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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第二十章 第四エリアを目指しました

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20-39 ホワイトデーの前日でした

 三月十三日。この日は年度末で半日授業だった為、仁は普段とは違い真っ直ぐ家に帰宅していた。勿論、婚約者である姫乃の迎えには行くつもりだ。

 二年生から三年生に進級するだけの姫乃達は、まだ午後も授業がある。迎えの時間には大分早いので、仁は一旦帰宅して所用を済ませてしまおうと考えたのだった。


 それに、彼の用事は姫乃には気取られたくないものである。そう……翌日に控えた、ホワイトデーの為の準備があるのだ。

 一カ月前の事ではあるが、今でも思い出す事が出来る姫乃からのバレンタインチョコ。それは自分の好みを考えて、手間暇かけて作ってくれたものだった。それは彼女の愛情が、そのまま形になったプレゼントと言っても過言では無い。それ程に見た目も味も、完成度の高いものだった。

 そのお返しとあれば、仁としても気合いが入ろうというものだ。


「とはいえ、不安だな。料理は苦手だし……」

 仁は今回、生まれて初めてお菓子作りに挑戦するつもりであった。

 プレゼントにするならば、買ったもので済ませた方が良いのではないか? という思いが、仁の脳裏にまた浮かぶ。それは今日この日まで、何度も脳内会議を繰り返した最重要課題だった。


 そんな頭に浮かんだ考えを否定して、仁は制服から私服に着替える。制服を汚すわけにはいかないからだ。

 姫乃へのバレンタインのお返しで、ただ買った物を渡すのは気が引ける。例え見栄えが悪かろうと、味に何かが足りなかろうと、自分の手でプレゼントを作りたい。仁がそう考えたのは、籠められた姫乃の想いに対して、少なくとも同じ分以上の愛情を籠めたいからだ。

 念の為に、プラスアルファのプレゼントも用意してある。だから後は、最善を尽くすのみなのだ。


 ちなみにクラスメイトや友人達へのお返しは、お店で買った物にした。勿論、貰った物に対してのお返しなので、それなりに良い物を選択している。

 同じ高校に通う面々には、既に今日の内に渡してある。明日は土曜日で、高校は休み……つまり、当日に渡すタイミングが無いからだ。郵送が必要な分は、昨日の内に英雄と一緒に手配済みである。

 勿論ゲーム内で渡す相手には、明日のホワイトデー当日に手渡しするか、プレゼント機能で贈るつもりだ。


 そこで仁は、このイベントの為に調べたあれやこれについて思い出す。それは、ホワイトデーのお返しとして選ぶものに込められた”意味合い”についてだ。

 それを調べた理由は簡単で、とあるクラスメイトから「本命の相手に対するお返しとしてタブーとなる物もある」と教えて貰ったからである。

 例えばホワイトデーのお返しとして、チョコレートを贈る……つまり貰った物と同じ物をお返しにするという行為には、場合によっては「貴方の好意には応える事が出来ない」というネガティブな意味合いになる事もあるらしい。全てが全てそうではないが、相手がそう受け止める可能性もあるのだとか。


 そんなアドバイスを受けた仁は、これまで意識した事が無かったホワイトデーのお返しについて、色々と調べる事にした。思った以上の情報量だったので、どれをお返しにすれば良いのか頭を悩ませたのはつい先日までの事だ。


 まず「長続きする関係」「今後も甘い関係を続けたい」という思いが込められる、キャンディ。

 次に「特別な存在」「あなたが大切」を示す、マカロン。

 そして「甘い愛情」や「心のぬくもり」をイメージさせる、キャラメル。

 本命向けのお返しであれば、この辺りが良いのだとか。


 また友達やクラスメイトからの義理チョコに対するお返しとして最適なのは、クッキーやマドレーヌが良いらしい。

 クッキーは「友人としての軽い関係」を意味し、貝殻の形をしているマドレーヌは「円満な関係」を意味するそうだ。

 ちなみに、義理チョコへのお返しならばチョコもありらしい。


 また気軽に買えるグミ等にはネガティブな解釈があったり、ハンカチは「縁切り」を連想させたり色々な意味が込められるそうだ。

 この様に、お返しにはそれぞれ深い意味が込められているらしい。仁としても、正直に言うと全く気に留めていなかったので、意外な事だらけだった。


「今年のホワイトデーは、結構な出費になったなぁ」

 そんな事を呟きながら、仁は台所で買い込んだモノを用意する。それは勿論、姫乃の為に作るお返しの材料だ。

 これらに加えて、友人知人へのお返しで中々の出費だった。ちなみに仁が姫乃以外へのお返しに選んだのは、クラスメイトや友人向けにはホワイトデー向けのクッキーの詰め合わせ……仲間向けには複数の味が楽しめるマドレーヌセットだ。

