表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/119

第53話 光の街で、揺れた心

翌朝、朝食の時間。


リリナは、どうしても気になっていた。


時折――

エリオンへ微笑みを向けるアルメアの姿が。


隣に座るエリオンをちらりと見る。


……けれど当の本人は、まったく気づいていない様子だった。


今朝も、朝食の少し前になるとエリオンが迎えに来てくれた。

昨夜の出来事に触れることもなく、

ふたりの間にはいつも通りの穏やかな空気が流れている。


小さく、ため息がこぼれた。


(……よく分からない)


どうして、こんなに気になってしまうのだろう。


そのとき。


ふと、エリオンがこちらを振り向いた。


目が合う。


リリナは動揺し、慌てて微笑み返す。


すると――

エリオンも、やわらかく微笑み返してくれた。


その直後。


鋭い視線を感じて顔を上げると、

無表情のアルメアと目が合い、思わず視線を伏せた。


……気まずい。


そのとき。


紙ナプキンをテーブルに置いたユリウスが、給仕を呼んでいた。


何かを伝え終え、給仕が下がると――

ユリウスはこっそりリリナへ「OK」と指で合図を送ってくる。


「?」


首を傾げると、

今度は入り口の扉を小さく指し示した。


――どうやら、完全にジェスチャーで会話するつもりらしい。


その様子に気づいたアルメアが、

負けじと満面の笑みでエリオンへ話しかける。


「昨日の話の続きを、またお待ちしていますね」


その言葉が、はっきりと耳に届く。


席を立とうとしたリリナは、思わずエリオンの方を見てしまった。


エリオンは――

真っ直ぐ、リリナを見ていた。


胸が熱くなる。


慌てて、視線をそらした。



ユリウスはレヴィアンも誘うつもりだったが、

今日は“もしもの議題”の準備で忙しく、同行できないとのことだった。


こうして――


リリナとユリウスは、ふたりでルクヴェルの街へ出かけることになった。


ルクヴェル中央都市――ルク=セリア。


昼の光の中、

ふたりは肩を並べ、ゆっくりと歩き出した。


横目でそっと彼を見る。


淡金色の髪が光を含み、やわらかく揺れている。

白い肌と、中性的な整った輪郭。

風に触れた前髪が、横顔に静かな影を落としていた。


「さっき、食堂で給仕の方に……何を話されていたのですか?」


問いかけると、ユリウスはくすっと笑う。


「昼食の準備はいらない、と伝えておきました」


ふたりで顔を見合わせた。


「食べ歩きで、どこまでお腹が膨れるのでしょうね……?」


ユリウスはお腹の前で両手を丸く描き、

大きく膨らませる仕草をしてみせる。


思わず、吹き出すリリナ。


「そんな姿で帰れませんよ」


そう言うと、

ユリウスは今度は頬をぷくっと膨らませ、

両手でさらに“ぷくっ”と強調してみせた。


「それも……困りますからね?」


くすくすと笑いながら、

リリナはユリウスの肩を軽く押す。


ユリウスも楽しそうに微笑んだ。


その横顔に――小さなえくぼが浮かぶ。


「あ……ユリウス様の光」


リリナは、マルナにしてもらったように、

そっと指先で彼のえくぼのあたりを指した。


ユリウスは一瞬、驚いたように目を見開く。


「私にもあるんです」


そう言って、自分の頬のえくぼを指してみせる。


――けれど、少しだけ場所がずれていた。


ユリウスはその手にそっと重ねるようにして、

正しい位置へと導く。


距離が、近い。


まっすぐな瞳。

やさしい気配。


リリナの胸が、ゆるく跳ねた。


「……お揃いですね」


照れながら笑うと、

ユリウスはふわりと、穏やかに微笑み返した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