第一章~自分探し、その二~
麦秋 リーン・スナー
手帳を新しくして早々、カースに叱られた。
依頼を聞くときは、まず条件を聞いてからって。今回私が受けた後で、依頼料の話になってしまったものだから、もっと良い条件にできるよう交渉する機会を失ったから。うん、反省。
カース曰く、今回の値段だとランチェストの宿一泊分にしかならなく、旅の足しにはならないということ。今日依頼を受けた農場はともかく、その次に向かう予定の農場は、馬車なら三日、歩きなら一週間程度。これが片道だ。往復ならその倍。馬車を利用して時短しても、歩いて往復してもサティーがランチェストに残り続けていたとしたら、宿代がかかるので結局どちらも余り変わらない出費となる計算。……うん、値段交渉が如何に大事か、ほんとよく分かるわ。
第一章~自分探し、その二~
仕事が受けられるかどうかということもあって、サティーはまだ宿に残っていた。
「郊外の農場で魔獣の被害が出ているから、その駆除を頼まれてきた。向こうで一泊する予定だから、戻るのは明日になる」
「じゃ、私はその間、また先生みたいなこともしてるわね」
「……そこで何だが、サティーにも一緒に来てほしい」
「え?」
カースの願いに、サティーは思わず聞き返していた。
この町にスナー姓がいないことが解ってから、サティーは人々に魔法を教えている合間に、また別の事を調べている。
サティーは、過去や未来を見ることができる『夢見』の能力者だ。だが、最近これが発動しなくなっているのだ。その前後を比べると、リーンの存在が思い浮かんだ。本人を疑うのは悪いとは思ったが、自分はこの場に残り、二人だけで送り出してから夢見を試すことにした。これが二人っきりで送り出したことの、理由の一つだ。その結果、サティーが考えたとおりだった。
夢見で見たものは、自分とカースが二人で旅をしている場面だった。リーンを外してどうしたんだろう、と不思議に思う程度の、ちょっとしたものだった。だがそれでも、リーンがいないことで夢見が発動したのだから、リーンの存在自体が、夢見を阻害する、そう結論づけた。
そうなると、また一つ謎が生まれる。何故そうなるのかと。
リーンには、不思議な能力がある。能力と言ってしまうと語弊はありそうだが、彼女はエルフの郷では概念的な考えとしていた魔素を、感じとることができるそうだ。索敵に応用したり、魔獣と魔物との相違を発見したりと、人間離れしたことを次々と成し遂げている。
だから、数少ない魔導書を開き、どこかに何かのヒントがないかを、サティーは調べてみた。だが、それもすぐに行き詰まる。魔導書なんてものは、そもそも数が少ない。あってもエルフの郷で伝えられている魔法から考えると、デタラメが書かれているに等しい内容だったのだ。そんなものでは魔法なんて覚えられるわけがなく、だからこそ人族では魔法がほぼ浸透せずだったのだろう。今は時間が許す限り、サティーが魔法の基礎を教えている。ある程度だが、火を熾したり水を鍋に生成することができるようになっていた。
つまりは、人族が魔法に対する知識は、サティーの足下にも及ばない。見つけた魔導書なんて、そこから考えればデタラメだらけだ。だからそちら方面からリーンのことを調べてみる案は、諦めるほかなかった。
是が非でもリーンのことを知りたいと考えたサティーは、次はリーンが救助されたときに話していた言葉に着目した。今でもなお、ちょっと興奮したとき等にぽろっと出てしまう、あの謎の言葉である。先日もスナー家を尋ねたとき、クッキーのおいしさに驚いて『ふくーすな』と叫んだらしい。カースが後に尋ねたら、美味しい、という意味だとすぐにリーンは答えたそうだ。それらの言葉に、リーンのルーツを見いだせる何かがある。サティーはそう睨み、図書館を訪れようとしていたのだ。
「……今回受けた仕事、宿代の足しにしかならないぐらいでね。いっそ宿を引き払わないと今後の生活に支障が出そうなんだ」
ぽかん、とサティーは口を開け、固まってしまった。しばらくそのまま思考を巡らせたサティーは、大きな溜息を吐いてしまった。
