エピローグ
「なんだよ、案外楽しくやってんじゃねーか」
「そうみたいですね」
死神と呼ばれたものと愛の父、一也が並んで空から三人を眺めている。
「てめーもあれだな、年に数日だけしか帰ってこられねーってのに。自分が消えたこの世を見て、何が楽しいんだか」
「大事な娘、ですからね。こうして成長を見守ってるだけでも嬉しいし楽しいもんですよ」
「ふーん。血のつながりはねーのに」
「それはそうですが、死神さん、これはあなたのせいなんですからね?」
「んだとてめー!」
「おっと、私に変なことしない方が身のためですよ?」
「ちっ、仏のやつに入れ知恵されたな?」
「さて、何のことでしょうね?」
かつて、娘の魂を刈り取り、遠藤葵の体へ水原愛の魂を入れた存在。色々思うこともあるのだろうが、一也は死神を恨むことも語気を荒げることもなく、平然と話している。
「しかし、あなたもうちの娘のこと、気にかけてくれてるんですね」
「そんなんじゃねーよ、自分の仕事として許せねーからな」
「と言うと?」
「…俺は魂を狩るのが仕事、魂入れなんざ範疇じゃねえ。なのに、あの時やらされたばっかりにこうなっちまったからな。見届けてやろうかなってな」
「まあ、でもそのおかげで私はこうして娘と再会できたんですし、よかったと思ってますよ」
「てめーは良くても俺は良くない。『死にたい』なんて言おうもんなら、とっととその魂刈り取ってやろうと思ってたのによ」
「うちの子は、そんなこと言いませんよ。これまでも、これからも」
「けっ、どうだか。言うかいうまいか、最期まで見届けてやるよ」
「…死神さんも素直じゃないですね」
一也は少し嬉しそうだ。
「そんなんじゃねーよ。オラ、とっとと行けよ、火消えちまうぞ」
「もうだいぶ乾いてるから平気ですよ。それじゃ死神さん、また茄子の馬に乗ってくるのでお迎えよろしくお願いしますね」
一也は死神に手を振り、好子たちと共に家の中へと消えていった。
死神は返事をせず、ただその様子を横目で見ていた。
こいつらなら、過ちから生じた奇跡を最期の瞬間まで大切する。そして、見たこともないような綺麗な魂が刈り取れるのではないか、と。




