231 伝説のオタクを倒したとなれば、この俺もこの辺の顔よーw
僕はスマホを取り出すと、予め登録してある番号にかけた。
相手方は案の定と言うか、思い切り嫌そうなリアクションを示したけど、これも仕事。やっていただかなくてはならない。
エリス主催(?)の自由(勝手なとも言う)な歌合戦大合唱が佳境を迎える中、僕が召喚した、その人は来た。
ふぁおんふぁおんふぁおんふぁおん
◇◇◇
「おおっ、パトカーだ」
「すげえ。痛車トラクター。女の子二人背中に乗せて、空飛ぶ金髪のイケメン兄ちゃん。そして、パトカーかよ」
「どこまで盛り上げるんだよ、このイベント」
だから、これはイベントじゃないんですよー。そして、パトカーはイベントのために来たんじゃないんですー。
パトカーの登場に戦慄の表情を浮かべるインフォメーションのお姉さん。これ以上騒ぎが大きくなるのではという懸念ですね。分かります分かります。
やはり事態は一刻も早い収拾が求められる。僕はパトカーに駆け寄った。足利さん、すみません。またうちの父がやってくれました。
「まあ興宗君のせいじゃないよ。新田先輩は手強いけど、男には負けると分かっていても戦わねばならぬ時がある。これもまたロマン」
いや足利巡査長。あなたも父さんの後輩のせいか、妙なノリになっていませんか? 助手席にいる高巡査、引き気味ですよ。
◇◇◇
「あーえーおほんおほん」
パトカーのマイク大音量。「前の車止まりなさい」とかに使うやつだから、音量は大きい。周囲のざわめきも一瞬止まる。
「新田せんぱーい。今回はまた一段とシャレがきついっすよー。勘弁してくださいよー」
がたがたがた
周囲の見物客がずっこける音。足利さん、うちの父さんに頭が上がらないのは分かりますが、あなたは警察官でうちの父さんは取り締まりの対象です。ガツンと言ってください。ガツンと。
「わ、分かった。新田先輩。無届のイベント実施は違反です。速やかに撤収してください」
「あー」
何と父さん、これまでパトカーの存在の気づいていなかった。どこまでハイだったんだ。
「誰かと思えば足利後輩ではないか。3日ぶりくらいか? 元気かね?」
「元気かねーじゃないですよ」
脱力しかかる足利巡査長。
「無届のイベント開催は違反です。直ちに撤収してください」
「あー。それじゃ足利後輩。日付さかのぼって届け出代わりに書いといて。よろしくね」
「ぐおおおおー」
頭をかきむしる足利巡査長。
「足利先輩。負けちゃ駄目ですよ。頑張って男を見せてください」
あ、助手席の女性巡査高さんの励ましが出た。僕の目から見ても高巡査は可愛らしい人だ。これで足利巡査長にパワーが出るか?
「いくら新田先輩でも無届のイベントは違反です。直ちに撤収してくださいっ!」
うおおおお、男を見せましたか。足利巡査長。
◇◇◇
「ほおおおお」
痛車トラクターの中で不敵な笑いを見せる父さん。我が父ながらなんつーラスボス感。
「よくぞ申した。足利後輩。そこまで届出書がほしいなら、この俺を倒して、奪い取ってみせよ」
「届出書がほしいなら、皇帝たるこのあたしを倒してみせよ」
何でエリスもかぶせるの?
「このわしも倒してみよ」
「このわしも倒してみよ」
はいはい。老谷のじいちゃんと三太さんはこういう時、必ず乗ってくる方々ですからね。僕も驚きません。
「うおおおおー」
熱血少年漫画の主人公のような雄叫びをあげ、パトカーを飛び出す足利巡査長。
「やったろうじゃないか。伝説のオタク新田先輩を倒したとなれば、この俺もこの辺の顔よー」
何でヤンキー漫画みたいになっているんですか?
「落ち着いてください。足利先輩。新田さんから届出書を取っても、事前の承認が出ていないんだから、このイベントはそもそも無効なんです」
高巡査は冷静だった。
「止めてくれるな。高巡査。落ちぶれ果てても足利は武士じゃあ。この足利太買児、一世一代の捕物劇を見せてやるわっ!」
この町は警察の人までノリで生きているのか?