 これらは放課後、星波家に立ち寄った後に買ったものである。両親にもしっかり口止めをしているので、姫乃はこの事を知らないだろう。


――ネットでレシピを検索し、動画サイトで作っている様子や注意点を事前に予習してある……うまく出来るとは思ってないけど、せめて致命的な失敗はしないように……!!


 何故か仁が料理をする際には、必ず小さなミスや物足りない点が発生する。そんな事がずっと続くため、仁は料理に対して苦手意識を持っている。

 しかし今年のホワイトデーは、初めての恋人……というか婚約者から、真心の籠った手作りチョコを貰ったのだ。苦手意識があろうが何だろうが、出来る限りの事をしたい、姫乃の真心に応えたい……という想いが強かったのである。


 しっかりと調理器具を使って分量をはかり、丁寧に混ぜて、焼いて、形を整える。

 普段は避けていた調理ではあるものの、基本的な知識は家庭科の実習などでも経験している。事前に予習をして注意点の確認も行っていたお陰か、時折まごつく事はあるものの比較的順調に調理は進んでいく。


……


 しばらくの間、仁は真剣な表情でお菓子作りに没頭した。そして無事に調理を終えた仁は、出来上がった物を一旦冷蔵庫に入れておく。

「お菓子作りって、大変だな……見栄えは、まぁまぁ良さ気だけど……」

 見た目は綺麗に出来た気がする仁だが、問題の味はどうだろうか? 余った材料で作った味見用は、良い感じになったとは思うが……自分の料理が苦手という意識が、不安を煽り立ててしまう。


 一先ず出掛けている母親が返ってくる前に、台所を綺麗にしておかなければならないだろう。そうしてせっせと片付けを済ませたあたりで、姫乃達の授業がもうすぐ終わる頃合いとなった。

「もうこんな時間か……結構、時間が経っていたんだな」

 集中していると、時間が経つのは早く感じる。これまで何度も経験して来た感覚だが、今回のお菓子作りは中々にそれが顕著だった。


 すぐに身だしなみを整えて、仁は初音女子付属中等部へと向かう。すっかり恋と鳴子から貰った補助サポーターも慣れて、普通に歩く事が出来る事がありがたい。

 三月も半ばとなり、気温も徐々に暖かくなってきた。もうすぐ春になるのだという実感と共に、仁はホワイトデーの次に来るイベントについて思考を巡らせる。


――ホワイトデーのお返しは、何とかなりそうだ。でも誕生日プレゼントの方は、どうしたものかなぁ……。


 四月一日……婚約者である姫乃の誕生日が、半月後に迫っている。ホワイトデーとそう間を置かずして訪れる誕生日であり、何を贈るかが悩み処である。

 もっとも仁の誕生日も、バレンタインから一週間という短さなのだ。姫乃も同じ様に悩んでくれたのだろうと思えば、また一つ似通っている点が見付かったという感覚になる。


 仁の誕生日に、姫乃が贈ってくれた誕生日プレゼント……それは弁当箱かと思いきや、その弁当箱を使った愛妻弁当が本命のプレゼントだった。週に三度、プレゼントを貰っている様なものである。

 それに見合うだけのプレゼントとなると、何が良いだろうか。そこが仁にとっては、中々に難しい所だ。


 これまで仁が姫乃に贈ったプレゼントは、まずクリスマスの時に指輪。そして、文化祭の時にお揃いのストラップやら何やらだ。

 これらのラインナップを考えると、アクセサリー類に寄っている感じがする。そもそもデートの際に姫乃がおめかしする時を思い出してみても、彼女はあまり装飾過多を好む性格ではない。となれば、アクセサリー類を何度も贈るのはどうだろうか? と仁は考えてしまう。


