第16話 光の騎士と、影の気配
噴水広場に昼を告げる鐘が響き、
エリオンがそっとリリナへ視線を向けた。
「そろそろ昼食の頃ですね。来賓館に戻りましょうか」
「もう、そんな時間なのですね……。
なんだか、あっという間でした」
同じ気持ちを確かめ合うように、ふたりは目を合わせた。
ふっと笑みがこぼれ、自然と歩き出した。
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来賓館へ向かう石畳の道を進んでいると、
前方から、白銀に金縁の礼装鎧をまとった一団が、ゆっくりと近づいてきた。
騎士たちの足取りは揃っていて、
硬い足音が、石畳に規則正しく響いていた。
兜に飾られた白金の羽が、
白い石畳の反射を受けて、ふわりと揺れた。
その姿を見た人々は自然と道をあけ、
すれ違いざまに小さく会釈をした。
まるで光の帯が、街を歩いているかのようだった。
リリナは息を呑み、その場に立ち止まった。
すれ違う瞬間、
騎士の一人が柔らかな微笑を浮かべ、丁寧に会釈をした。
リリナも慌てて頭を下げ、
振り返って、その背中を見送る。
「綺麗……。歩いているだけなのに、光みたい」
鎧の白銀が風を受けて輝き、
胸の天秤の紋章が、凛とした秩序を象徴するようにきらめいていた。
エリオンが隣でそっと教えてくれた。
「第一騎士団オルディナ。
“秩序を歩く者たち”と呼ばれています」
「……素敵ですね」
リリナは深く息を吸い、
周囲の空気を味わうように見渡した。
「都はすごいですね。圧倒されます。
セレフィアは、もっと……ゆるやかに時が流れていくような場所だから」
エリオンは思わず微笑んだ。
「でも、国土の広さでいえば、セレフィアが七国でいちばんの大国ですよ」
「それは……ほとんど山です」
「その山について、最近はいろいろな国が関心を寄せているようです」
「関心……? 山に?」
「まだ拓かれていない場所には、人を惹きつけるものがあるんです」
「人を惹きつけるもの……」
リリナはくすりと笑った。
「まだ出会ったことのないような動物とか、植物とか……
もう一つ国があったりして」
冗談めかして言ったつもりだった。
だが、エリオンの表情がほんのわずかに揺れた。
水面に生まれる、小さな揺らぎのような変化。
ほんの少しだけ、間があった。
それでもエリオンは、いつものように微笑んだ。
「……そうかもしれませんね」
リリナは小さく首を傾けたが、
エリオンの微笑みは、もう揺れていなかった。
ふたりは再び歩き出した。
光の街の中で、
昼の影が、石畳の上に静かに伸びていた。




