第1話
「……」
「ふん。図星過ぎて声も出せないか」
――な、何の話? そもそも嫌がらせってどういう事?
なぜかリチャード王子は勝ち誇った様な表情だけど、イリーナには本当に身に覚えがない。
確かにイリーナはソフィリアという庶民の先輩のお菓子を断った。しかし、ただそれだけの事だ。
そもそもソフィリアの行動範囲にイリーナが行く事はほとんどない。
なぜなら、そもそも彼女とイリーナは「一年」という差でこの学校に入学しているからである。
たかが「一年」されど「一年」と言うべきか。
同学年でクラスが違うだけであればまだ嫌がらせをするタイミングもあり、ソフィリアの行動からイリーナが嫌がらせをしてしまう可能性を踏まえて考えると、一応は理解出来る。
しかし「一年」も違えばそもそもクラスがある階が違ってくる。
この学校の授業は移動教室が多い事もあり、わざわざ嫌がらせの為に授業を遅れてまでする必要などイリーナにはないのだ。
――それに……。
イリーナはもはやリチャード王子に対して「自分を好きになってくれるかも」という『期待』すらしていない。
入学して会いに来てくれなかった時点でそんな甘い感情は捨てたのだ。だから、イリーナがソフィリアに「嫉妬」なんてする事はない。
――つまり、誰かが私の名前を語って彼女に嫌がらせをしているって事よね?
その相手として考えられるのは現生徒会のメンバーの婚約者で、なおかつ彼女と同じ学年の先輩と考えるのが妥当だろう。
――現生徒会のメンバーに婚約者がいて私の一つ上の先輩たちはみんな上位クラスだから、正直「誰か」としか言えないのよね。
そして、その人たちは全員貴族だ。
つまり、イリーナが幼少期から周りの同世代の人たちに「悪役令嬢」だと言われている事を知っている。
――都合が良かった……と考えるのが妥当ね。それにしても……。
こんなすぐに考えれば分かる事をなぜ分からないのだろうか。これでは将来が不安になってしまう。
――まぁ。たとえ王が使えなくても他の人たちが有能であれば……。
そこまで考えてイリーナはハッとした。
もしかしたら、この「嫌がらせ」の一件をソフィリアがリチャード王子にイリーナがしたと訴えてろくな調べもせずにそれをただただ鵜吞みにしてしまったのだとしたら……。
「殿下は……本当に私がした……そう思いなのですか」
――それは将来。この国にとって大きな害になるわ。
そう、今回の試験でメンバーになった人はともかく、今の生徒会のメンバーはもれなく今のリチャード王子と同じ状態になっている事を意味する。
それはつまり、将来。この国を担う彼らが彼女の言う事は「絶対」と思い、彼女の意のままに動いてしまう……そんな最悪の未来を予感させたのだった。




