21-16 幕間・消えた刻印
ジン達が運営からのメッセージを見て盛り上がっている、その頃……ギルド【竜の牙】に所属する面々が、遺跡エリアで何かを探し回っていた。
「なぁ、ソウリュウ? もうここで二時間を探してるが、お前の言う刻印とやらは全然見付からないぞ」
「そんなはず無い、絶対にある! 試練をクリアすれば、刻印の力が手に入るんだ!」
前日の夜、この遺跡で見付けた【刻印】……その試練を一つはクリアしたソウリュウは、今度こそ全ての試練をクリアしようと考えた。
万一に備えてギルドメンバーを連れて来て、二十時頃からこの場所を探し回っている。しかしながら、クエストの起点となる最初の【刻印】すら見つかっていない。
丁度、そこに一人のプレイヤーが通り掛かった。
彼女は何かを探す一団……それが【竜の牙】の面々だと気付き、身を潜めて様子を窺う。
――彼等はどうやら、私達のクランに執着している様です。
その執着の方向性は、一部のメンバーを除くと『自分達がトップに立つのに邪魔な存在』だ。
ある人物は『特定の女性と恋人になりたい』、またとある人物は『過去に色々あった女性との関係が断裂した事で、彼女がやけに気になる様になってしまった』というものである。
――一番健全なのが、末端のプレイヤーっていうのがまた何とも言えません……。
このまま引き返して、迂回してクラン拠点に戻ろうか? という心の声に従って、彼女は踵を返そうとする。
しかしその時、やけに苛立たしそうな青年の声が聞こえて来た。
「今度こそ、【月の刻印】を手に入れるんだ! きっとあれはユニークスキルか、ユニークアイテムだ!」
ソウリュウの、無駄にでかい声。遺跡内に反響するその声は、彼女の所までよく響いてきた。
その一言のお陰で、彼女は記憶の中にある出来事を思い出した。
――【月の刻印】……? あと一歩のところでクリアできなかった、あの試練でしょうか?
――第四回イベントの直前……遺跡の中で見付けた、光る刻印ね。こういうのは、私の得意分野だわ。
足を止めた彼女は、四カ月程前の記憶を呼び起こそうと目を閉じる。
まだ【竜の牙】のメンバー達の声が聞こえてくるが、そちらの会話は気にならない。
――確か正式名称は【七曜の刻印・月】だったわね。あの時はまだユニークスキルを持っていなかったから、最後のボス戦でタイムアップになっちゃったんだっけ。
もし、先程の会話が聞き間違えではないならば……まだ、【七曜の刻印・月】は誰の手にも渡っていない可能性がある。
そう考えた彼女はもう一度、物陰に身を潜めて【竜の牙】の面々を覗き見る。
――でも、あのクエストにもう一度挑戦しようとしたけれど、影も形も見当たらなかったはずですよね。
――あっ! そもそも私達があのクエストに挑戦したのは、この遺跡では無かったはずです!
「昨日、その【刻印】を見付けたんだったな? だとしたら、今日は【火の刻印】とかになってるんじゃねーか? ほら、昨日が月曜で、今日は火曜だろ」
「火曜……? そ、そうだ! 確かあの時、フレーバーテキストには【七曜の刻印】とか書かれてた!!」
「って事は、アレか? 月曜が終わって、火曜になったから時間切れって感じか?」
「その可能性はあり得るな……どうだ、ソウリュウ? 時間切れになったのって、日付が変わるタイミングなんじゃないか?」
「そ、そういえば!! そうか、そういう事だったのか……!!」
「って事は、次の月曜までお預けなんじゃない?」
「いや、そういうシステムなら、火曜日の今日は【火の刻印】がどこかにあるんじゃないか?」
賑やかになる【竜の牙】のメンバー達の会話を聞いて、彼女は思考を巡らせる。
――もしかして……それだけではなく、あの【七曜の刻印】は移動しているのではないかしら?
――【七曜】というくらいだから、その曜日に見合った【刻印】が発生している可能性は高い……そして更に、もう一つ。
――移動しているのならば、再挑戦しようとした私や彼等が、肩透かしを食ったのも頷ける。
この場所同様に、モンスターが現れない安全地帯の遺跡は他にもある。それも、複数箇所に存在している。
もしもそこに、あの【七曜の刻印】が隠されているのならば……。
――月、火、水、木、金、土、日……七つの【刻印】……惑星記号……あっ、もしかして?
――惑星……星の巡りと、関係があるのでは?
――それなら、同じ場所に現れないのも納得ですね。そして星の巡りと同じなら、きっと法則性があるはず……。
遺跡の場所、昨夜現れた【月の刻印】、そして過去に挑んだ試練……それらを検証するには、協力してくれる者が必要だ。
――となると、頼れるのは……。
――……やっぱり、彼しかいないわね。
システム・ウィンドウを開いてみれば、予想通り彼はログイン状態だ。
恐らく今頃は、第六回イベントの為に活動するジン達の為に、何か考えているに違いない。
その邪魔をしてしまうのは申し訳ないが、こういう時に頼りになるのは彼だろう。
――それじゃあ、ユーちゃんに相談してみましょうか。
次回投稿予定日:2026/5/5(本編)




