真優 1
「大きくなったなー」
夫の史徳が満面の笑顔で息子の頬を指でつんつんと突いた。その度にぷにっと柔らかく瑞々しい肌がへこみ、指を離すとふにんと張りの良い弾力が指をはじき返した。
「ずっと見てられるよなー」
「ほんとに」
幸せというものを形にしたとするなら、それは間違いなくこの子の事だ。
そこにいるだけで私達を笑顔にし、心を満たしてくれる。
「もっともっと頑張らないとな」
「期待してるわよ、お父さん」
「なんだか、慣れないなー」
困ったような笑顔を見せる史徳の頬を私は少しつねってやった。
「いたっ!」
「しっかりしてよ、父親の自覚って大切なんだから」
「うん、そうだな。そういう真優はすっかりお母さんだな」
「この子が生まれる前から母になる覚悟はちゃんと決めてたもの」
「大したお母さんだよ」
史徳の大きな手が私の頬に触れた。
もちろん史徳の事は信頼している。彼がしっかりとした父親として私達の支えでいてくれるであろう事も分かっている。だから彼と結婚した。彼との子供を残そうと思った。彼となら、一緒に幸せになれると確信出来たから。
「お前のお母さんは立派だぞー。お前もその期待にちゃんと応えるんだぞ」
そう言いながら、史徳は息子の小さな手をきゅっと握った。
「お前を不幸になんてさせない。俺達が保証する」
私は心の中で父親として踏み出す史徳の姿を微笑ましく眺めていた。