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【完結】空港清掃員58歳、転生先の王宮でも床を磨いたら双子に懐かれ、国王に溺愛される  作者: 木風


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3/4

第三話

リオンは窓の低いところを担当した。

足台に乗って真剣な顔で布を動かす姿は可愛かったが、力の入れ方が壊滅的で、最初のうちは逆に汚くなった。


「駄目です。円を描くように。ほら、こう」

「むずかしい」

「最初は誰でも難しい。でも続けたらできるようになります」


リアは床の拭き方を習った。最初は雑巾を水浸しにして廊下を水浸しにした。


「えー、なんで絞るの面倒」

「絞らないと逆に汚くなります。それに、床が濡れすぎると誰かが転びます」

「それは嫌だ」


渋々絞るようになった。

二人の成長はゆっくりだったが、エルシアは急かさなかった。

幸子は知っていた。上手になるのを褒めるより、やろうとしていることを認める方が、人は伸びる。


三ヶ月も経つころには、双子は小さいながら本当に戦力になっていた。

他の清掃員たちも最初は困惑していたが、すぐに懐かれてしまった。

王宮の清掃部門は、知らぬ間に王族付きのほんわかした職場になっていた。


問題は、上の人間にそれが知られたときだった。


その日、エルシアが謁見に呼ばれた。

清掃員が謁見に呼ばれることは、普通ない。

エルシアは自分が何かやらかしたのかと思ったが、心当たりは「王子が窓拭きで転落しかけたのを支えた件」くらいだ。

あれは自分のせいではないと思うが。


玉座の間に入ると、そこには国王が一人、書類を片手に立っていた。


グレード・ロゼリウス国王。

三十四歳。亡き王妃を深く愛し、その死後は執務に沈んで人々を遠ざけていると噂の人物。


実物は、たしかに目の奥に疲労と悲しみの影があったが、それを差し引いても随分と整った顔立ちをしていた。

幸子の目が「いい素材だけど手入れが足りない」と瞬時に判断した。クマが酷い。


「エルシア・フォン・ヴラディ、現王宮清掃員か」

「はい、陛下」

「リオンとリアが毎日お前のことを話す。飯を食いながら、風呂に入りながら、寝る前の読み聞かせの途中でも。正直、父親として複雑な心境だ」


エルシアは「申し訳ありません」と言おうとしたが、国王が手を上げて遮った。


「謝らせたいわけではない。……あの子たちが笑うようになった」


国王の声が、一瞬だけ揺れた。


「妻が死んで以来、リアはずっと泣いていた。リオンは逆に全然泣かなくなった。どちらも心配だった。だが今は二人とも、顔色がいい。食欲も戻った。夜もよく眠れているらしい」


エルシアは黙って聞いていた。


「お前は何をしたんだ」

「一緒にいました。それだけです」

「それだけ、か」

「あとは、お掃除を教えました。汚れを落として綺麗になると、気持ちが少し楽になることがありますから」


国王はじっとエルシアを見た。

幸子の目には、その視線が『値踏み』ではなく『測ろうとしている』ものだとわかった。

騙そうとしているのではなく、本当に理解しようとしている目だ。


「お前、貴族の娘だな」

「元令嬢です。今は清掃員です」

「なぜ清掃員に」

「事情があって実家を出まして。でも掃除は好きなので。職に困りませんでした」

「……強い人間だな」


エルシアは首を傾げた。強いつもりはなかった。ただ幸子として生きた五十八年が、そうさせたのだ。


「お前に頼みたいことがある」

「はい」

「双子の、世話役をやってほしい。無論、清掃の仕事との兼務でも構わない。給料は増やす。あの子たちがお前を必要としているのが、父親の俺にもわかる」


エルシアは少し考えた。

断る理由はなかった。双子のことは、本当に好きだった。

幸子として持てなかった子供の代わり、というわけでもないが、あの小さい二人のそばにいることは、エルシアの心を満たした。


「わかりました。お受けします」

「助かる。それと」


国王が珍しく、少し困ったような顔をした。


「私の部屋も、掃除してくれないか。今の担当者が、正直いまいちでな」


エルシアが国王の執務室を見に行くと、『いまいち』どころではなかった。

書類の山、重なった食器、厚く積もった棚の埃。

悲しみに沈んだ男の部屋というのは、かくも荒廃するものか、と幸子的な目が分析した。


「一日いただけますか」

「好きにしてくれ」


エルシアは袖をまくった。

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よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ

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