表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/184

第90話 心が動いた日

騎士団本部――練兵場。


第四騎士団が日々鍛錬を積む広い稽古場で、

レンセリオンはルークと剣を交えていた。


銀の刃が幾度も閃く。

その軌跡は、まるで光そのもののように鋭く、美しい。


「今日の殿下、キレッキレですねぇ。絶好調じゃないですか!」


カイルが口笛を鳴らす。


やがて二人は剣を収め、休息に入った。

レンセリオンは額の汗を拭い、水を口に含む。


夕刻の光が、練兵場を囲む高い塀の上から差し込み、

その一筋がレンセリオンの横顔を淡く照らした。


「……“竜の息吹”が殿下を照らしておられますね。

ルクヴェルの誇りと希望そのもの、って感じです」


カイルの言葉に、レンセリオンは静かに視線を向ける。


「次はお前だ。準備しておけ」


「……ですよねぇ」


カイルの肩が落ち、ルークは思わず吹き出しかけた。


「殿下、そろそろ休まれては。四戦続けておりますよ」


ルークの進言に、レンセリオンがわずかに目を瞬く。


「もう……四戦も?」


「はい」


二人が揃って頷くと、レンセリオンは素直に腰を下ろした。


するとカイルが、にやりと笑いながら近づく。


「セリナ殿から聞きましたよ」


レンセリオンは思わず水をこぼしかけて、軽く咳き込んだ。


「ということは……お会いできたんですね。セレフィアの姫様に」


レンセリオンは短く頷いた。


「噂じゃ、セレフィアの姫は“花のように美しい”とか」


ルークがぽつりと言う。


――花、では足りない。


噴水の光を受けて微笑む少女の姿が、静かに脳裏に浮かぶ。


(外見だけではない。

内側から、光が溢れているような――)


沈黙したレンセリオンに、二人の視線が向けられる。


「……殿下?」


「まさか……惚れました?」


カイルがにやりと笑った。


レンセリオンはわずかに肩を揺らし、それでも目を逸らさずに答えた。


「俺は……成すべきを成さねばならない。だが――

そこに、俺の心が動いたことは……少し、安心した」


その一言に、ルークとカイルの表情がやわらぐ。


「それを聞いて、むしろ安心しましたよ」


「殿下、頑張ってください!」


励まされ、レンセリオンは戸惑いつつも微笑む。


――ほんの少し。


胸の奥で固く絡みついていた鎖が、音もなく緩んだ気がした。


彼はまだ知らない。


あの噴水の光が、

この先の運命をどれほど変えることになるのかを――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