212. エーネさんと陛下
「シュペアのことじゃが・・・。」
「ダメだ。シュペアはウィルの側近になる者だ。エーネの頼みでもやれん。
今はまだ名誉騎士爵だが、この先も爵位は上がるだろうしな。
他にも欲しいと言う者は多数いるが、ダメだ。」
「まだ何も言うとらんじゃろうに。」
「あの子は未知数だからな。いつもとんでもない爆弾を持ってくる。
しかし、どれも悪い方には行ったことがない。」
「神に愛されておるのかもしれんな。」
「羨ましいことだ。」
「シュペアはインディールの魔女に会いに行くと言っていた。あれと会うことで何か起きそうな気がする。わしの勘じゃが。」
「エーネ、怖いことを言うな。私はもうお腹いっぱいだ。」
「旅の時には3人に騎士団の式典用の制服を持っていかせよう。その方がいい気がしてきた。」
「3人?」
「あぁ、シュペアは仲間と一緒に長期研修の名目で冒険者として旅をしているんだ。」
「はぁ?なんじゃそれは。」
「シュペアの身を守るためにウィルが騎士団の肩書きを与えたんだ。仲間には俺が与えたが。」
「それで子供なのに騎士団に在籍しているのか。確か昔もいたな。子供が。」
「それはウィルだ。」
「ん?さっきのか?子供は赤目だったと記憶しているが。」
「ウィルは赤目が目立たないように、普段から目の色を変える魔術を使っているからな。
そういえばシュペアも最近使っているな。」
「まさかシュペアも赤目なのかい?」
「いや、シュペアはアイスブルーだ。」
「そうか。茶色は本来の目の色ではないんじゃな。
そうか。旅か。それでトレントの道具を持っているのか。」
「トレントの道具?」
「トレントは魔力を通しやすいじゃろ?シュペアはその道具で作ったから自分の魔力がポーションに流れたのかもしれないと言っておった。
珍しいものを見つけてラジリエンかどこかで買ったんじゃろうな。」
「エーネ、面白いものを見せてやろう。これだ。」
「木でできたペンか?
ん?これはトレント?彫刻まで入っている。これは美しい品だな。さすが王が使うペンか。」
「そこの紙に書いてみろ。」
「分かった。インク壺を貸してくれ。」
「必要ない。そのペンにはインクが入っているからな。そのまま書いてみると分かる。」
「インクが入っている?」
「何じゃこれは!?
インクが途切れん。このペンは何じゃ?
どこの職人が考えた品だ?買えるのか?」
「今のところ買えないな。売っていないからな。作れる者は今のところ、この世に1人。」
「そうじゃろうな。売る気はないということか。」
「そうだな。その者は売る気はないだろうな。他のことで忙しいからな。」
「何じゃ、ただの自慢か。」
「エーネは心臓が丈夫だったか?」
「はぁ?何の話じゃ?話が飛びすぎじゃぞダイター。
まぁ身体はどこも丈夫じゃが。」
「エーネは口外しないと信用して、そのペンの作者を教えてやろう。」
「いいのか?口外はしないが、その者に許可なく明かしても大丈夫なのか?」
「たぶんエーネになら明かしても大丈夫だろう。怒られたら謝ろう。怒るとすれば本人というより周りか。」
「そうか、してその作者は?」
「シュペアだ。」
「!!」
「ハハハ、エーネのそんな驚いた顔は初めて見る。
だからシュペアが使ったトレントの道具は恐らくシュペアが自分で作ったものだな。」
「神童か。もう十分生きて、もう面白いことなど見尽くしたと思っていたが、この歳になってこんなに面白いことに出会えるとは。
巡り合いとは実に面白いものだ。」
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