「……やっぱり一カ所に留まるのは、ちょっと無理だったかしら」
その溜息は、最初にそう計画した自分自身に向けてだった。
「解ったわ。これからは同行するわね」
仕方ないか、と一度目を瞑り、再び開いてリーンを見上げる。
「なるべくお邪魔虫にならないようにするからね」
「う、な、何のことかな……?」
イタズラっぽく笑いながらの一言に、リーンは視線を逸らすのが精一杯だった。
サティーが二人っきりにさせた理由はもう一つある。本人たちには内緒だが、サティーは二人をひっつけてしまおうかと目論んでいる。自分こそ一目惚れしてしまった立場だが、カースには自分よりもリーンの方がふさわしい、と考えている。自分はエルフで寿命が長いが、カースは人族。生きる時間が、違うからだ。寂しさはあるが、カースはその方が幸せになれると、彼女は信じているのだ。
宿を引き払い、三人はそのまま問題の起こっている農場へと向かった。農場までは農業ギルドが荷馬車を用意してくれたおかげで、昼過ぎには到着できた。大分時間を短縮できたのは幸いだった。
三人は、早速農場の責任者と面会した。
「君らが問題の動物……、いや魔獣だったか。対応してくれるというのかね?」
どこか高圧的だが、おそらくは切羽詰まっている為だろう。特に麦は今まさに収穫時である。待ったなしなのだ。
「しかし、若いな。本当にあの連中をどうにかできるのか?」
「連中……」
リーンはその言葉に引っかかり、呟いた。
確かに、『そいつら』と商人ギルドの受付は言っていた。複数又は数種類いることを、思い返せば最初から示唆していた。もっとちゃんと確認すべきだったな、とリーンは何度目かの反省をする。
「連中って、どんな姿をしているの?」
「ああ、……ただ、何とも説明しにくい。背中を丸くして歩く豚のような奴だ」
背中を丸くして歩く豚ならそのままの姿である。が、そういうことを言っているのではないだろう事はすぐに解る。もう少し詳しく聞いてみることにした。
「背中を丸くって、それは猫がやんのかステップ踏んでるみたいに?」
リーンはその姿を再現するかのごとく、きゅっと手足を伸ばして、可能な限り猫背にして見せた。その姿に、後ろでサティーが吹き出していた。
「それとも、人間が猫背をする感じ?」
今度は、軽く背中を丸めた状態にして、腰をポンポン、と腰を叩く仕草をしてみせた。それは老人だとサティーが小声で突っ込む。
責任者は苦笑しながら猫背の方、と指摘した。
猫背の姿勢のまま、リーンはカースと目を合わせる。
「新種、かしら?」
「かもしれないな。……もう一つだけ聞いていきたいんだが、人間のように二足歩行する豚みたいな奴、という感じだろうか?」
責任者は的を射た、という表情で頷いた。
「ああ、そんな感じだ。……どうだろう、やってくれるか?」
三人は視線を絡ませた。サティーの表情が一瞬曇ったが、一斉に頷いた。
「ええ、任せてください」
代表して、カースが答えた。
その後、その魔獣に関しての詳細を確認した。夕刻の日が沈みそうな頃合いに数体ほどの団体で現れ、野菜などを持ち去っていくそうだ。その場で食べることはせず、どうやら巣に持ち帰っているようである。野菜は引きちぎられていることから、爪など鋭利なもので切り裂いているようではなく、力任せ、という印象だそうだ。
三人は早速、一番被害が起こっている畑に向かった。
畑に到着すると、あちらこちらが踏み荒らされており、野菜も残り少ないという状況だった。
「……根こそぎ持ち去っていないのが、逆に不思議に思うけど」
「それなりに知恵があるんじゃないか? 一気に持って行っても、巣で腐らせてしまうだろうから」
「だとしたら、やっかいかもね。私はともかく、二人がいると警戒して出てこないという可能性も出てくるし」
リーンの言葉に、カースは引っかかりを覚える。
「リーンだけ大丈夫そうだと聞こえるんだが?」
「私狩猟民。気配を消すなんて造作もないことよ」
