20-37 幕間・星波姫乃の独白2
【忍者ムーブ始めました】をご閲覧下さる皆様へ。
新年明けましておめでとうございます。
昨年も拙作にお付き合い下さり、誠にありがとうございました。
本年も皆様にたくさんの物語をお届けできるよう、頑張って参ります。
2026年も、何卒宜しくお願い申し上げます!
新年最初は、姫乃の独白その2をお届けします!
次の写真からは、ゲームの中で撮影した写真が続きますね。本当に、色々な事がありましたから。
まずは、まだマキナさんのアバターだったナタクさんがギルド入りした後の写真。それに【桃園の誓い】と【魔弾の射手】、リリィさんとクベラさんが一緒に映った写真ですね。
第三エリア初到達の記念写真なんですけど、そこまでに大変な事がありました。
大規模な集団PK……その裏に潜んでいた、スパイ達の悪意。それに気付く事が出来たのは、マキナさんが勇気を振り絞って真実を私達に教えてくれたからでした。
でもそのすぐ後に、私達はスパイによって不正疑惑を掛けられて……周りの人達から、酷い言葉を投げ掛けられたんでした。公式発表があっても、それはあまり変わらなかった。
それでも私達は、自分達に出来る事をしようと頑張って……その中で、沢山の人に助けられたんですよね。
私達がギルドを結成する前から、懇意にしてくれるユージンさん。頼れる仲間である、リリィさんとクベラさん。そして偶然の出会いがきっかけで、仲良くなったコヨミさん。
他にも、大規模ギルド【聖光の騎士団】と【森羅万象】……そして、有名な中規模ギルドである【遥かなる旅路】。不正疑惑の主犯がギルドメンバーだったけれど、それがきっかけで交友関係を結ぶことになった【白狼の集い】。
そして、決して外してはいけない【忍者ふぁんくらぶ】ですね。そうそう、この写真です! 【忍者ふぁんくらぶ】のギルドホームに、お邪魔した時の写真!
皆さんと一緒に写真を撮ったり、握手したり楽しかったです!! ジンくんのフィギュアは、ちゃんと買って私達のお部屋の棚に飾っていますよ!!
でもまさか、このイナズマさんがジンくんとイトコ関係だったとは……現実でも、お互いにまだ会った事が無かったらしいですし、驚きですよね。
あ、この写真……イベントの前に、デートした時のですね。
私の考えが至らなくて、仁くんとお兄ちゃんが通っていた中学校に行って……グラウンドで、部活動に勤しんでいる陸上部の人達の姿を見て。
仁くんに、本当に申し訳ない事をしちゃったな……仁くんは一言も私を責めたり、弱音を口にはしませんでした。それどころか「まだ終わってない」って言ってくれて……。
「VRでなら、まだ僕は走れる。きっと、誰よりも速く走ってみせる。それがたとえ、ゲームの中でも。ヒメと、そして皆と一緒なら……もっと、もっと速く走れると思うから」
それは自分に言い聞かせるようでいて、私を安心させるようでもあって……だから、決めたんだ。仁くんに助けられてばかりだった私だけど……今度は、私が仁くんを助けるんだって。
その後は、いきなり雨に降られて……びしょ濡れになってしまった私達は、仁くんのお家で一緒にお風呂に入ったんでしたっけ……。
正直に言うと、少しくらいは何かあるかもって……覚悟と期待をしていた感は否めないです。仁くんに触れたり、私が触れられたりするかもとか……もしかしたら、もっと先に進むかもって。でも……やっぱり、仁くんは紳士でしたね。期待していた私は残念に思わなかったといえば、嘘にはなりますけど……でも、ホッとした自分もやっぱりいて。
と、思っていたんですけどね。
「将来、現実でも結婚したら……こうして、一緒にお風呂に入れるでしょうか」
「うん、ちゃんと僕達が大人になって……二人の力で生きていけるようになったら」
私達は、そんな約束をしましたね。傍から見れば、子供の口約束だと言われるかもしれない……でも私達二人の間では、それは確かに結婚の約束。共に長い人生を歩んでいく、誓いの言葉。きっと、一生の思い出になりますね。
身体の結びつきも大切かもしれませんけど、その前に心がしっかり通じ合っている事が大切なんだなって。私はあの時、仁くんにそれを教えて貰ったんだと思います。
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アルバムを捲ると、そこにはあの第四回イベントの一幕の写真がたくさん。
まずは、ユージンさん達が完成させたギルド拠点の写真……巷では、[風雲七色城]なんて言われていたらしいですね。あ、今ではクラン拠点でお世話になっている、応援NPCの皆さんと撮った写真もある。
そうそう、この夜空と月をバックにしているジンくん! ふふっ、スクリーンショットを撮影しておいて、良かった♪
初日はやっぱり、私達に対する敵意を露にするプレイヤーが大勢でした。それも全て、スパイ集団【禁断の果実】の企み通り……だったのでしょうか?
