500年も生きて来た小角にとって、劉基を籠絡するのは、容易い事だった。Rは、思っている。

「いずれにせよ、我らの過去の歴史が変わったとしても、それは、時の一部に過ぎないのだ」

 義経達の時代にやって来た劉基は、幾人もの人達から、この時代の事を学んだ。己の知る歴史とは、異なる時代のように感じる。しかし、劉基はこの世界の全てを理解し、Rからの知識も加えて、世界統一の戦略を練る事になる。

「男子と産まれて、このような時代で腕を振るえるとは、なんと果報者よ」

 更に、劉基は行政の相談役ともなる。この時代に宝器のみならず、人も集まりつつあった。Rは、思った。

「やはり、この時代は何者かによって、選ばれているのだ。ところで、海青石もそろそろ、閾値を越え、この世界を完全にブランチ・ワールドとするだろう。そうなったならば、時折の点の力を確かめる必要がある」

 Rは、リーガルに命じて時折の点の力を確認するつもりだ。その時が訪れるのは、そう遠くないだろう。



第4話 インド


 この当時の北インドは、奴隷王朝と呼ばれるデリー・スルタン朝最初のトルコ系イスラム王朝が支配していた。首都はデリーである。南インドは、タミル系のヒンドゥー王朝・チョーラ朝が支配していた。首都はタンジャーヴールである。

 北インドへは、第4軍団のジェベが攻め込んだ。1218年の事である。南インドへは、第4軍団のオゴデイが攻め込む予定だった。しかし、同行した4門艦から降り立つ義経を目撃した南インドでは、大きな勘違いが王朝に伝わってしまった。この地へ彼のタイム・トラベラー達は、少なからず介入をしていたようだ。義経を神の使いとして崇め南インドは、無血開城となった。北インドでは、戦闘が行われていた。戦闘そのものは、間もなく終わったが、民達の統治に難儀しそうだ。それは、耶律楚材に委ねるしかないだろう。

 インドには、マハーバーラタとラーマ-ヤナという古代からの叙事詩が残存する。その叙事詩の中には、アグネアの武器(原爆以上の破壊力が予測される)、高速で飛ぶヴィマーナ、アストラと呼ばれる武器類が数多く記述されている。この物語の設定では、タイム・トラベラーの仕業と思われるが、現実には、その叙事詩の語るところが、想像の産物なのか、何者かが実際に用いていたのかは定かでは無い。

現存する人工構造物として、アダムの橋、錆びない鉄柱がある。これらは、現代の科学でも解明出来ていない。また、遺跡としてモヘンジョ・ダロがある。この遺跡はインダス文明時代の「計画された都市」として有名である。そして、遺跡から数キロ離れた場所一帯が、ガラス化されている。これほどの広範囲をガラス化するためには、原爆実験などの超高熱のエネルギーを与えなければならないらしい。モヘンジョ・ダロが現地の言葉で「死の丘」を意味するのは、現地の人々が叙事詩の記述を信じているためではないだろうか。それは、現実に原爆相当(あるいはそれ以上)の兵器が用いられた事を意味するのであろうか。

 一方、北インドの民の統治の問題は、今後発生する「人が信じるもの」「民族問題」の序章となる。義経が、この事を実感するのは、もう少し先の事になる。これらの問題は、耶律楚材にも手に負えない。複数の民族が、複数の信じるもののために争っている。南インドは、義経の事を神の使いだと信じているため、大きな問題は起こらない。北インドも全ての民がイスラムの教えを信じているため、問題は統治者側と被統治者側の2つだけに絞られる。これは、耶律楚材の手腕に期待というところだろう。


