第4話 王の書簡
その頃――
王城の最奥。
黎光の間のさらに奥に、国の重大な決断が下される謁見の間がある。
朝の光が高窓から差し込み、
白金の床に柔らかく反射していた。
セレフィア王、セリウス・エルディア・セレフィアは玉座に静かに腰掛け、
隣には王妃、ユスティーナ・フロリア・セレフィアが控えていた。
王の手には、一通の封書があった。
封蝋には、ルクヴェル王国の紋章――
竜を象った盾の印が刻まれていた。
「……ルクヴェル王より、直筆の親書か」
「ええ。しかも、“黎光の器”である姫に宛てて」
ユスティーナが息を呑む。
王は封を割り、静かに羊皮紙を広げた。
そこには、ルクヴェル王の端正な筆跡でこう記されていた。
『光を継ぐ七つの国の血脈に告ぐ。
我らが後の世を担う若き継承者たちを、
ルクヴェルの地に集め、共に学ばせたい。
理と絆の灯を、今ここに交わし、
次代の光を共に見定めん』
「……“共に学ばせたい”か」
セリウスの眉がわずかに動く。
ユスティーナが静かに問う。
「陛下は、どうお考えに?」
「この親書の表には“理”があるが、裏には“意図”がある。
――ルクヴェルは、“次代の光”を見定めようとしている」
ユスティーナは視線を落とし、
リリナの笑顔を思い出すように、そっと胸に手を当てた。
「あの子に……そんな重荷を背負わせてよいのかしら……」
王はしばし沈黙し、
遠く黎光の大樹の方角へと目をやる。
「……だが、“器”は歩むべき道から、目を逸らせぬ。
ならばせめて、あの子が自らの光で選べるよう、我らが支えねばならぬ」
静寂のあと、セリウスは書簡から視線を外し、
穏やかに言葉を続けた。
「アクエリシア王からも返書が届いている。
“長子を国務に残し、次子エリオンを学舎へ遣わす”とのことだ」
ユスティーナが小さくうなずく。
「……あの国にも、悲しみがありましたね。
亡き王女ティアラのことを思うと、胸が痛みます」
「ゆえにこそ、彼らは“再び水を流す”道を選んだのだろう」
セリウスは静かに微笑む。
「我らもまた、“光を循環させる者”として、それに応えるべきなのかもしれぬ」
――その選択が、
リリナの小さな日常を、
遠い国々の光へとつなげていく。