そういえばそうだった、とカースは溜息を吐くほかなかった。
気配を消すのは、容易ではない。
リーンは村を出る頃には既に一人前の狩猟民となっており、その過程で気配を立つ技術を会得しているのだ。対して、カースは正面切って戦うスタイルで、これまで生きてきた。だから気配を消すという発想自体があまりなかった。サティーは戦闘経験自体が少ないため、まだまだこれからであろう。
待ち伏せは、リーン一人で行うこととなり、カースとサティーは離れた場所から様子を伺うこととなった。ここでもリーンの狩猟者としての腕が光っていた。
待ち伏せというのは地味なものだが、奥は深い。ただじっとして隠れるだけではなく、相手に気配を悟られてはいけないのだ。加えて待ち構える位置取りも大切で、必ず風下になるようにしなければならない。それでいて、一撃で仕留められるよう、相手との向きなども考慮しなくてはならないのだ。
リーンは草むらに身をかがめて気配を立てば、見えていてもそこにいないような錯覚さえ感じられた。加えて、一切身じろぎせず、ひたすら待ち続けるのだ。ただじっとこらえることだが、それが如何に難しいことかは二人とも知っているからこそ、彼女の猟師としての腕前はかなりのものであると再認識させられた。
やがて。
夕日が眩しく差し込んでくるような頃合いに、近くの森からそれらしき姿のものが現れた。全身は確かに豚のそれである。だが、四肢は人間のように太く長くなり、手にはしっかりと棍棒を握りしめ、足は蹄でしっかりと踏みしめていた。豚の胴体に、人間のような手足を生やし、二足歩行をしているという姿だった。
「確かに豚が背中を丸くして立っている、だけどこれは……」
初めて見る魔獣だ。いや、魔物かもしれない。最初の一体が現れると、次々と森から畑へと侵入してきた。その数五体。豚の顔は、どこか愛嬌がありそうだ。しかしその目は獲物を探す輝きに満ちていた。
「……」
サティーは真っ青な顔をして、言葉もなく震え上がる。自分らよりも大きいともなればそうだろう。カースは、ゴブリンの時ほどの嫌悪感はなかった。剣をゆっくり静かに抜き放ち、チャンスをうかがう。対してリーンは。
「……美味しそう」
「ぅおいっ!!」
あろうことかの発言で涎をすする彼女に、カースは思わず立ち上がってツッコミを入れてしまった。
「っびひっ!?」
思わずのツッコミを受けたリーンも、そして近くまで寄って来ていたその連中も驚きの表情となる。が、一番最初に動いたのはリーンだった。そのアクシデントすら、彼女は利用する。
カースに顔を向けていたその巨体の背後にすっと回り込み、武器を抜き放ちつつその首へと一撃を入れていた。
「…っ!?」
その巨体は目を見開き、そのまま白目となりながら前へと倒れていく。その時点でリーンの姿はそこになく、別の魔物へと疾走していた。リーンが一撃の下絶命させたそれは、崩れて消えること無く地面へと倒れ伏したのだ。そう、これは魔獣だ。
カースも飛び出し、近場にいたその魔獣へ斬りかかる。が、カースの一撃をその魔獣は棍棒で受け止めた。
「くっ!?」
思わぬ反抗にカースは表情をゆがめた。避けると思っていたものを、受け止められてしまったのだ。確かに切れ味なんて無いに等しい、刃もあちこちボロボロな使い古した剣だ。しかし自分としてはそれなりに力を入れた一撃のつもりだった。だが、結果が物語っている。初手から、自分の『力』を使うべき相手だった。
カースは剣をすぐに諦め、距離を取るため後ろへと跳ぶ。それと同時に、サティーと入れ替わった。そしてバンッと足を踏みならして急制動、そして吠えた。
「アクア・ブレード!!」
急制動の勢いのまま、サティーは腕を振るう。指先の軌跡に合わせ、空気中に何かが現れた。それは水の固まりだ。いや、鋭く研ぎ澄まされた刃の形をしていた。
「いっけえっ!!」
腕を振り抜くと、その刃はサティーの身体から離れ、刃を向けてその魔獣へと迫った。魔獣は棍棒にめり込んだカースの剣を捨てて、それを受け止めようと腕を伸ばした。
ざんっ!!
