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黎光の継承―七つの魂と選ばれた少女―  作者: りこ。
第三章 水鏡の奥、影の真相
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第275話 追いつけぬ影、残された心

リリナが駆け去った水路沿いの道を――

エリオンとレンセリオンは、必死に追っていた。


だが、その背はすでに遠い。


「リリナ!!」


一歩先を走っていたエリオンが叫ぶ。


――その瞬間。


ガクッ。


足が折れたように崩れ、地面へと膝をついた。


「……ッ?!」


横を走り抜けたレンセリオンが、異変に気づき振り返る。


エリオンは片手で額を押さえ、苦しげに俯いていた。


遥か先――

南西の静水の都アク=ネリア。


揺らぐ灯火の中、

リリナの背が、ゆっくりと消えかけている。



レンセリオンは一度だけ、深く息を吐いた。


そして――

追うのをやめた。


無言のままエリオンへ歩み寄り、

その前で立ち止まる。


「……お前、どうした」


低い声。


怒りでも、呆れでもない。

ただ――理解できないという響きだった。


エリオンは唇を震わせ、かすれた声で言う。


「リリナ……追わないと……

また……消えてしまう……」


伸ばされた手が、レンセリオンの足を掴む。


レンセリオンは、それを払わなかった。


ただ、動かずに――見下ろす。



エリオンの体は、すでに限界だった。


(神殿で……力を分けすぎたか……)


あの共鳴。


当然の代償だった。


立ち上がろうとした、その瞬間――


体がぐらりと傾き、

そのまま前へと倒れ込む。


「――エリオン!」


レンセリオンは反射的に抱き起こした。


ぐったりとした身体。


名を呼んでも、返事はない。



(……最悪だ)


胸の奥がざわつく。


リリナは、泣きながら去り――

エリオンは、倒れ。


――さっきまでそこにあった「三人」は、もうどこにもない。



レンセリオンの脳裏を、駆けてきた時間が一気に蘇る。


ルクヴェルで父王へ報告を済ませ、

一度セレフィアへ戻る。


ルークとカイルを送り届けるため、

再びルクヴェルへ向かい――


ようやく、アクエリシアへ辿り着いた。


――ふたりに、会えると思った。


だが。


神殿で見たのは――


寄り添い、

互いの心を澄ませ合う、ふたりの姿。


(分かっていたはずだ……)


それでも――


(見たく、なかった……)


歯を食いしばる。


感情を押し殺すように。



「……ったく……」


小さく呟きながら、

エリオンの体を肩へ担ぎ上げる。


――重い。


「……どうなってるんだ、この筋肉は……」


ずるり、と足を引きずりながらも、

レンセリオンは歩き出した。


一歩。

また一歩。


アクエリシア城へ向かって。


「目覚めたら……覚えておけよ、エリオン」


夜風に溶けるような声。


ふたりの影は――


水の都の灯の中へ、静かに消えていった。


(第三章・完)

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