表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/14

【幕間】ある日の雑談

 事務所の古いソファに座って、僕はふと思い立って聞いた。


「博士って、どうしてマッドサイエンティスト扱いされてるんですか?」

 香織博士は、一瞬だけ口元を引き締め、それから苦笑した。

「まあ、簡単に言えば“浮いてた”んだろうな。有能すぎて疎まれたとか、派閥に忖度しなかったとか、いろいろさ。 ……それに、仏教の世界観に興味を示したら、“宗教かぶれ”のレッテルも貼られた」


「仏教? 科学者なのに?」

「“なのに”じゃない。“だからこそ”だ。仏教は、世界の成り立ちや空間・意識に対して、量子論以上に鋭い視点を持ってる。でも、学会は“宗教かぶれ”と決めつけた。それだけさ」


「え、それだけで……?」

「科学の世界は、見かけよりずっと閉鎖的だよ。だが、悔やんではいない。いまはしがらみもなく、好きな研究ができる。……それに――」


 博士は、僕の顔をじっと見てから、少しイタズラっぽく言った。

「それに、少年という、面白い素材とも出会えたしな」


「えっ」

「……おや? なに赤くなってる?」

 にやりと笑ったあと、博士はふと真面目な表情に変わった。


「現代科学の常識にとらわれず、“なぜ?”と素直に問えるのは、頭の柔らかい若者の特権さ。科学の素養があれば、なおさらのことだよ」

 照れくさくてうつむく僕を見て、博士は少し目を細めた。


----------------


【補足資料】仏教の無限と宇宙観:主なポイント


1. 三千大千世界さんぜんだいせんせかい

 仏教における「宇宙モデル」のようなものです。


一小世界いっしょうせかい

 1つの世界に、須弥山しゅみせんを中心とする四大洲・天界・地獄が含まれる。


一中千世界いっちゅうせんせかい

 小世界が 1,000個 集まったもの。


一大千世界いちだいせんせかい

 中千世界が 1,000個 → 合計 1,000×1,000×1,000 = 10億の世界。


 つまり、仏教では「無数の宇宙(世界)」があり、それぞれに仏が存在すると考えます。

 これは現代の「マルチバース」や「パラレルワールド」に通じる発想です。



2. 無量・無辺むりょう・むへんという概念

 仏教では、数えきれないほどのものを「無量」や「無辺」と表現します。


無量寿:阿弥陀仏の寿命は数えられないほど長い


無量光:阿弥陀仏の光は無限に届く


 これらは時間的にも空間的にも「無限」を意味しており、「光」「寿命」「功徳」など様々な性質が無限に広がるとされます。



3. くうと無限性

「空」は物質や現象に実体がなく、縁起えんぎによって一時的に現れているだけだとする概念です。


 空は「無」ではなく「固定された実体がない」という意味。

 空の理解は、世界が変化し続け、限定されない=無限の可能性があるということを含意します。



4. 禅における「無限小」的な感覚

 禅では「一瞬の中にすべてがある」「一滴に宇宙を観る」というような表現が多くあります。

 たとえば:

「花開けば世界あり、一念にして仏界を得る」

 これは、一つの小さな出来事(無限小)が全宇宙(無限大)と通じているという感覚です。「無限大=無限小」の発想とよく似ています。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