その日の深夜、皆の協力を得た私達は、スパイ達を追い詰める事に成功しました。でもスパイ達は抵抗を開始して、私達を狙って攻撃を開始して……そうして、スパイ対トップランカーの大乱戦が始まってしまいました。
その出来事自体は、とても哀しい出来事。でも、そんな状況の中でも……ジンくんは、やっぱりジンくんでした。
とんでもない力を発揮したアンジェリカさんと、一騎打ちをするジンくん。そんな彼とアンジェリカさんの戦いに、スパイ達が加勢に入って……ジンくんが劣勢に陥った時、私は思わずジンくんを助けたいって思った。
夫婦だけが使える、結婚指輪に付与されるスキル【比翼連理】。それを使った私は、迷わず自分のステータスを全てジンくんに譲渡した。その力でジンくんはスパイ達を一掃して、アンジェリカさんを追い詰めて。
「……君は、アレク達の愛は愛じゃないって言ったよね? じゃあ、君にとっての愛ってどんなもの?」
「それが正解かは、拙者も解らぬでゴザル。しかしそれは求めるものでも、与えるだけ……ましてや、押し付けるものでは断じて無い」
アンジェリカさんが求める愛は、きっと本当の愛じゃなくて。
スパイ達が彼女に向けているのも、絶対に本当の愛じゃない。
「一緒に、育てていくもの……それが拙者の考える、愛でゴザル」
彼は私と一緒に、愛を育てていくのだと言ってくれた。
そうして傷だらけになりながら、アンジェリカさんを倒してみせたジンくん。いつだって私は、ジンくんに頼ってばかりだったけれど……でも、この時は少しだけ……私も、ジンくんを守れたのかなって思ったんですよね。
そういえば、初めて一緒に寝たのもイベント初日でした。ふふっ、今ではジンくんも当たり前に一緒にお休みしてくれるようになりましたね。
……
イベント二日目も、色んなことがあり過ぎて盛り沢山でしたね。
私達は防衛を最低限……私とジンくん、コヨミさんとリンちゃんヒナちゃん、コンちゃんのチームが担当。それ以外は全員、他のギルドの拠点を攻めるっていう戦法でした。
そこではこれまで関りの無かったギルドの人達と戦ったりして、面識が出来たんですよね。特に印象が深いのは……やっぱり、グレイヴさんが率いる様になった【漆黒の旅団】ですよねぇ。
過去に戦った【旅団】とは、全く違う……それに、悪事を働くプレイヤーを率先して狙うっていう感じのPKer。やってることは、結構PKKに近い気がしますね。
そうそう、あの戦いの時に、私は新しいユニークスキル【エレメンタルアロー】を手に入れたんでしたっけ。
あちこちで乱戦が起きて、中小規模のギルドがどんどん敗退していって……そうして最終日を迎えた頃には、既にほとんどトップ20のギルドしか残っていなかったはずです。
私とジンくんは、センヤちゃんとヒビキさん……そしてリンちゃん・ヒナちゃん・コンちゃんと、応援者の皆さんと一緒に【天使の抱擁】の拠点へ向かいました。そこで【聖光の騎士団】のトップ……アークさん率いるパーティと遭遇して、激しい戦いになったんですよね。
その最後の戦いでは、多くのトップランカーが入り乱れた激しい攻防戦になった。
その中で、ジンくんがピンチになって……そこで私の背中を、ヒビキさんとセンヤちゃんが押してくれて。アンジェリカさんとの戦いの時は、ジンくんに任せる以外の方法が無かったけれど……その時は、ジンくんと私で一緒に全力で戦ったんですよね。
あの時の感覚は、今思い返しても凄まじい高揚感だった。ジンくんと私が、呼吸や心臓の鼓動まで共有しているかのような一体感。無我夢中だったけど、イベントが終わった時のドキドキは本当に忘れられません。
ページを捲れば、そこにはいつもとは違う格好の私達の姿。イベントの後の、クリスマスパーティーも楽しかったですね。
