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ちっぱいメイドは玉の輿&寿退社の夢を見れるか!?~伯爵家の下っ端メイドですが ハニトラしてこいと命令されました~  作者: 岩爺


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王国歴1669年10月22日⑫:婿入りするのもアリですよ!

 私は号泣した後、宥めるヒイロと酒精入り果実水で気分を切り替えた。みんながキースとカリーナを祝福する為に杯を上げ、2人もそれに感謝を示す。また2人もシーナルとビビィを祝福し、食事会は和やかな雰囲気となった。


 グララブが呼んだ馬車が到着したのだが、キースとカリーナは宿屋に戻るか迷った。しかしグララブが「あまり酔い過ぎると、この後が大変じゃぞ?」の一言で、顔を赤くしたキースがカリーナの手を引いて部屋を飛び出る。カリーナも頬を赤くして素直に従った。


 残された面々だが、ビビィと早く二人きりになりたいシーナルが帰ろうとするが、ビビィが「食べ物を残したら駄目です」とそれを許さない。その解決策として料理を折詰(おりづめ)にして持ち帰る事となり、この日は早い内にガストロミを後にする事になった。



「さて、少し飲み足りんのぉ…」

「…そうですねぇ、もうちょっと欲しいですねぇ…」

「いや、コマイさん…お酒は程々にした方が良いよ?」


 私達はシーナルとビビィを乗せた馬車を見送ると、夜の街角で一息ついた。それぞれの手にはガストロミの折詰がぶら下がっている。なんせ5人分の折詰なのだ。

 前日に5人で食事した時、グララブがキースとカリーナを含めた7人分を予約した。それに飛び入りでルージェが入った為に、ガストロミが気を利かして料理を増量する。ビビィとヒイロは普通に食事したのだが、急いで帰ったキースとカリーナ、小食の私・グララブ・シーナルではそれほど食べられなかった。そして宿に軽食が用意されているのでビビィ達が持ち帰らなかった為、私達3人の手元には5人分の料理が残される結果となった。


「う~ん…この料理を持ち込んで、他の店で飲むのも悪いしのぉ…」

「それじゃ冒険者ギルドはどうです?あそこなら真夜中まで開いてるし、お酒も提供してますよ?」

「バカ言え!ギルドの安酒では頭が痛くなるわぃ!」

「…料理を残したら勿体ないし、ビビィ先輩に怒られるんですよねぇ…あ」


 その時、私は閃いた。


「どうした、嬢ちゃん?」

「良いお酒があって、タダで飲めて、料理も残らない……ゲッスーナ邸はどうです?あそこならコーモノのお酒のコレクションがありますし、料理を残してもメイドのみんなが喜んで食べますよ?」

