第1話
そうして迎えた試験。結果としてイリーナは優秀な成績を残す事が出来たものの。やはり最初の試験の結果が振るわなかった事によりクラスに上がる事はなかった。
――でも、その代わり「科目によっては特別に上位クラスの授業に参加出来る」様になったもの。今度は上位のクラスに入れるはずだわ。
今回の事でイリーナの自信にもつながり実技のレベルは上がり、元々の知識量も相まって実はクラスの中でトップの成績を修めた。
そしてイリーナは知らないが、実は教師の中には特例で上位のクラスに入れる事も検討されるくらいだった。
「お嬢様。長期休暇はどうされますか?」
「そうね」
試験が終わった今。次に来るのは学校行事ではなく少し長めの休み。
この時の生徒の選択肢としては基本的に長期休暇の過ごし方は人それぞれだとは思うが、大体はまず主に二つに分かれる。
それは簡単に言うと「家に帰る」か「帰らない」かの違いだ。
――あんまり帰りたくはないけど……。
しかし、もはや形だけになってしまったとは言えイリーナはリチャード王子の婚約者。つまり「婚約者」としての仕事はしなければならない。
――そうなると……学校から王宮までの道って結構遠いのよね。
そう、物理的な時間で考えると……どうしてもここから王宮までは家から比べると遠い。
行けなくはない距離ではないモノの、やはりずっと馬車に揺られているのは疲れてしまう。
――リチャード様は……帰って来るはずよね?
さすがに第一王子であるはずのリチャード王子が帰って来ないはずはない。
それくらいこの長期休暇は将来の国王としてリチャード王子にとっては大切な機関で、現国王と共に「将来の国王」として外交する事もある。
つまり外に「将来の国王」として顔を売るチャンスなのだ。
――あくまで『候補』なんだけど。でもいくらなんでもこのタイミングで帰って来ないなんておバカな事はしないはずだけど……。
ただ、この時期はバカンスなどにちょうどいい時期でもある。それが少しだけ気がかりではあった。
「……バカンスか」
バカンスどころか最後に一緒にお茶をしたのはいつだろうか。正直この際、自分自身の事はどうでもいい。
ただ、今のリチャード王子の様子を見ていると……どうしてもその心配が出て来てしまう。それくらい今の彼は浮かれ切っている。
――いいえ。生徒会の皆さん……と言うべきかしら。
正直、今の彼らに将来の国を任せられそうにない。
彼ら自身はどう思っているかは知らないが、それが生徒会外の魔法学校に通う生徒たちの意見だった。
「はぁ……」
――ただの私の思い過ごしだといいのだけど。
そう思いつつ、イリーナは仕方なく長期休暇は実家に戻る事にしたのだが……まさかこの時の懸念が現実のものになろうとはこの時。イリーナは全くおもってもいなかった。