第5話 イスラム世界


 この当時のイスラム勢力の関係は次のようである。マリーン朝は、北アフリカの王朝であり、首都はモロッコのフェス(ファース)であった。ムワッヒド朝の弱体化にともなってベルベル系遊牧民・ザナータ族の首領・マリーン家のアブド・アル=ハックにより創始された王朝である。ムワッヒド朝は、ベルベル人のイスラム改革運動を基盤として建設された王朝であり、首都はマラケシュだった。北アフリカの王朝であったが、やがて衰退し、マリーン朝などの勃興を許す。アイユーブ朝は、エジプト、シリア、メソポタミアなどを支配したイスラム系の王朝である。ルーム・セルジューク朝は、版図をトルコ辺りまで拡げていたようだが、衰退期に入っており、トルコ地域の実体は、群小トルコ系君侯国の支配だったのかもしれない。しかし、この王朝が東西の文化交流に貢献したであろう事は評価したい。

 また、規模の程度は不明だが、アイユーブ朝の版図の中のイスラエル・ガザ地区に、都市国家としてのユダヤ人が存在したようである。

そして、セルジューク朝にアナトリア半島(トルコ地域)を占領された東ローマ帝国の皇帝アレクシオス1世コムネノスが、ローマ教皇ウルバヌス2世に救援を依頼したことが発端となり、1095年頃から十字軍の遠征が始まったとされる。

 義経らから見れば、イスラム圏の兵士が勇敢に見える。おそらく、彼らは彼らの神を信じて、闘っているのであろう。義経は、信じるものを持っていない。信じる事の出来る仲間は、大勢いる。今の義経は、その仲間と共に闘う事しか出来ない。それが、明日に繋がる唯一の希望だ。

 この地には、第1軍団から第3軍団まで遠征して来ている。いくつかのイスラム王朝が存在するが、それを制圧する事は容易いであろう。しかし、その後、この地の民達は何を思うのであろうか。憎しみだけを残す結果とならないだろうか。この地には、西方からも遠征軍が攻めてくると言う。彼らは、何を求めて闘っているのだろうか。

 エルサレムは、イスラム教の聖地となる。そして、キリスト教の聖地でもある。更には、ユダヤ教の聖地でもある。この事を義経は、アイユーブ朝の王から聞かされた。王にとっても悩ましい地域だった。この時、義経の元に報が届いた。それは、凶報だったのであろう。

「我が方の官が、エルサレムの地から徴税を行おうとしたところ、暴動が起きようとしている様子です」

 王もあの地から徴税を行った事は無い。ユダヤは都市国家であるが、その底力は侮れない。訓練された暗殺集団の存在や世界各地に離散したユダヤ人がいついかなる時でも、集結するという噂がある。

「あそこの長とは、面識がある。会って見たいと思わないか」

 義経に否やは無い。この騒ぎを鎮める唯一の方法は、それしかない。しかし、その結果は予測出来なかった。

「会合の連絡をとって貰えないでしょうか」


第6話 ユダヤ


 この当時のユダヤ人は、ガザ地域に都市国家を作り暮らしていたようだ。ガザ地域は、現在のイスラエルとエジプトに国境を接する。現在のガザはパレスチナ自治政府の行政区画の1つとして、存在する。20世紀の第1次中東戦争によって、パレスチナ人は国を失い難民となった。筆者は、20世紀にこのパレスチナ難民と中東で数年一緒に仕事を共にした経験があるが、何も述べる事が出来ない。何故ならば、日本人は全くの第3者で、口を挟むべき問題ではないと思うからだ。この事柄についての筆者の見解は「見る立場が異なれば、正邪が全く逆転する典型」である。

 人種的に言えば、ユダヤ人もアラブ人も同一だとされる。更に、ペルシャ人も同様のようである。宗教や言語、文化の違いから、本来同一の人種が、民族として分類されているようである。西欧との交わりが多い理由で、ユダヤ人には混血が多いようである。また、パレスチナ人もパレスチナ地域に住む民族という事らしい。

 ここにエルサレムという聖地がある。ここは、ユダヤ教とイスラム教、そしてキリスト教の3つの宗教が、共通して持つ聖地である。前話で記述したように、キリスト教を信じる人々が十字軍を派遣した大義名分は、聖地エルサレムの奪還である。つまり、この地は、3つ巴の複雑な事情を抱える。ガザは、エルサレムの傍に位置する。

