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黎光の継承―七つの魂と選ばれた少女―  作者: りこ。
第三章 水鏡の奥、影の真相
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第270話 目覚めの口づけ、揺らぐ境界

深い眠りに落ちていたのだと、

目を開けた瞬間に分かった。


ぱち、とまつげが揺れる。


視界に飛び込んできたのは――

エリオンの、閉じられた長い睫毛。


そして――


唇が、重なっていた。



エリオンはリリナの目覚めに気づくと、

そっと唇を離した。


その瞳には覚醒の光が宿り、

呼吸は大きく乱れている。


額には、細かな汗が滲んでいた。


見つめ合う、ふたり。


「エリオン……私……」


意識はまだ、どこかふわふわしている。


ゆっくりと上半身を起こそうとすると、

エリオンがすぐに支えた。


「リリナ……よかった」


安堵のにじむ声だった。



辺りを見渡す。


まだ神殿の中。

月光が白い氷床に、静かに揺れている。


「日付は、まだ変わっていませんよ」


その言葉に、再びエリオンへ視線を戻すと――


彼はまだ上半身裸のまま、荒い呼吸を繰り返していた。


まるで、長い距離を走り抜けた直後のように。


リリナは不安げに見上げる。


「苦しい……んですか?」


問いかけに、エリオンは小さく首を振った。


「……僕たち、いま……

すごいことになっています」


「すごい……?」


意味が分からず首を傾げるリリナに、

エリオンはそっと横髪を耳にかけ、顎を支える。


そして、息を整えながら囁いた。


「まだ……いけるでしょうか?」


「な、なにが――」


言葉を言い終える前に、

唇が重ねられた。



触れた瞬間――


ふたりの間を流れる“何か”が、

一気に体の奥へ流れ込んでくる。


熱。

光。

慈愛。


それは、与えられるものではなく――

自分の内側から吸い上げてしまうような感覚だった。


(……私、何を……?)


驚きと戸惑いに、

リリナは思わず唇を離す。


エリオンの呼吸が、さらに荒くなる。


「大丈夫です……

呼吸は乱れますけど、苦しくはありません」


そう言いながら、

再び唇を求めるように顔を寄せてくる。


リリナは真っ赤になり、顔をそむけた。


「だめっ……!

これ、人がするようなものじゃない……

なにかが……流れてる……!」


震える声。



エリオンは、優しく頭を撫でた。


「怖がらないで」


穏やかな声だった。


「それはアウルの力です。

僕も……セレーネの力に導かれているだけです」


その言葉に、

リリナの胸の強ばりが、ゆっくりほどけていく。



リリナは、エリオンの胸に抱きついた。


「……リリナが回復したのなら、それでいいんです」


静かな声。


「僕は、ただ――

あなたに与えたい気持ちが強いだけです」


顔を上げる。


エリオンは、穏やかに微笑んでいた。


そして、そっと唇を重ねる。



――瞬間。


ふたりは同時に、慌てて離れた。


視線がぶつかり、

次の瞬間、思わず吹き出す。


「……すごい吸引力ですね」

「う、うん……っ」


エリオンは肩で息をしながら、苦笑した。


「ここでは……

僕たちの心を交わすのは、やめておきましょう」


リリナも、こくりと強く頷く。


胸の印が――

まだ、静かに熱を帯びていた。

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