第1話 日常からの脱落者
少し心配性な普通の大学生である高峰律。 ある日の帰り路に女が斬首される現場を目撃してしまう。 しかし数分で死体もその目撃者も消えており覚えているのが律のみになってしまった。 斬首した男の言葉を頼りに首塚に向かい、そこで出会った者によって日常から落とされていく....
「午後に講義詰め込みすぎたかな....」
朝起きれるか不安というだけの理由で昼以降に講義を単位とれるまで詰め込んだら
講義が長い火曜日は終了が18時過ぎになってしまう。
帰りに弁当を食べたいところだがこの辺りはラブホテルや風俗、ナイトクラブなどが隣接し暗くなってからは安全を考えるとあまり歩きたくない。
そのため帰り路でコンビニのホットスナックを晩御飯代わりに食べるのが日課になっていた。
その日もそんなことを考えながらいつも通りその道は足早で通り過ぎようとした。
「え…」
そのとき、ふと目が留まったのは同じ学部の女子生徒が父親ほどの年齢の腕に抱きつきながらホテルに入ろうとしている姿....ではなくその後ろから大太刀を持った男が女子生徒の首を斬ろうとしているところだった。
足は動かなかった。正確に言えば後ずさった。物語のように走って助けられるわけもなくその女子生徒は衆人環視の中で首を切断された。
「東京都千代田区大手前町1丁目―」
「ここにおいでね~」
その大太刀の男は人を殺したとは思えない笑顔と口調でそう言いながらどこかに立ち去って行った。
「きゃあああああ!!」「うわあああああ!!」
一瞬で阿鼻叫喚となった。逃げる者、女をかばう者、警察に震える手で通報する者と様々だ。しかしその状況は長くは続かなかい、女子学生の死体が霧にまかれたように消えると同時に記憶を抜かれたかのように日常生活に戻っていった。僕以外は…
約三十分話を聞いて回った。首を切られたなどと聞くと頭のおかしな子とみられ、心が折れかけた。
「住所だ…あの住所だ」
あの大太刀の男が言っていた住所を調べると
「平将門の首塚…」
かなり怖いがそれでは何も変わらない、と勇気を奮い立たせ現地に向かう。
◇
ビル群の中にある異質の祠。首塚の一角に大太刀の男と同じ袴のようなものを着た男女が堂々と談笑していた。
「だからモテないのよ。あの男は」
「あいつそんなノンデリ発言を――」
目が合った。
「....お前、俺ら見えてんの?」
「え…⁉」
「やっと今月二人目か....」
「あなた、これを羽織ったら祠の裏まで来なさい」
「は、はい....」
訳が分からないまま恐怖と好奇心に突き動かされ白の下地に赤の幾何学模様で何か描かれたコートを羽織り、祠の裏に向かった。裏にはマンホールくらいの大きさの円状に服と同じ幾何学模様が魔法陣のように描かれ軽く光っていた。
魔法陣が開き底の見えない大穴になる。
「ここに落ちなさい」