ところで、ユダヤ人には、民族として独立した誇りがある。そのユダヤの長が3者会合を認めた。軍事力では、蹂躙されるだけだと思ったのかもしれない。しかし、この会合はもの分かれに終わりそうだった。ユダヤにとって、自治は認めるとは言っても、モンゴル帝国の属国になる事は、とても容認出来ない。アイユーブの元王と義経が、ガザに赴いてくれた事には、敬意を払うが、

「我らユダヤは、神に仕える者です。人には仕える事は、出来ません」

「ならば、これではどうかな」

 そこには、1匹の「紫の炎を巻き上げる猿」がいた。

「これは、我らが神の眷属か」

 この後、ユダヤの人々を始めとして、多くの人々が数々の奇跡を見る事になるのだが、それは未だ先の事である。奇跡とは、視るものが、絶対に出来ないと思っている事象が起きる事である。時として、奇跡を起こす者を神と崇める。今、ユダヤの長が「眷属」と呼んだのは、未だ神としては崇めていない証拠となる。但し、神に繋がる者としての認識はしたのであろう。

「属国となる事は出来ませぬが、貢物は致しましょう。但し、その多寡は、我々に決めさせて貰いたいと思います。それで如何でございましょうか」

「よかろう」

 義経にとっては、他民族を支配下におく事が目的ではない。ましてや、徴収など問題外だ。実際は、帝国の持ち出しで、補助している民族が多々ある。敵対しない事を確認しただけで、充分であった。それとは別に義経に提案が1つあった。


第7話 西方制圧


 義経は、ユダヤの長に提案した。

 「私達は、離散したユダヤの民の2つの村落と遭遇した事がある。世界中に離散したユダヤの民をこの地に集結させてはどうであろうか。ガザ地域の周辺をアイユーブの王が割譲してくれると言っている」

「それは願ってもない事です。聖地エルサレムにも近く、かつてのように、ユダヤが1つに纏まるとなれば、喜ばない者はおりますまい」

 聖地エルサレムは、どの集団にも属さない安寧聖地となった。イスラム教とユダヤ教からの代表が、管理をする事になった。但し、この者達にも武力権や司法権などの特別な権限が与えられているのではない。言って見れば、監視者というところだろう。

 エルサレムを訪れたRが、驚いていた。

「ここに、これほどの宝器が眠っているとは」

 義経は、言った。

「さほど、おかしい事ではない。聖地は聖地としての理由があるのだ。宝器は、このままにしておこう。必要な時に借りる事にしよう」

 帝国の軍団は、構成を大きく変えている。兵数だけを言うならば、往事の1/4というところだろう。但し、それらは精鋭中の精鋭だ。兵になるための試験を行った。これには「霊樹の与」も一役かっている。部隊の装備も大きく、様変わりしていた。主力は、短弓と槍を持った軽弓騎兵部隊になる。強弩と太刀を持った重騎兵部隊もいる。この部隊は、城内では歩兵となる。更に、馬車に大砲を積んだ攻城部隊や敵を威圧する鉄砲部隊も備えている。しかし、この時代、鉄砲は実威力を未だ持っていない。

 偵察や攻城戦などに義盛配下の特殊部隊が活躍する。この者達は、人離れした特技を各人が持ち、適時軍団長の指揮によって適所で働く。不思議な事にユダヤ人の中にこの特技を持つ人々が多いようだ。彼らは、望めば義盛の配下となっていった。

 西方へと転進した第1軍団~第3軍団は、トルコの周辺で十字軍と遭遇した。これらを殲滅した帝国軍の快進撃は続いた。進撃が続く中、バチカンのローマ教皇からの親書が届いた。和睦を望む内容だった。軍師の劉基が言う。