そうそう、ここで【ラピュセル】の皆さん……それに【真紅の誓い】や【闇夜之翼】【フィオレ・ファミリア】の皆さんも飛び入り参加したんでしたっけ。
普段はお話をする機会が無い人達とも、沢山お話をして楽しかったです。あと、この時から私は彼の呼び方を”仁くん”に変えたんでしたね……。
そして、クリスマスの日……私と仁くんはデートの後、寺野家でお泊りでパーティーをしました。仁くんには、サプライズのために内緒にしていたんですよね。
練習中だったお料理も、沢山喜んで貰えました。それに仁くんのお部屋で、一緒に寝る事になって。
あの時のキスを思い出すと、今でもドキドキしてきちゃう。本気で、全部を仁くんにあげるんだと思っていたんですけど……。
「でも、ヒメを大切にしたいから。愛しているからこそ、まだしない」
やっぱり仁くんは優しくて、誠実で、愛情深くて……二人の愛情を、一緒に育てていくんだって行動でも示してくれて。
その時、改めて実感したんです……私のすべては、仁くんのものだって。
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次のページには、振り袖姿の私と恋ちゃん……そしてお兄ちゃんと、仁くんが映った写真。初めて一緒に過ごす、お正月の時の写真です。
これまでの大晦日は、お家で大掃除をして、お母さんがおせち料理を作るのをお手伝いして……ただのんびりするだけの、そんな年末年始でした。
でも今年は、初めての彼氏さん……ううん、婚約者さんと一緒。それぞれのお家で過ごしたので、あまりお話とかも出来なかったんですけど……うん、ゲームの中で少しお話して、現実でも通話するくらいでしたね。
でも、電話越しでも仁くんと一緒に迎えた、初めての新年……それは今までで一番、素敵な年明けだったと思います。
あとは、そうそう! 年末の歌謡祭で瑠璃さんが歌っていて、とっても素敵だったんですよね。あんなに凄いアイドルがお友達だなんて、普通に考えると凄い事だって実感しちゃいました。
一緒に行った初詣は……あの二人組、仁くんやお兄ちゃんの元・同級生と会ったんでした。
仁くんに対抗心剥き出しで悪態を吐いた男の人と、彼氏が隣にいるのに仁くんを狙おうとしている様な視線だった女の人。言い方が悪くなりますが、正直もう二度と会いたくないタイプの人達でした。
そんな不快な出来事以外は、素敵な記憶ばかりです。恋ちゃんとご両親とも初めて御挨拶をして、三家族で一緒にお参りをして。
そうそう、仁くんが振り袖姿の事を褒めてくれて。
「姫、本当に似合っているよ。いつも可愛いけど、今日は髪型も、メイクも大人っぽくて……凄く、綺麗だね」
仁くんはいつも、ストレートに褒めてくれるんですよね。それに、具体的に褒めてくれて。いつもそんな感じだから、ちょっと恥ずかしいんですけど……でも、やっぱり嬉しくて。
あとは神社からうちに皆に来てもらって、新年会をする事になって……えへへ、私もお手伝いしたおせち料理、皆に喜んで貰えて良かったな。
……
次は、皆で行った温泉旅行の写真。バスの中で撮った写真に、ホテルや旅館で撮った写真。あとは温泉の……勿論、水着で入れるレジャー温泉の時の写真。
うーん……何度見ても、仁くんの身体って凄い。アスリートらしい、余計な贅肉の無い身体。現役から離れてもう、二年になるそうですが……それでも、この身体を維持できているんですよね。
食生活も自己管理していますし、右足の事を考慮してもウォーキングなんかは続けているみたいです。うーん、ストイック。
この温泉旅行でも、色んな事があったなぁ。
仕事で来られないはずだった瑠璃さんが、偶然からの電撃参加。私達のゲームを、両親たちが見守るなんて事もあったっけ。それとこの頃に、ネコヒメさんと知り合ったんですよね。あとは治さんと朱美さんが、お付き合いを始めたのもこの時でした。
