↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/33

18話 「侵入」

 アルヴァスは瞼(まぶた)を閉じて、アインの魂に干渉(アクセス)を試みる。

 

「干渉(アクセス)出来たら、教えてくれ」


「うむ」


 アインもつられるように瞼(まぶた)を閉じる。

 そして、何か感じられないかを確かめる。

 手は使えないので、己の感覚に身を委ねて。

 

(真っ暗だ……。

 この中に、何があると言うんだ?)


 ただ一人、深い深い闇の中に取り残されるアイン。

 しかし、そこには何もない。

 アルヴァスが感じているはずの何かは、どんなものなのか。

 それを知ることは出来ない。


――――今のところは。


(もう少しであるぞ。

 よーく、神経を研ぎ澄ませるのだ)


 暗闇の中、アルヴァスの声が耳にこだまする。

 自分以外の誰かがそこにいる。

 それが分かっただけで、大分心が楽になる。


(言われなくても、さっきからやってるよ)


 口には出さずに、心の中で返答をする。

 感覚を研ぎ澄ませるためには、あまり五感に意識を向けてはならない。

 生きるために必要な、最低限の生存能力だけを身体に残す。

 それ以外は全て来(きた)るべき時である、干渉(アクセス)される瞬間を察知するために注ぐ。


(まだか……)


 今か今かとアルヴァスの干渉(アクセス)を待つ。

 自分から行けるのであればそれに越した事は無いが、何しろ身動きが取れない。

 暗闇の中(瞼(まぶた)を閉じた状態)なので、わざわざ何も怪我のする必要が無い場所で危険を犯す事はない。


 少しながら興味があるので、そわそわしながら感覚を研ぎ澄ませていく。

 少し意識を戻せば、凄い速さで貧乏ゆすりをしていた。

 戻すべきでは無いのだろうが、足に違和感があったのだ。

 好奇心には勝てまい。


 そして、遂に暗闇の中にそれは現れた。


(ん、あれか?)


 手が触れられる範囲では無いものの、視界に薄ぼんやりと映るそれ。

 少しずつそれは、アインの下(もと)に伸びてくる。

 

(あれ自体が生物…………ではないな。

 身体の一部か?)


 左右にぶれることなく、アインに向かって一直線に伸びるそれ。

 生物独特の温かみのようなものは感じられず、実直に命令に従うようである。

 温かみというのは、呼吸であったり血の循環といったものである。

 途中で休憩を挟むことはないし、規則的な動きのみをする。

 それには、生というものが無いかのようである。

 

 しかし、それは不意に停止した。

 前兆といったものは見てとることは出来なかったが、直後、アインの意識は唐突に覚醒する。


「アイン、感じ取れたか?」


 アルヴァスが顔を覗き込んで(下から見上げる形で)、アインのすねを蹴っていた。

 最初はただ目の前の光景に呆然としていたが、猛烈な痛みによって、無理矢理に現実に引き戻される。

 

「いったあぁ!?」


 じーーん……という痛みが足から上へ上ってくる。

 言葉にならない辛さにしばらくのたうち回っていたが、しばらくすると、それも治まってくる。

 ゆっくりと起き上がりながら、アルヴァスを睨む。


「うう……。

 何ですねを蹴るんだよ!」


 アルヴァスに、ぶちギレる。

 自分が古代龍だと分かっていないのだろうか?

 その力ですねを蹴られたら……。

 いい加減理解して欲しいものだ。


「いやぁ、教えろと言った割には全然気付かないのであるなぁと思って、何回くらいで気付くかなと試していたところであるのだ。

 それほど怒る事は無かろう?」


 目をうるうるとさせながら、無邪気な子供光線を発してくる。

 見た目だけを見ればまだ可愛いのだが、中身はかなり歳のいったおっさんである。

 吐き気だけではなく、あらぬ妄想(幼児(アルヴァス)が子供を襲う構図……)が頭に浮かぶ。


「アルヴァス様がそんなことをするはずは、多分……いや、ほとんど無いはず!」


 エリアーヌが俺の心を読んで、アルヴァスの援護をする。

 わざとらしく途中まで言いかけて完全否定をしない辺り、アルヴァスは信用されているのか、されていないのか微妙だ。

 少し可愛そうになり、同情もしたくなる。

 しかし、毎回こんなであるから、疲れることを見越して同情はしない。


「っと、俺に向かって伸びてきていたのは、アルヴァスがやったのか?」


「うむ。

 それを聞いてくるということは、アインは見る事が出来たのだな!

 アインに向けて伸ばしていたのは、我の意識だ。

 意識を相手の魂のそばまで持っていき、無理矢理に魂を繋ぐ。

 そして、一気に相手の所へと身体を持っていく。

 それが、バビューンだ!

