205 相手は誰だっ? チャラ男だったら、この俺がシメてやるっ!w
僕の家は郊外の農家だから、家に近づくほど見ている人の数は減るはずなのだけど、あんまり減っている様子がないぞ。
「はっはっは、見たかっ! オキムネッ! これこそ地球=ケンタウリ帝国初代皇帝エリス一世陛下のご威光だっ!」
いや絶対、「美少女銭形平次」のテーマをBGMにしたポルボルギーニの痛車トラクターのご威光だと思うよ。
◇◇◇
痛車トラクターが家の庭に入った途端に、何故かファンファーレ。見れば母さんが玄関の明かりを煌々とつけてお出迎え。僕を迎えるため……じゃないよね。絶対。
痛車トラクターのドアが開くやいなや、エリスに飛びつく母さん。
「おかえりー。絵栗鼠ちゃん。春とはいえ、まだまだ寒いよね。ほらほら早く家に入りましょ。部屋温かくしてあるから」
そのまま母さんに促されて家に向かうエリス。そして一言。
「お母上。あたしは明日、オキムネとデートすることになったのだ」
「んまあっ! そうなのっ? そうなのっ? それは張り切らないとねえ」
何で母さんが張り切るんですか?
「おい。母さん」
ここで父さん一言。
「俺あ、痛車トラクター、車庫に入れてくるわ。寒いだろうから、絵栗鼠ちゃんのために暖房効かせてやってくれ」
「オッケー。ささ行きましょ」
「おい、オキムネ。おまえも車降りろ。車庫行ってくるから」
何かエリスに比べて、僕の扱い酷くない? うちは兄ちゃんと僕の息子二人しかいないから。両親、よく女の子もほしかったとは言っていたが。
◇◇◇
「ぶっ」
家の居間に入れば、しっかりとR-1号がいるし。いつ帰ってきたんだ?
「トラクターヲ護衛スルタメ歩道ヲ走ッタ」
おいおい。父さんの痛車トラクター、最高時速50kmは出るんだぞ。人にぶつかるんじゃないか?
「絶対ブツカラナイ。超高速回避機能標準装備ダゾ。私モR-2号モ」
本当にケンタウリ星のアンドロイドのスペックって分からんわ。
◇◇◇
などと言っているうちに、エリスが母さんに連れられて、お盆に食器を載せてやってきた。
見るとエプロン姿。エリスって基本的に傍若無人なくせに何故か母さんには神妙なところがあるよな。でも何か何も言わずにエプロン姿で給仕していると可愛らしく見えなくもない。
「ちょっとオキムネ」
な、何かな? 母さん。
「若奥様のエプロン姿に見とれるのはいいけど『裸エプロン』とかは許さんよ。そういうのはちゃんと結婚してから……」
誰もそんなこと言ってないじゃん。
◇◇◇
かくて戻ってきた父さんも含め、母さん、エリス、僕、R-1号の五人が囲む食卓は和やかな雰囲気。と言っても話しているのは一に母さん、二に父さん。僕はあんまりしゃべらないし、エリスはもっとしゃべらない。R-1号も静かなもの。
これはこのまま夕食は無事に過ぎるかなと思ったその時、エリスが口を開いた。
「お母上。デートとは何をすればいいのだ?」
「なっ、なっ、なっ、何い―?」
ちゃぶ台をひっくり返すのではないかと勢いで立ち上がったのは質問された母さんではなく、父さん。
「絵栗鼠ちゃん、デートすんのかっ? 相手は誰だっ? チャラ男だったら、この俺がシメてやるっ!」
父さん、そんな「美少女銭形平次」のコスプレのままで物騒なことを。
「イエ。オ父上」
あ、ずっと静かにしていたR-1号が口を開いた。
「オ父上ノオ手ヲ煩ワセルマデモナイ。コノ私ガ電磁投射砲デ息ノ根ヲ止メテミセマショウ」
たまに口を開いたとおもったらそれか? R-1号。こいつの言うことは知らない人間には冗談にしか聞こえないけど、本気だったりするから怖いんだよ。
「そうかそうか。さすがはアールイチゴウさん。絵栗鼠ちゃんの兄貴。まあ一杯」
上機嫌でR-1号に瓶ビールを注ぐ父さん。ほら冗談だとしか思われていない。
「何言ってんの」
呆れ顔の母さん。
「絵栗鼠ちゃんのデートの相手はオキムネだよ」
「何っ!?」
途端に僕に鋭い視線を投げる父さん。更にR-1号。だから何でそうなるの?




