204 そうです。あたしが地球=ケンタウリ帝国皇帝エリス一世であーるw
ガガガガガガガガ
さすがは一部でその名も高きポルボルギーニのトラクター。町中の駅前にトラクターがやって来るというだけで目立つのに、ポルボルギーニ社製ということで更に目立つ。
そして、とどめは両側面に貼られた「魔法少女ラブラブ愛凛」のイラスト! これで注目するなと言う方が無理だよね。
つーか父さん、今日のBGMは父さんの好きな「バーニングトラクター アンド バーニング俺」と「ラブラブ愛凛」のオープニングテーマじゃないね。何これ?
「うむ。よく訊いた我が息子よ。これこそが『美少女銭形平次』のテーマなのだ。ちなみに作詞作曲はうちの母さん」
え? ひょっとして我が家はオタクのサラブレットの家系なの?
◇◇◇
「せんぱーい」
「ん~何だ? 足利」
「早いとこトラクター出しちゃってくださーい。金曜の晩だし、どんどん人が集まってきちゃってまーす」
「うーん。何だ? エンジン音とBGMで足利が何を言っているのだかさっぱり分からん」
父さーん。エンジン音はともかくBGMはいったん止めて、足利さんの話を聞いてやんなよ。
「むう。仕方がない。母さん入魂の作詞作曲のミュージックを止めるのは断腸の思いだが、他ならぬ後輩の足利の話、止めて聞いてやるとしよう」
そこまで大袈裟な話かなあ。ミュージックは後でいくらでも聞けるでしょう。
◇◇◇
「せ・ん・ぱ・い! は・や・く・ト・ラ・ク・タ・出・し・て・く・だ・さーい! ひ・と・が・あ・つ・ま・っ・て・き・て・まーす!」
「もうそこまで区切らんでも聞こえるわい。見ておれ。226馬力、6100CC、6気筒エンジンの破壊力を見せてやるわ。発進っ! 新田行きまーす」
「き・を・つ・け・て・く・だ・さーい! ト・ラ・ク・タ・は・ス・ピード・お・そ・い・で・す・か・らー」
「ふふふ。甘い。甘いわ。ミスドのドーナツより甘いわ。このトラクターはポルボルギーニのトラクターだぞっ! そりゃっ!」
ガガガガガガガガ
「「「「「うおおおおおお」」」」」
痛車トラクターが動き出すと共に大歓声が上がる。スマホをこっちに向けて撮影している人もたくさん。
「うおおおおー、見ろっ! オキムネッ!」
何だ? エリス。あんまり外へ身を乗り出すと、スマホの撮影に写るぞ。
「何を言うか。国民が皇帝であるこのあたしに手を振ってくれているのだっ! ここで身を乗り出さんでどーするかーっ!」
あー、そう言えば「皇帝」でしたね。まあ、この「皇帝」は暗殺の心配とかいらないしね。乗り出し過ぎて、どこかにぶつけないか気を付けてね。
◇◇◇
「ふははは。見たか。足利っ! これがポルボルギーニのトラクターの実力だっ! 普通のトラクターは最高時速35kmだが、このポルボルギーニのトラクターの最高時速は50kmなのだっ!」
父さん、何だかロボットアニメで新兵器に乗って出てきた敵キャラみたいですよ。「ザクとは違うのだよ」的な。
で、足利さんはと見れば、もう早く帰ってくれないかなあと気持ちがお顔に溢れてらっしゃいます。うちの父がすみません。我が家は痛車トラクターしか車がないわけじゃあないのです。そこを敢えて痛車トラクターで来るところが、うちの父! だって普通の車で来れば、大きさ的に交番の駐車場じゃなくて普通の駅前有料駐車場にとめられますから。
「美少女銭形平次」のテーマをBGMに「美少女銭形平次」のコスプレをした実の父が駆るポルボルギーニの痛車トラクター。
群衆の注目と歓声を浴びながら、痛車トラクターは進む。そして、エリスは……
「ふはははは。皆の者大儀である。そうです。あたしが地球=ケンタウリ帝国皇帝エリス一世であーる。よきかなよきかな」
何かいろいろ違う気がするが、本人ご満悦だし。今はまあこれでいいか。