鮮血がほとばしった。
サティーの放った水の刃は、その腕を真っ二つに切り裂き、胴にまでめり込んだ。溜まらずその魔獣は悲鳴を上げた。
「ぶぉおおおおおおお」
よろめき、しかしその激痛のためかそのまま地面へと倒れ、もがく。その様子を見ていた他の個体達は、互いの顔を見合わせて立ち止まっていた。が、唐突にその一体が力を失い、その場に崩れていく。
「二匹目」
その後ろにはリーンがいた。リーンには、戦っているときの緊張感などは微塵もなく。ただその目が語っている。彼女は、目の前の魔獣を敵として見ていない。獲物だ、食べ物だ、と。リーンは戦っていない。狩猟をしているだけだ。
獰猛な蛇に狙われたカエルの気持ちが分かる、そんな一睨みだった。
その目に、サティーはここ最近一番の戦慄を覚えた。
結局、森の中で様子をうかがっていた数体は、そのまま見逃す形となってしまった。だが、もう二度と来ないことは確実だろう。何せ、リーンをまるで天敵の捕食者と認定したような、見事な逃げっぷりだったからだ。リーンはどこか不満げではあるが。
「ま、何にせよ。きっとこの魔獣の肉は美味しいわよ」
「まだ食べてもないのに、よく解るなぁ」
「まあ、狩猟民の勘? 特にこの辺りとか、あとこの辺り。……あ、内蔵とか生殖器とかは多分毒あるから、食べないほうが良いかもね」
リーンは拾ってきた竹の棒で、骸の部位を指しながら話す。
すると、騒ぎを聞きつけたのか、責任者が駆けつけてきた。しばらく息を整えつつ倒れ伏している魔獣を見て、三人の無事を確認して、安心して胸をなで下ろした。
「ご、ご苦労、よくやってくれた。この屍体の処理については我々に任せてくれ」
責任者は、一刻も早くこの死体をどけて、畑を復旧させたいという考えである。取りあえず大きな穴を掘り、焼くなりして埋めることを想定している。こんなもの、やっかいなゴミであるという認識だ。
「え? 私たちに狩りさせておいて、自分たちだけで食べるの?」
リーンにとっては、自分が狩った獲物だ。最初からリーンは、この魔獣を食べ物と認識していた。
「……え?」
責任者とリーンがしばし見つめ合ってから。リーンが言わんとすることを理解して驚きの声を上げた。
「え? ……こ、こんなものを、た、食べるのですか!?」
「食べるわよ? 美味しいわよ、きっと。食べたことないけど」
「え、えええ……!?」
既に悲鳴に近い声を上げる責任者に対し、さも当然と、リーンは答えたのだった。
日が暮れる頃、農場の人たち総出で屍体を農場の広い敷地に運び込んだ。畑を荒らしていた魔獣が倒された喜びと、それを持ち帰ってきて食べるのかという困惑の表情がリーンに注目する。捌くのは自分に任せて、とリーンは買って出ている。自前のナイフを荷物から取り出し、そして鮮やかに捌いていく。精肉店などに出入りしていない人たちには、さすがにこの解体ショーはきつかったようで、早々に離脱していく。ただ、酪農ギルドにも所属して二足のわらじを履いている人たちは、リーンの鮮やかな手さばきに感心していた。
やがて、一抱えほどもあるような精肉が皆に配られることになった。早々離脱した者たちは、しばらく肉は食えそうにないと言いつつも、ちゃっかり受け取っていた。
「……確かにこれは上等な肉だな。なにより新鮮なのに熟成されている。一体どういうことなんだろう」
「私も詳しくは解らないのだけど、魔獣って元々普通の野生動物で、魔素ってものを取り込みすぎて変化するの。その変化の過程で肉が熟成されるのかなって思ってるの」
「魔獣、肉か」
