第3話
「バ、バカンス……ですか」
「ええ。先程リチャードに付けている『影』いわゆる監視役から連絡が入ったから」
「そ、そうですか」
な、何を考えているのだろうか。
まさか自分に監視役が付いていない……なんて思ってもいないだろうし、まさか付いているのが分かっていてワザと見せつけつ様な真似をしたといのであれば相当なおバカさんである。
――まだリチャード様が国王になると決まったワケではないのに。
そう、実はまだリチャード王子が国王になる事は決まっていない。
一応、国王陛下と共に「次期国王候補」として外交には参加しているものの、それはあくまで『候補』としてである。
つまり、まだ「変わる可能性がある」という事なのにも関わらず……だ。
――正直。長期休暇に帰って来て国王陛下と共に仕事をするのは絶好のアピールする機会だと言うのに。
それすらも行わず、あまつさえバカンスとは……。
「フフ」
――あ、いけない。
「あ。も、申し訳……」
あまりにも馬鹿らしい行動に思わず笑い声が出てしまった。
「いいえ、笑ってしまうのも無理ないわ。我が息子ながらどうしてこんな子になってしまったのやら」
王妃様も苦笑いどころか呆れてしまっている様だ。
――でも「どうしてこんな子に……」という事は……。
「あの、もしかして――」
そう尋ねると、王妃様はイリーナの言葉を察し「ええ」と頷く。
「全部聞いているわ。今のあの子が学校でどういう事をしているのか。どういう状況になっているのか……」
「そう……なんですね」
「ええ。だから……ごめんなさい」
「え、そんな! 謝らないでください!」
王妃様の突然の謝罪にイリーナは思わずその場で立ち上がった。
「いいえ。あなたに何も非がない事は分かっているの。それなのにあの子と来たら……」
どうやら王妃様は購買での出来事も全て知っているらしい。
「正直ね。あの子に限らずあの小娘と同じ年の生徒会のメンバー全員のご家族と将来について話を進めているところなの。あの子たちに将来自分たちの後を任せても大丈夫なのかってね」
「……」
「それで、私たちの見解はとても任せられないって事になったの。今回の件もそうだけど、前からその兆候はあったから」
「兆候……ですか?」
「ええ。あの子が周囲の人たちの意見に耳を傾けなくなって、使用人を自分の言う事しか聞かない者にしかしなくなってから……」
「……」
それは初耳だった。
しかし、言われてみれば……確かに幼少の頃からリチャード王子に時には厳しく時には優しく接していた古参の執事と今日この王宮で再会した。
――リチャード様がバカンスに行っているのならなぜここに? って思っていたけど……。
彼がここにいるという事は、つまり今はリチャード王子の側にはいないという事を意味するのだと、この時イリーナはようやく理解した。
「まぁ。あの子がどういうつもりで帰って来なかったかは知らないけど、今回の事で陛下は大変お怒りだから……これは将来に大きく影響するでしょう。でも……」
王妃様は言葉の途中でイリーナを見つめると……。
「あなたには決して悪い様にはしないから。それだけは覚えておいて」
そう言われ、王妃様の笑顔と共にイリーナは「寛大なお言葉。ありがとうございます」という言葉と共に心の底からホッと胸をなで下ろしたのだった。