「和睦を受け入れてはなりません。西方のバチカンを除く地域を完全に制圧、統治してから話し合いに臨むべきです。何故ならば、彼らは我らとは異なる文化を持ち、現時点での和睦は、灰色の制圧となってしまうからです。何時、反乱が起きても不思議ではありません」

 帝国は、バチカンを除く地域を全て制圧、統治した。その後、義経は教皇庁を訪れる事になる。こういう事にテムジンは一切口を挟まない。


第8話 バチカン


 バチカンに赴いてローマ教皇へ謁見した義経は、彼の嘆きを聴いた。

「これで、キリスト教圏も崩壊となってしまった。我と我が子達は、何を信じて生きて行けばいいのであろうか」

「ご心配には及びません。我ら帝国は、破壊に来たのではありません。これは、我らの使命なのです。世界を統一する事が、おそらくそうなのです。この西方の国々に望む事は、1つだけです。支配者と被支配者を無くす事です。我らも支配者ではありません。そして、信じるものがあるのならば、エルサレムに向かうのが、よろしいかと存じます」

 義経の言う事が真実ならば、何と喜ばしい事ではないか。滅亡の危惧を抱いていた教皇に笑みが戻り、エルサレムへ特使を派遣した。この時から、エルサレムは、3つの宗教の代表者が管理、監視を運営して行く事になる。司法権などの特権は、義経の直轄となった。

 Rが、また驚いた。

「この地にも、宝器が揃っている」


第9話 アフリカと南方諸島


 インドネシアからニューギニア、オーストラリアと転戦した第4軍団は、闘わずしてその地を制圧、統治して行った。随行している忠信が「黒豹」に変じるだけで、神と崇められた。

 西方とエルサレムの問題を解決した第3軍団は、アフリカへと向かった。また、第1軍団と第2軍団は北米と南米に向かった。南米には、クスコ王国が建国されたばかりだったが、敵では無かった。これらの地でも、ケムの者が何かしらに変じると神と崇められた。

 義経とRが、何か話していた。

「これで、為すべき事は終わったのだろうか。これが使命だったのだろうか」

「いいえ、これが始まりなのです。我らの世界と同じ様にならないように、貴方達がこの世界を導いて行かなければなりません。この間、ブランチ・ワールドの構築は完了したようです。海青石からエネルギー反応が消えました」

「貴方の言う事は、難しくてよく分からない」

「これから、追々学んで行きましょう。ところで、ケムの者とは「虚無の者」なのかもしれません。私の仮説が正しければ、いろいろ貴方達に伝えて行く事があります」

 ケムの者は、不老のようだ。不死ではない。霊樹の与から文字を授かった者達も老いが遅いらしい。世界統一を果たした義経は、新たな世界を築いて行く事になる。


第10話 観測・測定


 第2部では、技術開発と宝器探検(現代では、一部がオーパーツと呼ばれているらしい)がテーマとなる予定である。

 筆者の持論として「観測・測定は1つ高い次元からでしか行えない」というものがある。

簡単の為に2次元を考えて見たい。仮に観測者が2次元に存在するものとする。その世界には2次元しか存在しないのだから、観測者は3次元の世界に存在する事が出来ない。観測者が、点Aにいる時、点Bまでの距離をどのようにして測定するのだろうか。観測者が点Aから移動すると、点Aは、記憶にしか残らない。観測者が点Bに辿り着いた時、点Aは記憶でしかない。つまり、精密な測定は行われなかったと、いう事になる。更に、2次元上の空間が均一の目盛を刻んでいる事をどのようにして、確かめればいいのであろうか。

 この事を現実世界に当て嵌めて見ると、実際の観測・測定が疑わしいものに感じて来る。現在の科学でいう時間は、空間内に存在する物質の運動の刻みを意味する。即ち、相対時間となる。3次元空間を精密に測定するためには、絶対時間が必要になる。

 以下詳細は、2部本文中で記述したいと考えている。


(完)


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