最初はグー……
「お待たせ致しました。……またまた少々申し上げにくいのですが」
「今度は何ですか?」
「定員のほうが、先ほど丁度一杯になりまして……」
「え?」
「え?」
「え?」
「我々の努力が報われた」
今までの俺たちの苦労は水の泡?
「つまり、運が良かったってことか?」
「なーんだ、心配して損しちゃった。じゃあ改めて、普通のクエストを受注しましょ」
「悪いな。緊張した」
定員一杯で良かった……。ほっとした。
「そりゃあ俺だって、ちょっと身構えちまってたぜ、ははは」
「私も、どんな魔境に連れて行かれるのかと思っちゃった」
「そ、そうね……」
「……あのー、まだ話しは終わってないんですけど?」
「?」
「?」
「?」
「?」
「定員は二名様となります。この用紙に、戦地へ向かわれる方のお名前、年齢、ご職業をよろしくお願い致します」
「!」
「!」
「!」
「!」
「こっ、こういうときはさ……行きたい奴が……」
「ダメ!不公平だわ」
「おぅ……」
「じゃあどうするの?みんなで行けないなら、やめるの?」
「ちなみに、キャンセルはもうできませんので、あしからず」
「……」
「じゃあ、仕方ない。やるぞ……」
「最初はグー……」
あ。
◇
魔王の配下の龍人とは一体何者なのか……。
その謎を解明するため、我々冒険者はアマゾンの奥地へと向かった――。
そう、俺は大切な彼女を連れて。
「どうやら着いたようね……」
「いや」
そうだな。
「この森の奥に……龍人は潜んでいるようよ。道中も気を付けて進みましょう」
「何もなくて守れない」
何かあったら、俺が守るからな。
「……まずは、他の冒険者たちと合流しましょう。それが最優先よ。私についてきて」
「理解できない」
わかった。
◇
「……緊急クエストに参加している冒険者だな?」
「はい……よろしくお願いします。私は魔法使いで、彼は剣士です」
「……よろしくな。お前たちで参加者は最後だ。もうみんな森の奥へと向かってしまった」
「じゃあ、私たちも急がなきゃ」
「道は案内する。それと歩きながら敵の情報を教えておこう。聞いておいて損はないはずだ」
「お願いします」
「……魔王の配下の龍人は弓の使い手だ。装備品は魔神の弓ラビクルスだ」
「それは手強そうですね……」
「……」
無心。無心。
「そうさ……。冒険者なら知っていると思うが、一応説明しておこう。
魔王の配下の幹部クラスが扱う武器は魔神シリーズと呼ばれ、それは魔王自らが作りだしたと言われている。
魔王の刻印と、武器から溢れるその禍々しいオーラから、誰が見ても一目でわかるんだ」
「はい……」
「知らなかった……」
そんなの知ってたよ。
「そして魔神の武器からは魔弾と呼ばれる、魔王の力が秘められた悪魔の力が放たれるんだ。
今回はそれに注意することがとても重要だ」
「はい」
「斬れない……」
それ前に獣人から浴びたが、普通に切れたぞ。
「この戦場では防御力や回避力がないと、困難な戦いになるだろう……。これを持っていけ」
「……いいのですか?こんな高価そうな盾を」
「そこの剣士には必要だろう?剣以外何も持ってないじゃないか」
「盾があると、剣で切れない」
盾なんてなくても、別に剣で切ればいいんだけど。
「そうか?利き手と逆の手に盾を構えれば良いんだぞ?」
「あの、すみません、せっかくのご好意を無駄にしてしまったようで。彼は口下手で……」
「別に問題はないが……どうやらそのようだな。
まあこういうタイプの人のほうが、戦場では特別役立ったりするものなんだ。
ほら、もう少しで他の冒険者たちがいるキャンプ場に着くぞ」