 ──中々に難題だけど……幸せな悩みだな。


 こんなに悩みに悩んででも、誕生日を祝いたい相手がいる。初めての経験で大変ではあるものの、姫乃が喜んでくれる顔を思い浮かべれば安いもの。それこそ、悩みに悩む甲斐がある。

 そんな事を考えていると、自然と歩調は早くなる。この道の先に、最愛の少女の笑顔が待っているとあれば、それも当然だ。


 翌日……三月十四日は土曜日で、仁達は休日。しかし姫乃達は、午前のみ学校がある日である。午前中に全ての準備を済ませて、午後に彼女を迎えに行った後でお返しを渡そう。

 明日の事を考えながら、仁は初音女子大学付属中等部への道を歩いて行く。


 夜は早めにログインしたら、ギルドメンバーと数名で誕生日である紀子カノンのお祝い。その後はクランメンバーと【天使の抱擁】、ヴィクトと共にエリアボス攻略四箇所目。

 そして、明日はいよいよホワイトデー当日である。


************************************************************


 初音女子大学付属中等部の前に辿り着いた仁は、うっかりしていた事に気付く。彼が家を出た時間は、確かに姫乃達の授業が終わる時間に合わせていた……が、それは誕生日よりも前の時間だ。

 歩行補助サポーターのお陰で杖無しで歩ける今、移動時間は普通に二分の一くらいに短縮されている。つまり予定よりも、十分程早めに到着してしまった訳だ。


――まぁ、遅れるよりは良いか。


 すぐに仁は割り切って、歩道で時間を潰す事にした。その内英雄もやって来るだろうし、十分などすぐに過ぎるはずだ。


 AWOの公式サイトを開いて、掲示板の書き込みに目を通そう……そう考えて、携帯端末を操作し始める。そこで仁の目に飛び込んで来た、最新の書き込みがあったスレッド。

「おっと、これは……」

 スレッドの名前は、【クラン情報スレッド】。ジン達がクランの情報について書き込んでいるのも、このスレッドだ。

 もしかしたら、新たなクランが結成されたのだろうか? そう思って、ジンはそのページを開いてみる。


―――――――――――――――――――――――――――――――

 201 ギルド【四国の番犬】

 ご当地ギルドでクラン結成して

 日本網羅しませんか



 202 ギルド【竜の牙(ドラゴン・ファング)

 共にクランを結成するギルド求む

 条件1:プレイヤー十人以上

 条件2:第三エリアボス攻略済み



 203 情報掲示板の民

 PKクラン注意報

 クラン【VILLAIN】に新たなPKギルド【見敵必殺】が加入

 現在のクラン加入ギルドは以下の通り

 【不滅の獄炎】

 【キリングドール】

 【暗殺倶楽部】

 【見敵必殺】

 尚【見敵必殺】は第五回イベントでPKKされたフリーのPKer達によって結成されたギルドな



 204 名無し

 >202

 第三エリアボス攻略の為にクラン結成したいギルドが大半だと思うんだが……



 205 ギルド【俺のPACパックが世界一】

 我等がパートナーであるPACパックを愛でるギルド求む!

 共にクランを結成し、PACパックの魅力をAWO全体に知らしめよう!



 206 名無し

 現在のクラン拠点に関して、最新の情報って無いん?



 207 名無し

 >202

 イベント実績の条件なくした代わりに

 第三エリア到達を第三エリアボス討伐にしたんか



 208 名無し

 >207

 覇権争いに加わる気らしいからな

 有象無象は眼中に無いって事だろ



 209 クラン【導き足跡(パイオニア・ステップ)

 ギルド拠点[オーア山地]の開拓が進行中です

 本日より、応援NPCをスタッフとした店舗の営業を開始します

 現時点では道具屋・鍛冶公房・ポーションショップ・服飾店・レストラン・弁当屋・カフェ・バー・おでん屋

 また依頼掲示板や取引掲示板も設置されております

 [オーア山地]付近で探索や攻略を行う際は、是非お立ち寄り下さい



 210 名無し

 >209

 行く!!