そして何よりも……お兄ちゃんと恋ちゃん、そして私と仁くんが婚約したんです。それからは二人の間だけじゃなくて、名実ともに婚約者になりました。
そして、鏡美さんの初ログインの最中に……私達は、【暗黒の使徒】の暴走に巻き込まれたんですよね。
絡まれていたギルバートさんとバーベラさんを守ろうとしたら、私達にまで矛先を向けられて……私達に対して、ミモリさんが涙を流した事で、ジンくんが本気で怒りを露わにしていました。あんなジンくんを見たのは、私がマリウスに襲われた時以来でした。
でも私達の想いが届いて、ジンくんはいつもの彼に戻った。ほんの僅かな時間で自分の怒りを抑え込んで、冷静さを取り戻して……普通に考えたら、大人でも難しいと思う事をジンくんはやっていたんですよね。そういう所も、本当に尊敬できるし……大好きです。
そういえばあれも、この時ミモリさんが言った台詞がきっかけだっけ。
「……スーパー忍者タイム、いざ開幕ッ!!」
ふふっ……この言葉も今では、すっかりジンくんの決め台詞ですね。
……
次の写真は、旅行から少し後のもの。仁くんのお父さん……俊明さんの弟さんと、そのご家族とお会いした時の写真です。
この時に出会った、仁くんのイトコである数満さん。そしてご両親の再婚で、数満さんの義妹になった心愛さん。まさか【忍者ふぁんくらぶ】のイナズマさんが、仁くんの御親戚になったなんて。世間は狭いってよく言いますけど、それじゃあ済まないくらいの確立だと思います。
この頃にクランシステム実装の話が出て、私達はクラン結成に向けて動き始めて……そして樹の精霊・ドライアドと出会って、[ウィスタリア森林]の浄化に成功したんでしたね。
そうそう! ジンくんと私とお兄ちゃん、レンちゃんとシオンさんで一緒に変身したんですよね。あの時は、凄く気分が高揚していましたね。
その隣のページには、イカヅチさんがギルドに加わったんですよね。ジンくんとのやり取りや、ハヤテさんとのやり取りを見てて……ふふっ、口はちょっと荒っぽいですけど、やっぱり優しいところがジンくん達と似てます。
そしてゲームの中での、二枚の結婚式の写真。一枚は、お兄ちゃんとレンちゃんの結婚式の写真。もう一枚は、ケインさんとイリスさんの結婚式の写真です。二組の夫婦の幸せそうな表情を見ると、私まで嬉しくなって来ちゃいますね。
ずっと私を支えてくれて来た大好きなお兄ちゃんと、私にとって初めての親友の恋ちゃん。私達をずっと見守って来てくれたお兄さんとお姉さんである、ケインさんとイリスさん。そんな二組の結婚式の為に、私はジンくんと一緒に教会の修繕クエストを進めたんですよね。
そこで知り合ったのが、フリーランスのプレイヤーであるシキさん。後で偶然知った事ですが、シキさんはプロゲーマーの事務所に所属しているんですよね。
そういえば、この結婚式の直前……私は初めて、仁くんの弱音を聞いたんですよね。
「まだ見付からないんだ、将来の夢や目標が」
これは、私だからこそ教えてくれた心の裡……他の皆にも、ご両親にも言えなかった本音だって解りました。これからの長い人生を一緒に歩んで行く私にだけ、教えてくれたんだと思います。
だからこそ、私は仁くんに伝えました……あなたには、私が付いているって思って貰える様に。
「大丈夫です、仁くん。私も一緒に、夢の続きの手掛かりを探します。だって私の夢は……仁くんの夢を、支える事ですから」
彼が夢の続きを見付けるのは、それから少し後の事……。
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二月に入ってからは、現実でもゲームでも沢山のイベントが待っていました。
第五回イベントの前に、レベリングを頑張って……その時に、私達はマップ浄化のエクストラクエストの手掛かりを見付けました。その情報が元になって、他の勢力が浄化マップの拠点を手に入れたんでしたっけ。
