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ママ友に夫も居場所も奪われるまで  作者: 熊猫ぱんだ


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やっと、息ができる

 半年後。

 真央は、駅前のカフェにいた。

 窓際の席。

 温かいカフェラテ。

 騒がしすぎない店内。


 前なら、こういう静かな時間ですら落ち着かなかった。

 スマホを気にして。

 誰かの視線を気にして。

 園のグループLINEに怯えて。


 でも、今は違う。

 スマホは伏せたまま。

 通知も、ほとんど鳴らない。

 真央はゆっくりカップを持ち上げる。


 「あつ……」


 小さく笑う。

 そんな些細なことで笑えた自分に、少し驚いた。


 窓の外。

 子どもが走っている。

 その姿を見ながら、ふっと肩の力が抜ける。

 あの日から、色んなものが変わった。


 健太とは正式に離婚した。

 最後まで揉めた。

 謝罪と後悔を繰り返していたけれど、一度壊れたものは戻らなかった。


 美月は引っ越したと聞いた。

 どこへ行ったのかは知らない。

 知ろうとも思わなかった。


 最初の頃は、何度も思い出した。

 苦しくなった。

 眠れない日もあった。


 でも。

 少しずつ。

 本当に少しずつ。

 真央は、自分を取り戻していった。


 仕事も始めた。

 小さな洋菓子店。

 週に数日だけ。

 ずっと好きだった焼き菓子を並べる仕事。


 最初は不安だった。

 ブランクもあった。

 でも、お客さんに「美味しかったです」と言われるたびに、ちゃんと前へ進めている気がした。


 「ママ!」


 声がして顔を上げる。

 子どもが手を振っている。

 真央も笑って手を振り返す。

 その笑顔が、昔より自然になっていることに気づく。


 席を立つ。

 子どもの元へ向かう。

 その途中。

 ガラスに映った自分の顔が見えた。

 前より少し痩せた。


 でも。

 ちゃんと前を向いていた。

 完璧な人生じゃない。

 失ったものも多い。

 許せないことも、まだある。


 それでも。

 真央はもう、“誰かに選ばれる側”じゃなかった。

 自分で選んで。

 自分で生きている。


 店を出る。

 夕方の風が頬を撫でる。

 空が綺麗だった。


 真央は子どもの手を握る。

 小さくて、温かい手。

 ぎゅっと握り返される。

 その瞬間。

 真央は、やっと思えた。


 ああ。

 もう、大丈夫かもしれない。

 ゆっくり歩き出す。

 今度こそ。


 誰にも奪われない未来へ。

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