203 デートとかやったことないし。こないだまでごくごく普通のモテないモテたい系の中学生だったんだぞっ!w
「ふーん。これがバイト代とやらか」
わあっ、エリスが封筒の中から出した一万円札を右手でつまんでぴらぴら振っている。
エリスッ、この下総屋のバイトは周りの人が親切にしてくれるからいいけど、本来一万円稼ぐって大変なことって……一万円札で僕の頬をぺたぺたしないで。
「いや、そんなことよりもだ。これで『金塊』よこせ。『金塊』」
どこぞの下品な金持ちか? エリス。いろんな人からまずはゆっくり親しくなってからって言われているだろ。いきなり一万円札で頬を叩くのは「売春」と言ってね、法律違反なの。これはマジでおまわりさんが来ます。逮捕されます。
「むー。ならばデートとかすればいいのか? オキムネッ! 犬咲店長はオキムネはデートすると言ったのだ。約束は守るのだ」
くっ、覚えていたか。しかし、エリスッ! デートイコール「金塊」というわけではないのだぞ。みなさんゆっくり親しくなってからと言ったろうが。
「むむむ。ところでオキムネ」
何だ?
「デートって何だ? そもそも何をするのだ?」
そこからかいっ! つーか僕も知らんわっ! デートとかやったことないし。こないだまでごくごく普通のモテないモテたい系の中学生だったんだぞっ!
◇◇◇
ちゃっちゃらちゃちゃ ちゃっちゃらちゃちゃ
なっ、何だ? このBGMは。何かまた嫌な予感がするぞ。
カシャーン
ぬおっ、僕の足元に何か投げられたぞ。何かと見れば五円玉。まっ、まさかっ?
「「「「「うおーっ!」」」」」
上がった歓声の先には、髪は茶髪のポニーテール。右手には魔法のステッキならぬ十手。服は江戸の町人服だけど全身ピンク。下履きはピンクのスカート。大急ぎで来たせいか、すね毛は剃りきっていないが、みなさん、それはツッコまないでやって。
実の息子の僕でさえ初めて見る「美少女銭形平次コスプレ」。扮しているのはもちろん僕の父さんだ。
「おー、やったぜ。新田さん」
「生きてもう一度新田さんの『美少女銭形平次』を見られるとは思わなかった」
涙を流して喜び、父さんに抱き着く老谷のじいちゃんと三太さん。何なんでしょう。このオタクたちの団結は。
「新田さん。あれやって。あれ」
「あれね。他ならぬ老谷さんと三太さんの頼みならやっちゃうよ」
え? 何が始めるの?
◇◇◇
「「平次ちゃーん。大変! 大変! 大変!」」
「何よー。老子に三子。まーた、大変のタイムサービスでもあるっての?」
「「そんな間抜けな話じゃないよー。もし絵栗鼠ちゃんがまた別のコスプレをしてたとしたらどーするのー? 平次ちゃーん」」
ここで父さんと老谷のじいちゃんと三太さんの三人、観客の方に向かってサムズアップ。
うおおおおお パチパチパチ
沸き上がる歓声と拍手。本当にノリいいですね、下総屋関連の人たちって。
◇◇◇
「先輩。その辺にしといてくださいよー」
泣きそうな顔で訴えかけてくるのは……あ、駅前交番の巡査部長の足利さん。
「また毎回毎回、先輩の痛車トラクターを交番の駐車場にとめられるといつか怒られますよー。ただでさえ先輩の痛車トラクターは目立つんだから」
えーっ、父さん、またあの痛車トラクターでこっちに来たの?
「まあまあ、新田さん。あんまり交番の足利さん、困らせるのもなんだから、ここは新田君と絵栗鼠ちゃん、連れて帰ってもらえますか? 下総屋も夜十時以降に高校生働かせるとまずいんですよ」
え? ということはひょっとして犬咲店長が父さんを呼んだんですか?
「そうそう。夜十時以降に高校生働いちゃいけないから、犬咲店長が新田さんに迎えにきてもらったの。まさか痛車トラクターで来るとは思わなかったけど」
うげ、じゃあ僕らもあの痛車トラクターに乗って家に帰るってコト?