「そ、それはどうかなぁ……」


 ヒイロが難色を示したが、グララブは満更でも無さそうに頷いた。


「確かにゲッスーナは儂等と縁を結びたい…無下に断る事はせんだろう…カリーナの身請けの事もあるし根回ししておくのも必要じゃな。嬢ちゃんにしては良い案じゃの!」

「え、えへへ?そうですか?」

「それに噂のナーナ嬢も見てみたいしの♪」

「うわ、まさか裏目に出たかも!?」


 私が自分の発言に後悔していると、グララブは馬車を捕まえてさっさと乗り込んでしまった。私はグララブを引きずり下ろす事も出来ず、素直に馬車に乗り込む。


「グララブさん…ゲッスーナ伯爵は一応私の雇い主なんで…あまり迷惑をかけないようにお願いしますよ?」


 馬車の中で私はグララブの対面に座り、その目を見ながらお願いした。ちなみにヒイロは私の隣にちょこんと座っている。


「ふむ…ところで嬢ちゃん、どんな条件でハニトラを頼まれた?」

「え?何ですか、突然…」

「良いから言うてみぃ」

「えっと…期間中は給金1.1倍、寿退社の折には3か月分の御祝儀…だったかな?」

「ふん、御祝儀は置いといて…嬢ちゃんの給金はいくらだ?」

「…そうですね…一日の日当が8(シル)で、1か月で24(ギル)です」

「それじゃ、ハニトラする10日間でいくらになる?」

「8Sの1割で8(カッパー)で、10日で…8S?………え?」

「そうじゃな、こんだけ頑張って1Gにも届いとらんぞ?今朝の朝食より安いの」

「…え?これだけ乙女が恥を晒して…1Gにも満たないなんてぇ……」


 この3日間で私の金銭感覚が壊れたのか、これまでの頑張りが物凄く安く感じてしまった。その瞬間コーモノへの忠誠心と言うか、我慢してた気持ちが崩壊してしまう。


「あぁ…もう何だか、どうでもよくなってきました…」

「そうじゃろ?だから気兼ねなく暴れても問題あるまい?」

「あ~いや~…う~~~ん……」

「こ、コマイさん、お金は大切だよ?腐ったら駄目だよ?」

「…まだ雇用されてるし、自制しますけど…酔ったら大丈夫かなぁ……ヒイロさんが結婚してくれるなら将来の不安も無くなるんだけどなぁ…」

「嬢ちゃんはヒイロに乗っかる気満々じゃのぅ…」

「乗っかるんじゃなくて”家庭に入る”って言ってください!掃除洗濯はメイドで身に付いてるし、料理はこれから頑張って覚えます!荷馬車も扱えるし、牛の世話も大丈夫!何なら私は実家の酪農を手伝うので、ヒイロさんが婿入りするのもアリですよ!」


 私の冗談にヒイロは顔を赤くしたが、口元を押さえると真剣に考え始めた。


「コマイさんの実家に婿入り………いいかも……」

「え、いや、ヒイロさん?冗談ですよ?金翼騎士爵を拝命するんですよね?偉い貴族になるんだから、そこは嫁取り一択でしょ!?」

「なんじゃ、嬢ちゃんは騎士爵の事をあまり知らんようじゃな?」

「え、何がですか?」


 グララブは私を半眼で見ると、溜息を吐きつつ口を開く。


「騎士爵は1代限りの爵位じゃぞ?名誉職みたいなもので領地も無い。恩給は金翼じゃから確かに凄いが、それもヒイロが死ぬまでじゃ。子供の代は貰えんから嫁を迎えるのは難しいんじゃよ。恩給を元手に商売を始めるか、手土産にしてどっかに婿入りするのが普通じゃな」

「え?え?」


 私はグララブの言葉を聞いて、思わずヒイロを見る。それまで貴族の煌びやかな生活を想像していたのだが、ヒイロと一緒に故郷で酪農するのも楽しそうだと思えた。恩給もあるし玉の輿と言って問題無いだろう。

 グララブは私の妄想に構わず言葉を続ける。


「まぁ、貴族としてはそんな勇者の血が入る事は名誉じゃから、ヒイロの拝命と同時に凄い数の求婚が来るじゃろうな。侯爵級…まぁ子爵より下は無いじゃろうが、貴族に婿入りすると派閥争いとか面倒じゃ。嬢ちゃんの実家に転がり込むのも良かろう」

「……えっと…うちの実家、男爵です……」


 私の言葉に2人が驚く。


「嬢ちゃん、貴族の令嬢じゃったんかい!」

「げ、元気だから平民の出身だと思ってた…」


 2人の言葉に私は憮然としながら答える。


「ふん!酪農しないと生きてけないような田舎の貧乏男爵ですけどね!礼法は教えてもらって無いし、四女だし、舞踏会(デビュタント)とかにも参加した事もないですよ!!」

「…え、絵に描いたような田舎貴族じゃな…まぁ、それだったら派閥争いも関係ないじゃろ…平民出身のヒイロにはちょうど良いかもしれん」

「…俺は故郷に帰れないし…コマイさん、前向きに考えてもいいかな?」

「ちょ、ちょっと!?」


 私は2人の視線を感じ、手を振りながら全力で否定した。


「え、えっと!言い出した私も悪いんですが、嫁取りとか婿入りとかはもっと先の話だと思うんです!!その前にもっと大切な事があるんじゃないでしょうか!!」


 私が意気込んでヒイロを見ると、ヒイロは顔を真っ赤にして視線を逸らした。


「あのですね!男女の結婚には手順と言うか段階があるはずです!そう思いませんか、ヒイロさん!」

「そうじゃの、確かに結婚の前に済まさねばならん事がある!」


 グララブはそう言うと、両手を叩きながら私達を囃し立てた。


「はっつこうごう!そぅれ、はっつこうごう!」

「その前にもっと大切な事があるだろうがぁぁぁ~~~~~~~~ッ!!!」


 私の絶叫が終わった時、馬車が速度を緩め始めた。どうやらゲッスーナ邸に到着したようだ。

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