 211 名無し

 >209

 おー、結構な店舗を……

 って最後よwww



 212 名無し

 おでん屋www



 213 名無し

 何故おでん? って思ったが、そうか

 【おでん傭兵団】あるもんなwww



 214 名無し

 おでん食べたい



 215 名無し

 >209

 イ゛グッ゛!!



 216 名無し

 >215

 テメーは駄目だ

―――――――――――――――――――――――――――――――


「へぇ……」

 【導きの足跡(パイオニア・ステップ)】も応援NPC達の助力を得て、順調に拠点開発を進めているらしい。実に喜ばしい事で、仁としても一度足を運んでみたいところだ。

 勿論その時は、姫乃も一緒だ。二人で訪れるのも良いし、仲間達と一緒でも楽しい時間になるだろう。しかし一度に大勢で……となると、迷惑だろう。その辺りは、話し合う必要がありそうだった。


 丁度そこで顔を上げてみると、英雄が歩いて来るのが見えた。穏やかな笑みを湛えた英雄は、仁に向けて軽く手を上げ挨拶をしている。

 仁も手を上げて挨拶を返すと、スレッドを閉じて携帯端末をポケットに仕舞う。

「早かったんだな、仁」

「サポーター無しの時と、同じ時間に出ちゃったんだ。まぁ、そんなに時間は経ってないよ」

 仁の説明に納得した表情になった英雄は、笑みを浮かべたまま彼の隣に並んだ。


「そっか。それで、携帯で何を見ていたんだ?」

「ん? あぁ、公式サイトのクラン板。【導きの足跡(パイオニア・ステップ)】の拠点が、色んな店舗開業に漕ぎ着けたみたいだよ」

「へぇ、それはめでたいね。今度時間を作って、訪問してみたいな」

 二人は取り留めもない事を話しながら、姫乃達の下校を待つ。この時間もすっかり日常となっていて、二人はリラックス状態で雑談に興じていた。


……


 姫乃達が校舎から出て、愛・千夜・優と別れた後はいつもの通り。仁・姫乃・英雄・恋で、星波家へと向かった。聖に出迎えられた四人は、星波家のリビングで会話を楽しむ。

 仁と英雄は年度末で大した課題も無いし、姫乃と恋は課題があるもののすぐに終わった。故に、今現在はフリーの時間となる。


 そうなると、話題は自然とAWOの話に進んでいく。

「これで四つの浄化マップが、街として機能する様になった形になりますね。五つ目の[ギュールズ高原]は、まだこれから開発でしょうが」

「残りの浄化マップは、二つって予想されているな。確か【ふぁんくらぶ】が、ある程度予測をしているんだったっけ?」

「うん。[烈風の渓谷]と、[氷結の凍土]の可能性が高いってさ」


 勿論その情報は、公にはしていない。その情報を出したら、エクストラクエストを巡って混乱が起きる可能性が高いからだ。

 既に多くのプレイヤーが、浄化マップは七つあるのではないか? という予想を立てており、ワールドアナウンスによって既に五箇所のマップが浄化されているのは周知の事実だ。

 そんな訳で浄化マップの情報は、拠点を持たないクランにすれば喉から手が出るほど欲しいだろう。そしてそういった勢力は、一つや二つではないのだ。

 この情報が公になれば……クラン同士の熾烈な争奪戦が始まるのは、火を見るよりも明らかである。場合によっては相手の妨害などに踏み切る者が現れ、大騒動に発展する可能性も少なくはない。

 そんな訳で【十人十色ヴェリアスカラー】は、この情報を公にしない事にしたのだった。


 しかし浄化マップのあれやこれは置いておくとしても、もう一つの要素については無視できない。

「風の精霊には会いに行きたいですね! そうしたら、仁くんも秘技を手に入れられます♪」

「そうですね。風の精霊……やはり、シルフなのでしょうか」

 そう、神話系のユニークスキル……【風林火陰山雷】のユニークスキルは、該当する属性の精霊と対面する事で秘技が得られる。これは、非常に大きな要素だろう。


 恐らく性能は姫乃達の秘技と同じで、MPを消費して風属性攻撃の威力や性能の向上……もしくは通常攻撃に、風属性を付与するものだろう。

 風属性の強化は、純粋に与ダメージアップが見込める。そして風属性付与は、【スキル相殺】を発動しやすくなるのだ。どちらにしても、戦力強化になるのは間違いない。

「今夜のエリアボス討伐が終わったら、第四エリア開放まで時間があるし……風の精霊に会いに行くのも良いかもね」

 仁がそう言えば、姫乃は「はい、そうしましょう!」と笑顔を零す。そのやり取りから感じ取れるのは、一緒に行くのは確定事項だという共通認識。二人一緒が自然な事なのだと、互いに思っている事だろう。