 やってみろ!」


「……」


 アインは思わず頭を押さえた。

 古代龍には出来て当たり前だと言っていたが、かなり強引な方法だった。

 

「一つ間違えたら、肉体に戻れなくなったりしないよな?」


「今のところは無いな!」


 今のところはって……。

 そうなることは、絶対に無いとは言い切れないのか。

 だが、やるしかないのだ。

  

「はぁ……」


 ため息が出るが、その行動とは裏腹にアインの顔には笑みが張り付いていた。

 楽しいと感じているのだろう。

 仲間と一緒に何かを成すことは、誰にとっても楽しいものだから。

 特に、仲間と呼べる者がいなかったアインにとっては、なおさら楽しいのだろう。

  

「よし、続きを頼む」


 アインは、こっそり"空間把握"を使用する。

 無論、この状況で使用しても効果は無いのだが、適用範囲を変えれば良いだけの話。

 つまりのこと、意識だけの空間でも空間把握を発動させれば良いのだ。


(核、空間把握の適用範囲を拡大してくれ)


《はい。

 ――――完了。

 任意の形で適用範囲が拡大されました》


 これで大丈夫なはずである。

 今度こそ、自分には使用可能かを確かめる事が出来るはずだ。

 確認の意も込めて。 

 

「ではいくのである。

 今度は、魂を繋ぐところまでやるのだ」


 アインはこくりとうなずき、瞼(まぶた)を閉じる。

 すると、先程では感じられなかった、光、音、匂いなどの感覚が、目を開けている時と同じように認識出来た。

 

(凄いな……。

 まるで違うぞ)


 全てが鮮明に映り、意識せずともその世界に飲み込まれていく。

 それは、二つの世界の境界線が曖昧になるほどだ。

 慌てて意識を戻して、ゆっくりと世界に浸っていく。


 ふと遠くを見れば、先程のアルヴァスのそれが動いていた。

 正体は不明だが、より理解を深めるために心の抵抗を弱めた。

 自分の心を晒すような、壁を取っ払った感じである。

 すると、それが近付くスピードは速くなる。

 

(俺からも近付けるのか?)


 心の中で、近付きたいと念ずる。

 すると、身体は動いていないのに、なぜか視界は前へと進んでいく。

 

(どうなってんるんだ?)


 それだけではない。

 動かしている意識は無いのに、自然に腕がそれの方向に伸びる。

 アインは無意識に近付いてきたそれを掴む。

 すると、まばゆく発光しだす。


(ま、まぶしい……)


 目が焼ける程の白い光を放っているそれは、最早アインの目では捉えられなかった。

 意識の世界だと言うのに、思わず瞼(まぶた)を閉じる。  

 それでも、光は紅く紅く瞼(まぶた)の裏に映る。

 

(うっ、うう…………)


 やがて光がおさまったかと思い、目を開ける。

 そこには、アルヴァスがいた。

 そして、手には謎の感覚があった。

 自分の腕まで視線を落とせば、アルヴァスの腕がアインの手によって掴まれている。


(おわぁっ!?)


 アインが掴んだのは、アルヴァスの手だったのだ。

 驚きながら、慌てて手を離す。


(分かったであるか?)


(あ、ああ……)


 恐らく、アルヴァスの意識(腕)を掴んだ瞬間、魂が結び付けられたのだろう。

 距離が離れていれば、あのまま身体を持っていく事も可能であったはずだ。

 

(これでセルケイの所まで行けるよな?)


(うむ。

 しかし、一つ気を付けるべき事がある)


(何だ?)


(長い時間、意識の世界に居るな。

 今は我がいるから良いが、戻れなくなる可能性もあるのだ。

 くれぐれも注意せよ)


 アルヴァスが、珍しく険しい顔をして忠告してきた。

 それほど危ない事なのだろう。

 しっかりと心に留めておく。


(分かった。

 じゃあ、一度ここから出ていいか?)


(勿論であるぞ。

 それと、アイン。

 ここから出たら、一足先にそなただけでセルケイの所へと向かってくれまいか?

 エリアーヌにも教えねばならないのでな!)


(ああ)


 アインは、こくりと頷(うなず)く。


(それに…………。

 あやつとは、少々話さねばならぬことがあるのだ。

 迷惑をかけてすまんな)


 アルヴァスは、何やら神妙な面持ちでそう話す。

 先程誤魔化した事に関係があるのだろうか?

 

(謝ることは無い)

 

 詮索をせずに、話を受け流す。  

 それは、アインなりの気遣いだった。

 アルヴァスの顔を見て、真剣さを感じ取ったのだろう。  

  

(じゃあ、また後でな)


――――フッ。

 その言葉を最後にして、アインの意識はその世界から遠ざかる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
以下はポチっと押すだけですのでね、お願いします。 小説家になろう 勝手にランキング 小説家になろうSNSシェアツール ノベルバ こっちでも読んで下さいましたら、嬉しいです(/ω・\)チラッ
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。