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78話 出奔娘の捜索④

「立派ですねぇ……」


「近くで見るとやはり大きいな……」


 私たちの前に聳える謎の大型建築物。事務所に行く道で発見したものである。

 隊長さんと別れ、私たちはそれを一目見ようと近寄ってみた。

 とはいうものの、さきほどは他の建物があったせいで分かりませんでしたが、まるで何人たりとも侵入を許さない、という頑強な意思表示のように周りを高い柵で囲まれていたため、無意識的に距離を取ったところからの観覧です。

 警備員などは見当たらないのですが、門は閉まっていて、入るのは気が引けてくる。

 というかここまでも重々しいオーラを放つ場所に、リンならともかく私たちのような庶民が入っていいわけがない、とそう思ってしまう。


「これはやっぱり知らないな。何の建物なんだろうな?住居……なわけないか」


「すごいねぇ……。観光名所なのかな?でもそうだったら、これはどんな建物ですよー、みたいな看板とかたってそうだけどねぇ……」


 見渡してみてもガイドやお土産屋さんすら見当たらない。拝金主義に毒されていない施設と考えれば辻褄を合わせられるものの、建築様式あるいはこの建物自体に相当の価値がありそうなので行政局が何かしら手を施すはず。それなのに何もないというのは非常に奇妙です。

 とすると、やはりこの建物はごく最近に作られたと考えるしか……。

 いや、でもそんなことあるでしょうか。最初に見た時は「余程お金を持て余したせっかちさんがいた」ものだと思いましたが、そうだとしても意図が全くの謎です。意味不明です。何の必要があったんでしょうか。

 ……まあリン然り、金持ちの思想を理解することは庶民には少し難しいですよね。それにお金の使い方なんてその人の自由ですし、私たちの関知するところではありませんね。

 しかし気になってしまうものは気になります。何か引っかかる……というか妙に興味が向かってしまう。

 なぜでしょう。

 だけども、


「……入るのはやめときましょうか」


 提案に3人は首肯し、それからは2日目となるリンの捜索が開始された。

 私と同じく3人も入ることには躊躇があったらしく、言い出したことに安堵しているような表情を見せる。

 もしこの場にリンがいたなら、例のごとくもう少し無茶をしていたのでしょうが、生憎居合わせていないので、久しぶりに私のストッパー的役割が果たされることとなった。

 そう、毎度毎度リンの言葉にシュウとテンユちゃんは面白がって乗っかってしまい、私は手を焼いてしまっていったわけですからね。私たちが巻き込まれてきた事件の数々はほとんどリンが端を発したものなのです。いないとなんて平和なんでしょうか。なんて……。

 望むべき状況のはずなのにどこか私は物足りなさを感じてしまっている。口から出る言葉を相反して刺激を求めている自分が心の奥底にいるのが分かった。

 ……私もよほどリンに毒されてしまっているようですね。



 そうして結局、今日もピンクの髪の毛1本も見つけることはできず、空が暗くなってきた頃、私たちは宿へと舞い戻ることとなった。

 今回の捜索は昨日とは違い、私の心が戻ってきていたということもあり、比較的気楽に、なんなら街の散策をするように楽しんでしまっていた。オシャレで素敵なカフェを見つけました。

 リンがこんな状況を知ったら、「なんでもっと必死になってボクを探さないの!」と怒るかもしれない。

 ……いや、まだ一昨日の夜の怒りが収まってなくて上乗せされる形になるかもしれない。

 謝りたい。謝る機会さえくれれば……って必死にリンを探してない私が言っても、って感じですよね。

 夜に用事があるというハランさんとは宿に入る前に街角で別れて、私たち3人。一応、今日も2つ部屋があるものの、テンユちゃんの計らいにより、1つのベッド川の字で寝ることとなった。


「3人で寝るとあったかいねー!」


「ああ、そうだな」


 テンユちゃんを挟んで私とシュウ。会話も物質的距離もテンユちゃんが緩衝材になってくれているようだった。


「リンおねえちゃんみつかんないねぇ。はやく会いたいなぁ」


「きっと見つかるさ。テンユが心配することなどない」


「おなかすいてなければいいけど……」


 こんな小さい子にも心配されているんですよ、リン。

 私が言うのもおかしいですが、意地張ってないで早く戻ってきてください……。


「でもおねえちゃん!」


「は、はいっ!」


 急にテンユちゃんが寝返りをしてこちらに向き変えった。


「戻ってきたらおねえちゃんもちゃんとごめんなさい言うんだよ?」


「も、もちろんです」


「それからそれからこうやって……」


 テンユちゃんは身体を寄せてきて、その小さな腕で私の腹部を囲い込んだ。


「ぎゅーってして仲直りするの!分かった?」


 あったかい……。

 そうだ、思い出した。私もリンにこうされたこと、とても嬉しかったんだ。

 リンは私に人の温かさというのを教えてくれた。


「はい……ありがとうございます」


 私は感謝の意を込めて両手でテンユちゃんを抱き返す。思い出してみると、今までリンを抱き返したことはありませんでした。しかし今度会った時には……。


「明日になったらみつかるといいなぁ」


「そうですね」

  

 私は自然に、そしてゆっくりとテンユちゃんを引き離し、頭を撫でつつ、


「おやすみなさい。今日はゆっくり休んでまた明日に備えましょう」


「うん!おやすみ!」


 シュウもその言葉を聞いて、頷くように目を瞑る。今日は天井を向いて寝るようです。

 私も明日になったら、ひょんとリンが現れてくれることを願って眠りにつく。

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