第3話
いつかは話さないといけないかも知れない……そう思っていた。
あの場にキュリオス王子がいたというのもあるが、そもそも「魔法が上手く使えない」という事実をアリアも知った時点でその可能性はあった。
「どうかされましたか?」
「い、いえ。何でもありませんわ」
イリーナはそう言って何て事ない様なリアクションを見せたのだが……。
「……やっぱり。昔の事、引きづっている?」
「……」
キュリオス王子がそう言うと、イリーナは観念した様に「ええ」と頷く。
――やっぱり、話しておいた方が良いわね。そうじゃないとせっかく教えてくれている彼女に申し訳ないもの。
アリアは上手く行かないイリーナに対しちゃんと教えてくれている。
それなのに「魔法を使う事に対して過去の事が過ってしまって上手く使えない」という事を伝えなければ、彼女としては「どうして上手く行かないのだろう?」と不思議に思ってしまうだろう。
「でも、あれはクローズ令嬢のせいじゃなくて、自分の力を過信したステファンが悪いと思うけど」
「それは……そうかも知れませんが」
キュリオス王子はその時の事を思い出しながらイリーナを気遣ったが、当のイリーナは「そもそも自分が魔法を使わなければ……」という気持ちの方が強かった。
そしてアリアは二人の会話に付いて行けず、無言でイリーナたち二人の顔を見比べていると……。
「あ、アリアは知らないよね。実は昔――」
それに気が付いた王子がアリアがどういう事かと説明しようとした。
「――いえ殿下」
しかし、それをイリーナがそれを制した。
「それは私の方から……」
「――そうだね」
キュリオス王子も「やっぱり本人から説明してもらった方が良いか」と判断したらしく素直に頷いた。
「ありがとうございます。それでは、アリア」
「は、はい」
突然名前を呼ばれ、アリアはびっくりしつつも返事をすると、イリーナは真剣な眼差しでアリアを見つめ――。
「今から話すのは私の過去の話なのだけれど……」
イリーナはそこで言って一度区切り、小さく「ふぅ」と息を吐いて下を向く。
「……」
――やっぱり、緊張するわね。
メイドであるフィーユに話した時もそうだったが、この話はそもそも貴族の間でも知る人は少ない。
――この子が何でもペラペラと話す様な子ではないとは思うけど……。
噂話に尾ひれがつく……なんて貴族社会では結構当たり前の話で、しかもゴシップネタは大好きだ。
だからこそ、こういった話をするのには相手を選ばなければならない。
――でも、きっと大丈夫ね。
なぜなら、彼女は基本的にキュリオス王子と一緒に行動しているからである。それだけでも十分信用出来る材料ではある。
――私が話さなくても、殿下が話しそうだし。
しかし、やはり当事者である自分が話さなければならないだろう。そう覚悟を決めたイリーナは顔を上げ……。
「私ね。昔、魔法を暴走させて人にけがをさせてしまった事があったの――」
そして、アリアの知らない……ちょっと昔の話をしたのだった――。




