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ママ友に夫も居場所も奪われるまで  作者: 熊猫ぱんだ


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25/31

公開

 翌朝、真央は迷わなかった。

 スマホを開く。

 昨夜の録音データ。

 何度も聞き返す必要はない。

 もう十分、理解している。

 言い逃れはできない。


 「……よし」


 小さく呟く。

 やることは決まっている。

 問題は順番だけ。

 スマホが震える。

 あの番号。

 開く。


 『準備はできていますか』


 短い一文。


 『できてます』


 即答する。

 既読。

 すぐに返信。


 『では、出しましょう』


 その一言で、空気が締まる。


 『どこに出すかは決めていますか』


 問われる。

 少しだけ考える。


 園。

 グループ。

 義実家。

 全部、候補にはある。

 でも。


 (足りない)


 一気に崩すには。


 『園の関係者全員に届く形』


 そう打つ。

 既読。


 『いい判断です』


 短い評価。


 『ただし、一度で終わらせようとしないでください』


 続く。


 『分割して出します』


 その言葉に、納得する。

 一気に出せば、混乱する。

 でも、分ければ逃げ場がなくなる。


 『まずは音声の一部』


 指示が来る。


 『一番分かりやすい部分だけ』


 確かに。

 全部じゃなくていい。

 核心だけで十分。


 『分かりました』


 返信する。

 スマホを握り直す。

 録音を開く。

 再生。

 あの会話。


 何度聞いても、変わらない。

 真実。

 指が止まる。

 一瞬だけ。

 でも。


 (もう戻らない)


 決めている。

 送信先を開く。

 グループLINE。

 園の母親たち。

 全員がいる場所。

 画面が静かに光る。


 テキストを打つ。

 余計な言葉はいらない。

 事実だけ。


 『誤解があるようなので、確認のため共有します』


 それだけ。

 音声ファイルを添付する。

 数秒。


 送信ボタンの上で指が止まる。

 最後の確認。

 これを押せば、終わる。

 全部、変わる。


 ゆっくり息を吸う。

 そして。

 押す。

 送信。

 画面に表示される。


 既読は、まだつかない。

 静かな時間。

 でも、すぐに動き出す。


 一人。

 また一人。

 既読が増えていく。

 心臓が強く打つ。


 そして。

 最初の反応。


 『これ……本物?』


 短いメッセージ。

 すぐに続く。


 『え、どういうこと』

 『ちょっと待って』

 『これ、あの人たちの声?』


 一気に流れが変わる。

 止まらない。

 次々にメッセージが入る。


 『内容やばくない?』

 『完全に……』

 『え、今までの話って』


 言葉が濁る。

 でも、十分だった。

 空気は完全に変わっている。


 真央は画面を見つめる。

 何も打たない。

 説明もしない。

 証拠が、すべてを語る。


 そのとき。

 スマホが震える。

 着信。

 健太。

 すぐに切れる。

 また鳴る。

 無視する。


 次は。

 美月。

 同じく鳴る。

 止まらない。

 でも、出ない。

 その必要はない。


 もう、会話の段階じゃない。

 すべては出た。

 そのとき、グループに新しいメッセージ。


 『これ、先生にも共有した方がいいよね』


 一文。

 空気が固まる。

 そして。


 『そうだね』

 『このままにできない』


 流れが決まる。

 園も巻き込まれる。

 完全に。

 真央はゆっくりと息を吐いた。


 (終わった)


 いや。


 (終わらせた)


 静かにスマホを置く。

 もう、戻ることはない。


 でも。

 それでいい。

 全部、表に出た。

 隠されていたもの。

 歪められていたもの。

 全部。


 その代わりに。

 新しい現実が、始まる。

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