 そんな二人様子に、英雄と恋も笑みを零す。どれだけ時間が経っても変わらない、二人の仲睦まじさが実に微笑ましい。


「そう言えば……ユニークスキルを持つプレイヤーって、今はどれくらい居るんでしょうか?」

「そうね……少なくとも、私達以外だとトップランカーくらいな気がするけれど。それに、スキルオーブだけではないという事も解ったものね」

 恋が示唆しているのは、先日リリィが手に入れたユニークアイテム……一角獣ユニコーンを癒すエクストラクエストを達成して手に入れた素材を使って作り直された、≪神聖笛ユニコーン≫についてだ。


―――――――――――――――――――――――――――――――

■神話系ユニークスキル

 【九尾の狐】ジン

 【鞍馬天狗】ケイン

 【八岐大蛇】ヒメノ

 【漆黒の竜】ユージン

 【酒呑童子】シオン

 【神獣・麒麟】レン

 【八咫烏】アンヘル(アンジェリカ)


■魔人系ユニークスキル

 【千変万化】ヒイロ

 【一撃入魂】ハヤテ

 【三汁七菜】アーサー


■聖人系ユニークスキル

 【百花繚乱】アイネ

 【益者万友】アンヘル(アンジェリカ)

 【七転八起】アレク→シルフィ


■勇者系ユニークスキル

 【デュアルソード】アーク

 【クレストエンチャント】ユージン

 【マジックブレード】ケリィ

 【エレメンタルアロー】ヒメノ

 【クライシスサバイブ】ジン


■神話系ユニークアイテム

 ≪神聖笛・ユニコーン≫リリィ

―――――――――――――――――――――――――――――――


 ちなみにアンヘルのユニークスキルについては、まだ詳細を聞いていない。理由は単純に、それよりも先に考えるべき事があったのが一点。もう一点は、正式に仲間に迎え入れてから教えて貰うべきだろうと考えた為だ。


 そんな訳で、仁達が正確に把握しているユニークスキルは自分達のものだけである。

 もっともアークの二刀流は、ユニークスキル由来のものであるのは前々から予想済み。第四回イベントの終盤の様子でシルフィが、そして年始の一件でアーサーがユニークスキルを保有しているであろう事も察している。


「四字熟語系のユニークスキルは、やはりエクストラボスのNPCからゲットする形だろうけど……セツナとカゲツみたいなタイプと、ジュシュア爺さんみたいなタイプで分かれるんだよな」

「異名も【剣鬼】と【魔女】に対して、【守護騎士】ですものね」

 魔人と聖人の分類までは思い至らないが、NPC名と称号で差別化されているのは理解できた。つまり、別のシリーズなのだと予想する事が出来ているのだ。


「まだまだ、秘密が隠されてそうだよね」

「全てのユニークスキルが出揃ったら、何かあったりしてな」

 そんな風に笑い合いながら、仁達は穏やかな時間を過ごしていく。


 丁度そのタイミングで新たにユニークシリーズを手にしようとしているプレイヤーが居るなんて、彼等には知る由もなかった。

次回投稿予定日:2026/1/25(幕間)

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― 新着の感想 ―
お菓子作りはレシピや手順を厳格守るのが重要だと聞くし、ある意味で仁には適してる可能性が? ユニークスキルが本当に少数だと、後発のプレイヤーは手出しができなくなりそうだし結構眠ってそうなんだよなぁ…。…
お菓子作りって結構大変なんですよね。力使いますし計量間違うと生地膨らまないし立ちっぱだし世のパティシエの皆様には頭が上がりません。仁君ガンバ。
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