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<閑話>結城綾乃と瀬上初音と居酒屋2

「今回はお兄ちゃんから色々聞いてたんですよ、配信中の話」

居酒屋の個室で初音ちゃんが話し始める。


「でも乱入者は想定してない! 」

カンッと音を立てて空になったコップが置かれる。

「っていうかどう受け止めたらいいの、

 いつもスパチャをくれてたるなさんがAIって」

一気にまくし立てた後にさつま揚げをほおばっている。

もごもごしてて可愛らしい。

「面白い顔して固まってましたもんね」

私もきびなごの刺身をつまみながらいう。

「それですよ~

 アーカイブみたらすっごい変顔してたじゃないですか」

初音ちゃんがビールをもう一度瓶から注ぎながらいう。

「大丈夫ですよ。

 来場者いっぱいいましたしるなさんからスパチャもらった配信者もいっぱいいます。

 みんな共感してくれます」

言った後に私もビールを口にする。


「共感してもらえても変顔は消えないんですよ」

初音ちゃんが頬を膨らます。

そしてそのままにやける。

「それにしてもしゃむちゃんの髪の毛やわらかかったなぁ」

「そう、それですよ、それ。知ってたんですか? 」

聞いてみる、勢い込んでしまった。

「いえ~それは知らなかったです」

初音ちゃんはにやけたままだ。


「ですよね、人型になった時に目を剥いて固まってましたし」

「これは変顔を晒してしまったけどいいんですよ。

 しゃむちゃんもお兄ちゃんも髪の毛やわらかいんで幸せです」


顔を起こしてイカの刺身を箸で挟みながら初音ちゃんがいう。

「それにしてもしゃむちゃん、忠義の猫ですね」


それからの初音ちゃんの話は私がしゃむと電話して聞いたものと同じだった。

幽霊になっておじいちゃんの家の周りを漂っていた私を見て

しゃむは慌ててダンジョンに入るのを見かけた秋人さんをおいかけたらしい。

神様なら人一人くらいは頼めば生き返してくれるかもしれないと考えたそうだ。

スライム相手に検証をしながらうろついてくれていた秋人さんに感謝だ。

でもどういう考えで猫がついてくることを許したんだろう。


初音ちゃんが嬉しそうに言う。

「しゃむちゃんもお兄ちゃんも確証ないのに頑張りすぎですよね。

 お兄ちゃんも私を生き返そうと思った時

 自分が世界で1番最初に行けるとは考えてなかったらしいです。

 世界にはすごい人がいっぱいいるし軍隊もあるから。

 ただ、潜り続けているうちに

 このダンジョンを作った相手が最下層に来て欲しいなら

 道のりが長ければ長いほどきつければきついほど自分の価値を証明できる。

 その上で潜り抜けて得た祝福の結果であるドロップ品を全部返せば

 私を生き返してくれる交渉が成功する確率が上がるんじゃないかって思ってたそうですよ」


私も返事をする。

「でもダンジョンの女神さまに怒られたらしいですね。

 力が違いすぎると交渉は成立しないとかよく分からない神に願い事をするな危ないだろとか

 生き返してほしい相手をネタにこき使われたらどうするって。

 私たちの死因にダンジョンが関係してるんでどんな性格の方が作ったんだろうと

 思っていたんですが言動に善性を感じて複雑な気分になりますね。」


初音ちゃんが笑顔で続ける

「生き返してもらえたお陰でこうしていられるんだし

 いい家族といい女神さまにあらためて乾杯しましょー」


「「乾杯~!」」

今夜のお酒は特に美味しい。

楽しんでいただけると嬉しいです。

ここで一区切りになります。

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