酪農ギルド所属者達は、腕を組んで考え込んでしまった。
しばらくして、夕食の時間となった。先ほどの魔獣肉はリーンが調理し、試食と称して皆に提供することにした。みな最初こそ恐る恐る手を伸ばしていたが、いざ食べてみればそのおいしさに舌鼓を打っていた。酪農側も自分らの出荷している家畜肉との違いを確認できたことで、一応の安心を得たようだった。魔獣肉は、固いが脂身が少なくコクがあるワイルドな味わい、家畜肉は脂身が均等に散りばめられたジューシーで柔らかい味わいという違いだ。好みが分かれるだろうが、それは棲み分けもできるということだ。今後は、魔獣についても色々研究するとよいかもしれないと、そう考えるのだった。問題は、どうやって魔獣を確保するかだが。
リーンは、その場にサティーの姿がない事に気付く。カースに尋ねても、彼も解らないと首を振るだけだった。
「……美味しいのに、……目の前の解体ショーにショックを受けちゃったかなぁ」
「かもしれないな。丁度きりも良いか。……俺、ちょっと探してみる」
「いいの? うん、解ったわ」
カースは丁度一皿食べ終わったタイミングだったこともあり、食事をそこで切り上げて立ち上がった。
サティーは、すぐ近くの建物の陰に座り込んでいた。特に隠れているという体でもなかったので、カースはすぐに見つけることができた。
宴もたけなわ、というタイミングでリーンは責任者に尋ねた。
「今更なんだけど、酪農ギルドの人たちがいるのは、どうして?」
「ああ、いつも収穫には人の手が足りないから、酪農の人たちに手伝って貰っている。牛を使って荷物を運んでくれるのは、本当に助かっている」
なるほど、とリーンは納得した。
「しかし、先ほどの肉は美味しかった。何というか、一段と野性味があって、家畜の肉とはまた違う方向でね。……どうだろう、専属でまたあの魔物を狩って貰えないだろうか?」
リーンはしばし考え、首を横に振る。
「だめか?」
「駄目、っていうより無理かな。……生き残った魔獣の逃げっぷりを見ると、どうも私、天敵認定されたっぽい。多分もう二度とこの辺りには近づかないかもしれなくて」
そう苦笑するリーンだった。
そりゃそうだろうな、とカースは呟く。彼の背後にはサティーが身を隠すようにしていた。表情も恐怖のそれに歪ませていた。リーンは小声でカースに尋ねるが、彼は解らないと、首を振った。
リーンが目を合わせようと姿勢を変えると、サティーはそれを避けるようにカースの背後を移動した。リーンは避けられてしまって少しだけ寂しく感じるのだった。
なお、報酬に関してだが、農場主がリーンから個人的に魔獣肉を買い取ったということにして、結構色を付けて貰うことができた。どのみちリーン達三人でどうにかできる量でもなかったし、そもそも町ではギルドを通さないと店へ卸すこともできない。捨ててしまうことが一番心残りだったこともあり、リーンはその提案を喜んで受け入れたのだった。
翌日。
ランチェストの繁華街に戻ってきたのは、昼ごろ。帰りも馬車で送って貰うことができたため余裕があった。三人は軽く昼ご飯を食べると、そのまま東の街道へと歩く。
「昼からだから余り進めないけど、まあ今日は行けるところまで行こう」
「そうね」
「後リーン、余り大きなものは狩らないように。処分に困るからな?」
「……気を付けます」
カースが注意し、リーンが苦笑しながら答えた。その一方で、昨日からサティーが怖がってカースの後ろに隠れているのがなんとも寂しかった。
リーンもカースも、まだこの時は、サティーの葛藤が何か、知らないでいた。