そして第五回イベント……[試練の塔]攻略が始まった。そこでもジンくんとリンちゃん、私とヒナちゃんの絆が最大になって、スキルスロットを共有できるようになったんですよね。
あと、【ラピュセル】の皆さんが【竜の牙】のソウリュウに絡まれていて……それをきっかけに、皆さんをクラン【十人十色】に勧誘したんでした。
あの時もジンくんが機転を利かせたのが、解決の糸口になったんですよね。そういう所を考えると、ジンくんは頭の回転が早いなって思います。判断力とか、決断力もあるし……私の旦那様は、本当に凄い人ですね。
それから、二月十四日……バレンタインデーを迎えました。飾っているのは、仁くんへのチョコが完成した時の写真ですね。
仁くんに初めてのバレンタインチョコを渡して、幸せな時間を過ごして……帰る時には天気予報が大外れして、大雪になったんでしたね。お父さんとお母さんが、特例を認めてくれてよかった……月に一度だけのお泊りは、そのすぐ後……仁くんのお誕生日の時って、決めていたから。
……
でも、その日を迎える前に……私達は、またもゲームでトラブルに巻き込まれたんですよね。
それは年始の決闘で敗北した【暗黒の使徒】の暴走と、その暴走に便乗したPKer達……そして、裏で糸を引いていた元【漆黒の旅団】が起こしたマッチングPK。
その情報を得た私達は、これまでのゲームプレイで構築して来た信頼関係を最大限に活用しました。PKK作戦……それはトップランカーが連合となって、マッチングPKを目論むPKer達を排除するというものでした。
私はジンくんとコンビを組んで、PKer達の討伐に乗り出して……ハヤテさんとアイちゃんを襲ったかつての【漆黒の旅団】の首魁・ディグル(ズーク)を倒す事が出来ました。
……
そんなトラブルも無事に収束して、いよいよ迎えた仁くんの誕生日。学校が終わった後、私は仁くんのお家にお邪魔しました。沢山の人に祝福された仁くんは、とても嬉しそうでした……その様子を見て、私も幸せな気持ちになっちゃいました。
そして、仁くんと一緒にお休みする時……クリスマスの日に仁くんが言っていたネグリジェを買っておいた私は、それを身に着けて仁くんの所に向かいました。仁くんは、私を抱き締めて、そしてキスをして……。
「お誕生日……良い日に、なりましたか?」
「うん。迷わず断言できるくらい、最高の一日だよ」
そう言って、私の額にキスを落として。
「姫……本当にありがとう。今日の事も、これまでの事も……全部含めて、ありがとう」
そんな事を言ってくれました。
でも、お礼を言いたいのは、私の方。人を愛する事が、こんなにも素敵な事だと教えて貰った。愛される事が、こんなにも幸せな事だと教えて貰った。
それも全て、あなたに出会えたから……あなたが生まれて来てくれたから、知る事が出来たんです。
だからこそ、私にとって二月二十一日は特別な日。自分の誕生日と同じくらい、幸せの象徴みたいな日なんです。
そして第五回イベントが終わって、打ち上げパーティーをしている時。ジンくんは、ハッキリと告げたんですよね。
「未来の金メダリストを、育てる……それを、僕の新しい夢にしようと思うんだ」
その時のジンくんは、今までで一番格好良かった。自身と活力に満ち溢れて、未来に向けて走り出す強い意志を瞳に宿していた。
私は彼が、”陸上界期待の星”と呼ばれた意味を実感しました。それだけ、あの時のジンくんは輝いて見えたんです。
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三月に入ってから私達はまず、クランで三月生まれの皆さんのお祝いをしました。盛大なパーティーで、皆とても楽しそうでした。次は、四月一日……私の誕生日に、誕生日祝いのパーティーですね。今から、楽しみです♪
