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 あの二人は仲良しなのに、何故だかいつも音楽の話はしていなかった。大抵は化学の話をしている。それとも哲学? とにかくスケールの大きな話をしていた。私が入り込む余地はない。

 二人がバンドを組んだっていう噂は信じられなかった。音楽は簡単じゃない。そう思っている。結婚と同じ。

 とは言っても当然そんな経験はない。恋人すらいないけれど気にはしていない。音楽があればそれでいい。男の子とイチャイチャするよりも、音楽とイチャイチャしていたい。

 二人のライヴを見るつもりなんてなかった。音尾君に誘われてはいたけれど、行く気にはなれないでいた。

 私が足を運んだ理由は一つ。音尾君でさえ知らない事実だ。私はそこでバイトをしている。忙しい時の臨時ではあるけれど、お酒やおつまみを用意している。この日はそれ程忙しくはなかったのに呼ばれてしまった。スタッフの一人が休んだから。仕方なしに行ったに過ぎない。二人の演奏だって遠くからしか見ていない。二人と外で会ったのも、休憩をしていただけ。会うつもりなんてなく、驚いたのは私の方が上だと思う。

 速井君が私を避けるようになったのは哀しかった。ライヴ後の感想を求められる筈だと勝手に決め込んでいた私は、お世辞抜きの感想を色々考えていた。けれど、速井君は私に近づこうとしない。私との距離を常に開けようとしているのがその態度で分かる。全くの無視ではないところが、哀しみを深くする。

 音尾君は相変わらずだったけれど、私が感想を言う隙は与えてくれなかった。男の癖に、批評を恐れる臆病者だ。

 正直な感想を言うと、二人は最高に最低だった。たった二人のパフォーマンスであれだけ観客を沸かせるのは凄い。速井君はストリート出身だから当然だ。下手くそな変装をして駅裏で歌っている姿を見ている。彼ならあのくらいは当然だ。背後に音尾君を従えているのなら尚更だと思う。私がいればもっと良くなる。

 二人の音は最高だけれど、二人きりの音で満足をしているとするなら最低だと思った。そこに足りていないものは明らかだ。

 こんな想いを抱いたのは初めて。

 私が加われば、きっともっと良くなる。それなのに、二人は無視をする。どうしてよ! 私は悪い事なんてしていない!

 事態はいつだって急速に変化する。

 二人はもう以前とは違う。教室でも普通に音楽の話をしている。そこにはいくつかのきっかけがあった。第一はやっぱり、クラスメートの反応だと思われる。二人のライヴを実際に見た誰かはいなかった。何処かの誰かが投稿した映像を見た誰かが多くいた。それもその筈。二人の映像を、学生の間では有名なテレビの人間が拡散させた。直接は見ていない。小さなあの会場に有名人が現れればその時点でパニックだ。観客の一人が映像を勝手に撮影して投稿した。有名人の目に留まったのは偶然? そんな事はない。いいモノを表現していれば、いつかは見つけて貰える。それが早かっただけ。二人は運を兼ね備えている。

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