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第一話  Death and awakening

家が燃えない光景を、見ない日は無かった。

 死体やその周囲に広がる血を、見ない日は無かった。

 飛んでくる銃弾を、見ない日は無かった。

 それが無い世界を思い浮かべられるのは、母さんが本を読んでくれる時だけだった。

 

 その母さんも、戦争で死んだ。

 俺の名はペテロ。二十七歳、妻子持ち。

 今俺は、銃を抱えて戦場を駆けている。自分と共に戦う仲間五十人を含め、約二千人が住まう国の為、そして妻と娘の為に。

 だが戦況は、お世辞にも良いとは言えなかった。

 自国の軍は、僅か二千の人間から戦う覚悟のある者が五十人。ただ攻められているのは自分達の方で、俺達五十人がこうして敵国の長を狙い戦っている間にも、自分の国の土地は荒らされ、沢山の人間が殺されまいと抗っていることだろう。

 対して敵国の軍は自国の民の総数と同じ二千人弱。どちらが不利かなど、わざわざ言うまでも無い。

 

「ペテロ」

 俺を呼ぶ声。その声は親友のリョウヤのものだ。

 俺とリョウヤは突撃部隊の中でも後方で走っている。

 前方には、仲間達の背中が見える。

 駆けながら、親友の方を向く。

「なんだ? リョウヤ」

「今日も無事に帰ろうな!!」

 この声を聞くと、死ぬかも知れないと怯えている気持ちが薄れてくる。

「お前こそ、死ぬなよ」

「あたぼうよ! 童貞のまま死んでたまるかよ!」

 それだけ言ってから、リョウヤは前を見る。

 俺も前を見て、更に早く駆け始めた。

 同時に、俺達の足が速くなるのをを待っていたかのように、敵の銃弾が俺達目掛けて飛んでくる。

 ――くそッ、銃弾か! この状況じゃ応戦出来ねえ!

 目の前で銃弾を喰らった仲間達が、血を流して倒れていく。

 俺達から見てすぐ前の兵が倒れたとき、その前で駆けている筈の兵が血を流し俯せになっているのも見えた。

 ――まさか、全滅!?

 銃弾を躱しながら、仲間の屍を数えていく。

 四十近い数の死体が見えた。多分生き残っているのは、俺達だけということになる。

 敵兵の姿を確認してから、俺達は一旦立ち止まった。

「既にお前達二人しか残っていないようだな。今すぐ武器を捨て、投降せよ!!」

 投降などするものか。投降すれば、死よりも辛い現実が待っている。

 一か八か。この敵兵の放つ銃弾の嵐に耐えることが出来れば、或いは。

「いくぞ、リョウヤ!!」

「任せろ!!」

 

「「うおおおおおおおおおお!!」」

 

 敵は発砲を開始する。敵の使用している武器はアメリカで開発されたガトリングガン。

 この時点で、俺達が蜂の巣にされることはほぼ確定だ。

 だけど、このまま何もしないわけにはいかない!

 俺も駆けながら、ショットガンのトリガーを引く。

「ぐあッ!」

 銃弾が敵兵の脳を貫通したらしく、兵が叫ぶ。

 そうしている間に、俺の右脛を弾丸が貫いた。

「ぐッ!」

「ペテロ!!」

 リョウヤの叫び声。叫び終わると同時に、リョウヤは俺に背中を見せたが。

 それから僅か一コンマ二秒で、彼の背中――正確には腹に穴が開いた。

「リョウヤ―――!!」

 リョウヤから飛んできた血は、俺の体に波の如く降ってきた。

 左手で顔についた血だけを拭い、俺はリョウヤの近く目指し駆け出す。

 だが。

 不意に、胸が焼けるような痛みに襲われた。

 口に触れると、そこからは血が溢れていた。やがて視界は、黒いものに遮られようとしていた。

 そして、完全に視界が塞がれ、全身から力が抜ける前に俺は思った。

 出来るなら、家が焼けない国に生まれたかった。

 出来るなら、死体や血を見ることが無い国に生まれたかった。

 出来るなら、飛んでくる銃弾を見ない国に生まれたかった。

 出来るなら、母親が殺されない国に生まれたかった。

 出来るなら、妻と共に死ねる国に生まれたかった。

 出来るなら――――。

 そこで、俺の思考は止まった。

 

◇◇◇

 

 寒い。

 何故だろうか。床の上で眠っている感覚がした。

 布団にもベッドにも入らず、何故こんな所で寝ていたのだろうか。

 目を開けてみる。

 そこはドア以外何も無い。

「え?」

 このように何者かの意図が隠された状況で目を覚ましたことがあるのは、今回が初めてでは無かった。

 四ヶ月前、デスゲームに巻き込まれ、そしてそのゲームで生き残った私は、今回もそれっぽいことをやらされるのだろうと朧気に理解出来ていた。

 私の名前は、北条(ホウジョウ)(アサ)()。高校二年生だ。

 紫の短髪に、青い瞳で、たまに美少女と呼ばれる容姿を持っている。服装は黒いスーツに、紫のネクタイ、黒のスカートだ。

 天井からモニターが下りてくる。

 モニターに映ったのは、仮面を付けた男。

「初めまして、北条朝美様。私のVR世界へようこそ。

突然ですが貴方には、デスゲームに参加してもらいます。

まず、貴方方の内誰か三人に、改造したVRマシンで殺人鬼の人格を植え付けました。

このゲームではそのプレイヤーを、《裏切り者》と呼びます。

ただし、自分が《裏切り者》かどうかは本人でも分かりません。

なので、裏切り者以外のプレイヤーが全滅する前に、裏切り者三人を殺すことがログアウト条件となります。

一ピリオドでのタイムリミットは一週間。一週間後の二十四時に催眠ガスが放射され、強制的に眠ってもらいます。

その時に裏切り者の一人が、普通プレイヤーを殺します。

裏切り者以外のプレイヤーが全滅すれば、一般プレイヤーは敗北。裏切り者は人格をデリートした後、この世界からログアウトとなります。

以上がデスゲームのルールです。

全プレイヤーが広場で合流した後、ゲーム開始です」

 あの時と、同じか。

 映像には、アビリティが書かれていた。

 あの時と同じ、《炎の双拳》が私の能力らしい。

 胸ポケットからは、Bと書かれたネームプレート。

 前回の二の舞にはしたくない。犠牲者0で、生きてログアウトするんだ!


松野心夜です! 汝は裏切り者なりや?シリーズ第三章!

今回は1のヒロインのアサミが再び主人公になりました! 今回は1・2を超える話が書けるように努力します!

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