クリスマスSS Ⅰ 『聖夜の魔法』
久我彼方×水無瀬悠佳の場合
大学に入り、初めての冬を迎えた。
久我彼方は、一時期、親友であった水無瀬悠佳への想いを失いながらも、
晴れて恋人となり、今では大学内では知らないものはいない『カップル』として有名である。
12月25日。
西洋キリスト教圏では、イエス・キリストの生誕日を祝う日。家族と過ごすのが通例だ。
だが生憎、この二人は家族との仲があまりよろしくないので、必然的に、恋人と過ごすという
極めて日本的な過ごし方になってしまう。
「彼方、寒いからストーブを点けよう」
もこもこの毛布に身を包むも、肩をプルプル震わせ、悠佳はストーブのスイッチを点ける。だが、
「……あれ? 点かない」
いくらスイッチを押しても、ストーブには火が点かない。
そこで、悠佳は別荘の持ち主である松野詩史に電話をかけてみることに。
「詩史さん? リビングのストーブが点かないんだけど」
2コール鳴り、松野が出る。
『悠佳か。ストーブが点かないって? 灯油はあると思うんだけど……』
「そうなんだ……。って、そうだね。灯油はあるよ。……って」
彼方!? と彼の方を見る。すると、途端に部屋が温みを帯びていく。
「ああ、今ストーブにちょちょいっと、加熱魔法をかけたら、こうなった」
『きょとん』とした擬態語が、まさにお似合いな彼方に、悠佳は驚き混じりのため息が出てしまう。
「もう、彼方ってば……」
『ああ、彼方が直したのか。それなら、大丈夫だな』
納得したのか、けろりとした口調で、松野は電話を切った。
「まったく……。彼方には敵わないな」
「ははっ、そりゃそうだろ?」
「昔から、彼方には驚かされてばかりだ」
「ハルが好きだから、もっと驚かせてやりたいんだよ」
悪戯っぽくウィンクし、彼方は悠佳の頬に可愛らしくキスを捧げた。案の定、顔を熟れた林檎の様に赤らめる。
「悠佳っ! もう……」
「本当に、ハルは可愛いよね。もっともっと驚かせてやりたくなる」
好きだ……。
今度は、頬を柔らかく包み込み、くちづけを交わす二人。
聖なる夜に、彼方のかけた魔法は、心も体も甘く火照らせたのであった。
おわり




