209 何でここで異世界恋愛の夜会が出てくるんだよ。これから婚約破棄劇でも始まるのか?w
ええい、それじゃあエリスが見たいもの言ってみてよ。よっぽど変なものじゃない限り合わせるから。
「オキムネはそう言っているけど。絵栗鼠ちゃん。どうする?」
「むー」
母さんの問いかけに考え込むエリス。しかし、すぐに顔を上げる。
「お母上。老谷はこういうのを一番目立つところに置いていったぞ」
何? 老谷のじいちゃんが目立つところに置いていった物? 物凄く嫌な予感がするけど、一応話は聞こう。
「これだ。『勝ち抜き制服淫乱トーナメント 一番やらしいのは誰だ』と『エロエロ魔法少女は変身より変チンがお好き』」
アダルトDVDじゃねえか。まったくこんなものを抜き出しておって。ちょっと僕に見せてみろ。どれどれ。うーむ。パッケージからしてやらしい。さすがは老谷のじいちゃんのイチオシ……
「オキムネッ!」
◇◇◇
「黙って見てれば調子に乗ってアダルトDVDのパッケージをしげしげと見ているんじゃありません。絵栗鼠ちゃんもね、山奥から出てきたばかりで分からないんだろうけど、老谷さんの常識をこの町の常識と思わないでね」
「むー。そうなのか。ではどういう映画がいいとか、あたしには分からんぞ。お母上」
「ん~。そうねえ」
母さん、おもむろにスマホを操作。
「行くとしたら駅南のショッピングモールの中のシネマコンプレックスでしょう。今、そこではこういう映画やっているみたいね」
「むー。分からんなー」
まあ、エリスはこの国の知識を老谷のじいちゃんの置き土産で得ているからねえ。趣向は世間一般から見て、相当偏っているわ。
「そう言うオキムネは、この上映作品からなら何を選ぶの?」
えーっとね。この中からなら、やっぱ「チャージオン」……
「はあ、オキムネ。だからそういうオタク趣味は父さんだけでたくさんだって言ったでしょ」
◇◇◇
「二人揃ってこういう状況ではね。まあ初デートだし仕方ないか。じゃあ今回は私が無難なチョイスをしてあげましょう。むー。この中からなら『山脈から吹き下ろす風は冷たいけれど、あたしの恋は前途洋々なのだ』。うん。これにしなさい。高校生同士の現実世界恋愛だよ。二人ともこういうの見て、少し勉強しなさい」
ういー。僕的にはやっぱりSF映画見たいけど、今回はそれで行きますー。
「お母上。その映画を見たら、あたしはオキムネの『金塊』が手に入るのか?」
これにはさすがの母さんも右手のひらで額を押さえる。まさに頭痛が痛い状態。
「絵栗鼠ちゃん。これは高校生の初デートだからね。いずれは私も絵栗鼠ちゃんにお嫁に来てもらって、孫の顔も見たいけど。ここはまずそれは置いといて」
「むー」
不満そうなエリス。もはや「金塊」の解釈がエリスと他の人で違うのは修復不能なのか?
「オキムネッ!」
わ、何ですか? 母さん。
「ぼうっとしてないで、絵栗鼠ちゃんの手を取って、デートに連れ出しなさい。いつまでも出発しなくても仕方ないでしょ」
母さん、エリスの説得を放棄しましたね。だけどこのままだとグダグダだしなあ。緊張して照れくさいけど、僕はエリスに手を差し伸べる。
「オキムネッ!」
わわ、何で今度はエリスから怒られるの?
「そこはこうひざまずいてだな。『皇帝陛下。この私めとダンスを一曲お願いできないでしょうか?』だろうがっ!」
何でここで異世界恋愛の夜会が出てくるんだよ。これから婚約破棄劇でも始まるのか?
母さん、呆れ顔をしながらも一言。
「オキムネ。ここはひざまずいてやんな。絵栗鼠ちゃん。この家はもともと老谷さんご夫婦の家で、台所とお風呂場以外は全部畳敷きの和室なの。だからダンスできるスペースはないの。やるんなら他の場所でね」
「むー」
なんだかなあ。このダンスを他でやれ発言が変なフラグにならなきゃいいけど。




