Selection meeting
パァ―ン、パパァーン
『みなさんこんにちは! 4年に1度行われる祭典、ハンターズ・ロアに出場するべく、本日、日本代表を決める最終選考会が行われます。もう既に何名かは決まっておりますが、今大会では3名が決まる予定です。果たして、この選考会でいったい誰が選ばれるのでしょうか? 本日実況をさせていただきます多岐 漣と解説はSランクハンターであり、既に日本代表として出場を決めている『雷帝』・聶 玄吾さんでお送りいたします。聶さん、本日はどうぞよろしくお願いします』
『よろしくお願いします』
『今日とうとう――』
「はぁ……来ちまった……俺の人生で、こんなデカい大会に出られるとは思ってもみなかった……」
俺は項垂れ、不安と戦っていた。
「シャキッとしなさい。もう勝負は始まってるのよ」
「はい」
俺は氷歌に言われ、背筋を正す。
「私はここまで……あとは自分自身で頑張りなさい。そして――」
「分かってるよ。結果を残し、日本代表になって、みんなを納得させてみせるよ」
「分かってるならいいわ。それじゃ私はあそこで見させてもらうから」
そう言うと、氷歌が指さす方を見ると、個室がある場所を指指していた。
「あぁ、わかったよ。……氷歌」
「なに?」
「今日までありがとな」
「⁈」
俺が素直に礼を言うと、氷歌は眉を上げ何も言わない。なぜか顔は赤い。
「な、なんだよ⁈ 何か言えよ」
「いえ、ただ……なんでもないわ。まぁ、頑張りなさい」
「お、おい⁈」
そう言って氷歌は俺に背を向け歩いて行ってしまった。
「な、なんだよ……人がせっかく感謝してんのによぉ……まぁいいや。それよりも――」
周囲は俺を見ている。
気まずい……きっと氷歌と一緒にいたからであろう。
俺は壁を背に持たれながら開始まで待つことにした。
あれから3ヶ月が過ぎた。
氷歌に見つかってすぐに両親と叶音姉に会った。
怒られることを予想していたのだが、怒られず、みんな泣いて俺を出迎えてくれた。
俺も泣いた。
その後、俺はもう一度ハンターとしてやっていきたい事を伝えた。
そこで、氷歌が俺に変わり、みんなに説明をしてくれた。
最初、その話をした瞬間イヤな空気が漂ったが、終わる頃には、みんな頑張れと背中を押してくれた。
みんなに背中を押してもらった俺は選考会に選ばれるため、氷歌にみっちりしごいてもらった。
長く、険しい3ヶ月だった……
「長く、濃厚な3ヶ月だった……けど、おかげでここまでこれた」
俺は今回の選考会、氷歌の推薦枠で入れてもらった。
氷歌が誰かを推薦するような事は稀らしく、すんなりと話が通ったらしい。
氷歌はそう言っていたが、絶対に荒れたにちがいない……
だが、氷歌の気持ちはすごくありがたい。
今回の大会で、無理をした事は容易に考えられる。
その思いにも応えないといけないと思うのと、結果を残し、ハンターズ・ロアに出場し、みんなに認めてもらうんだ。
「おい、お前か? 雪風ハンターに推薦で入れてもらった馬鹿野郎は?」
「うん?」
目を開けると、見るからにいじめっ子でしたと言わんばかりの男が俺に話しかけてきた。
その男の後ろには10人ほど控えており、俺をニヤニヤとした顔で見ている。
ふむ……これはあれか? 俺は今絡まれているんだよな?
こちらに帰ってきて久方ぶりの絡みになる。
昔はビクついていたが、不思議とそんな気がしない。
まぁ、氷歌にしごかれたからであろうなと思っていると、急に胸ぐらを掴まれる。
「おいっ! 話しかけてんだろうが! 無視してんじゃねぇよ腰巾着が!」
「あ、あぁ、すいませんね。 怖かったからつい固まってしまって」
「ふんっ! やっぱりな。ビビッて動けなかったと思ったぜ。おい、お前クラスはいくつだ?」
「あ、俺ですか? Fクラスです」
「だーはっはっは! 聞いたか? こいつFクラスだってよ!」
俺がFクラスだと言うと、こいつの取り巻きも腹を抱えて笑い出す。
すると、胸ぐらを掴んでいた男が力を入れ、俺を壁に押し付ける。
「お前みたいな奴がこんなとこにいたら、俺達まで下に見られるだろうが⁈ おとなしく帰ったら痛い目に遭わずに済むからよぉ……ここから消・え・ろ!」
いつからだろうか? こういった輩に対して、いつもビクついていたのに、今は自然体の俺でいられている。
あ、そうだ! 覚醒してからか? 俺がビクつく様になったのって。
ガシッ
「おい、てめぇ……死にてぇのか?」
俺の胸ぐらを掴んでいる方の手を掴み返すと、男はたじろぎ始める。
「悪いな。推薦で入った事で、多少ズルをした事を言い訳するつもりはない。けど、俺にも譲れないもんがあるんだわ」
俺はそう言うと、掴んでいる手に力を入れる。
「いっ⁈ お、おいっ! 離せ! 離せって――」
男は俺の胸ぐらを掴んでいた手を離す。
俺も掴んでいた手を離してやる。
「てめぇ……調子こきやがって……ここに残ったことを後悔させてやるよ! 行くぞ」
男がそう言うと男とその取り巻きは消えていった。
「ふぅ……少しは度胸が付いたみたいだな」
こういった大会に来たらああゆう類の奴らは来るだろうと予想はしていた。
まぁ氷歌の推薦で出ているから尚更だけどな。
ここに来る前は嫌だなぁと思っていたが、今はそんな気も現れない。
氷歌にしごかれた事で気持ちが少しだけ強くなったんだなぁと感じた。
「うん?」
視線を感じ俺が上を見ていると、最上階の部屋で俺を見ている氷歌がいた。
俺と目が合うと、氷歌は俺に向けサムズアップをしていた。
俺は周囲を確認し、誰も見ていない事を確認し、サムズアップをし返した。
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