その次の日に、私達は恋ちゃんの誕生日パーティーに参加しましたね。初めてお邪魔した初音家は、やっぱりとっても立派な御屋敷でした……すごく緊張してしまいましたね。
そうそう! そこで【魔弾の射手】の皆さんと、現実で初めてお会いしたんでしたっけ! 更に瑠璃さんも招待されていてで、パーティーの後はそのまま初音家にお泊りさせて貰ったんですよね。
その時の写真を見ると、皆笑顔いっぱいで楽しそう。えへへ、更に皆さんと仲良くなれた気がしますね♪
その後は第四エリアへの道を探しつつ、三組の結婚式。【桃園の誓い】からゼクスさんとチナリさん、ゲイルさんとフレイヤさん。そして【七色の橋】からは、ハヤテさんとアイちゃんの結婚式が挙げられました。この時、外部の人は忙しいだろうと招待はしてなかったんでしたね。
何度見ても、結婚式の写真って幸せな気持ちになれます。現実での写真も、いつかこうしてアルバムに飾りたいな。
それから私達は第四エリア到達の為に、海底ダンジョンに挑み始めました。そこで偶然逢ったのは、【天使の抱擁】の皆さん。そしてアバター名を、アンジェリカからアンヘルという名前に変えた彼女……。
彼女との間にあったやり取りを、ジンくんは包み隠さずに教えてくれた。それでも、私は面白くなかった。
ジンくんが、私を裏切る事は無い。それは、間違い無いと思う。信じられる、信じさせてくれる。だから、不満はそこではない。
ジンくんを困らせないで欲しい、傷付けないで欲しい……それが私の本音でした。
そんな私に、ジンくんはやっぱり誠実で……愛情深くて。だから私は、ジンくんに思いの丈を打ち明けました。
「ジンくんのお嫁さんは、私です。だから、誰が相手でも……絶対に、負けません」
これが私の、絶対に譲れない想い……彼の一番は、私だから。
そんな決意を口にした私でしたけど……ジンくんは「自分達の子供には、手加減してね」なんて言って。もう……ジンくんは、ずるいんですから。
ジンくんとの、子供……かぁ。成長したら、どっちに似るんでしょうか? 男の子でしょうか、それとも女の子?
一人っ子よりは、やっぱり兄弟がいた方が良いですよね……経済状況にもよりますけど、少なくとも二人は欲しいなぁ……。
って、流石に気が早すぎでした! まずは、ちゃんと自分達で生活できるようになって、結婚してからのお話です!
結婚……AWOでの結婚式みたいに、素敵な結婚式を挙げたいですね。お兄ちゃんや恋ちゃん、皆にも来て貰えたらいいな……。
あぁ、うん……これも、まだまだ気が早いですよね。十八歳になるまで、まだ三年ちょっとありますから。
……
今日はこの後、【天使の抱擁】の皆さんとクラン拠点で話し合いの予定。
ギルド解体後、新たなギルドを立ち上げて、アバター名も変えて……そうして、クラン【十人十色】に加入するかどうか。
あとは、アンヘルさんが口にしていた事……アンジェリカさんとして、最後の配信をするかどうか。
これらについて、話し合う予定です。ギルド解体と聞くと、少し寂しそうに思えますけど……仕方が無いですよね、今のAWOの雰囲気を考えたら。
これももしかしたら、ある意味”卒業”になるのでしょうか?
もうすぐ春……三月が終わって、四月が訪れる。始まりの季節が、今年もやって来る。そして四月一日を迎えたら、私は十五歳になる。
アナザーワールド・オンラインが、始まった季節……そして、私と仁くんが出逢った季節。
来年の今頃も、こうして私はアルバムを眺めるんでしょうね。幸せな記憶を、振り返りながら。
私はきっとこれからも、幸せな時間を積み重ねていく……仁くんと寄り添いながら、皆と一緒に。
次回投稿予定日:2026年1月10日(本編)




