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ジャンクバード  作者: ポチ吉
Lemon

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輸送中隊

 旧時代の建築様式を再現したのか、或いはそのまま旧時代の建物を利用しているのか、石や木とは異なる冷たい感触の床の建物だった。

 魔力汚染区域である龍骸地方の入り口である空風峠。

 外と中から毎日多くの人が集まるその街のハンターギルドの冷たい床には今日も今日とて多くの足音が響いていた。

 空風峠の主力産業は『輸送』だ。

 外からは中では育てにくい野菜や乳製品を、中からは迷宮から持ち出した遺物や魔物の素材を。運び込んだり、運び出したりしている。

 そうなるとどうしても護衛が必要となってしまう。

 何と言っても龍骸地方は魔力汚染区域。

 魔力を宿せないおかげで今やすっかり弱いイキモノと化してしまった人類の領域ではなく、魔物(モンスター)や亜人(デミ)の領域なのだから。

 そして使われる護衛は様々だ。

 旧時代より人の隣に居て、それでいて魔力を宿せる犬などを飼う。

 魔力により変異したモノの中で新たに隣人となってくれた友好亜人(ブルーデミ)を雇う。

 そして最後にそう言った他種族に頼らない方法。ハンター。己の身体を蟲に差し出す外法で以って蟲憑きとなった人類の牙を雇うことだ。


「だから俺達(ハンター)はお仕事に困りません、と」


 ありがたいことです。軽い感じで言いながら、イチゾーが手元のタブレットをたぷたぷと操作し、何個かの護衛依頼をピックアップ。

 そのままキャリーケースに腰掛けるカエデに手渡した。

 膝の上で、うとうとするペンギン――ニゾーを撫でていたカエデは、羽毛から手を放してタブレットを受け取る。そうしてカエデが画面を見れば、撫でる手が止まったことで目を覚ましたニゾーも覗き込んだ。


「な?」


 どれどれ? とか言って居るが、ニゾーは字が読めないので見る意味はない。

 それでも見せないと『ぐなぐな』文句を言うことをお姉ちゃん(カエデ)は知っているので見せてあげる。


「……食品、機械部品、この辺りは良いと思いますけど、人員輸送は――危なくないですか?」


 あなただけなら良いですけど、私も居るんですよ、とカエデ。

 蟲憑きでハンターであるイチゾーと、最強種族と呼ばれる迷宮ペンギンであるニゾーは未だ双方未熟ではあっても、一応は強者の側だ。だが、カエデはドローン技師。蟲憑きでもないので、暴力には弱く、その癖分類は『美少女』だ。

 濡れた様な黒髪の彼女は“悪意”の的に成り易い。

 だからその警戒は当然のモノなのだが――


「まぁ、他人と一緒ってのはあぶねぇけど……出発時間見てみ」

「? あら、全部一緒ってことは――輸送中隊《トランスポート・カンパニー》?」

「そいうことです」


 言いながらイチゾーがタブレットをタッチ。絞り込み条件を変更してイチゾー(位階弐)が受けれない『位階(レベル)参以上』を対象に切り替えて見れば、デカい商店がデカい街への商品輸送の護衛を募集していた。








 コバンザメ。

 大きな魚にくっ付いておこぼれを貰う彼等。

 そんな彼等を真似た訳ではないだろうが、大きな規模の輸送隊が造られると、それと同時刻に同じ街を目的地とした輸送隊が出発することがある。

 そうするとその規模は大きくなり、名前が変わる。


 輸送中隊《トランスポート・カンパニー》。


 この度、ビートルワークス社が鉄の都である武内鉱山に向けて仕入れの車を出した所、何組かの輸送隊が偶然(・・)同時に出発することとなり、ソレが結成された。


「……」


 偶然、である。

 偶然一緒に出発して、その結果ビートルワークスが雇っている位階(レベル)参以上のハンターが安全を確保した道を行くことになるのである。


「……」


 茶番だが――まぁ、仕方がない。

 何と言っても人類は今やすっかり弱いイキモノなのだ。そうでもしないとやっていけない。


「アッチはアッチでオレ達を『いざと言う時の囮』位に考えてるから――」

「どっちもどっちってかぁ?」


 風を切るピックアップトラックの助手席。

 バックミラーで荷台の一人(カエデ)と一羽(ニゾー)の安全を確認したイチゾーが、行儀悪くダッシュボードに足を投げ出し、大人って汚ねぇー、と言えば……


「そう言うこった」


 賢いって言えよ、とハンドルを握った小鬼種(ゴブリン)――ゴーマが、ひひ、と笑った。

 非常に悪い笑い方だ。

 子供が見たら泣いてしまうかもしれない。

 だがイチゾーは子供ではないし、小鬼種(ゴブリン)の養父がいるから、その笑い方も見慣れたモノだ。人間種(ヒューム)が良くやらかす小鬼種(ゴブリン)への偏見からの警戒は無い。だから特に警戒することもなく「そンであれだろー? その万が一の時、テメェは俺を囮にするんだろ?」やってらンねぇー、と素直な気持ちを吐き出してみる。

 偶然一緒に出発しただけ(・・)の連中との揉め事を避ける為。それがコバンザメ(ゴーマ)達が護衛を雇う主な理由だが……“いざ”と言う時の護衛の使い道はソレだ。

 悲しいことに幾ら強くとも、ハンターは所詮雇われ。

 旧時代はとっくに滅んだが、資本主義は未だ健在。金がない奴の命の値段は安いのだ。


「バッカ! オレ、ちゃんとお前なら倒せるって信じてるぜ?」

「……へーぃ? 『そんな訳ないだろ!』とかの否定の言葉が欲しかったんデスガー?」


 意味もなくヘッドレストをガチャガチャ伸び縮みさせながら半目でイチゾー。


「……」

「……」

「あー……ガム食う?」

「……食う」


 否定の言葉ではなく、コーラ味の板ガムが貰えた。







 とは言え、輸送中隊での移動は楽なモノだ。

 位階(レベル)参以上、しかも輸送隊の護衛を専門にやっているハンターがいるので、そうそう“いざ”は起こらない。

 そして移動以外でもその恩恵はある。何と言っても輸送隊の面々は商人なのだ。だから商機は逃さない。そんな訳で――


「……今回の屋台は外れですね」


 無駄にデカい焚火を囲んでの夕食――と言う名のどんちゃん騒ぎ。

 適当な場所にブルーシートを敷いて座れば、何で焼きそばの屋台が三つもあるんですか……とジン・コークを片手に頬が赤くなったカエデが頬を膨らませた。「……」ペンギン憑きでアルコールが苦手なイチゾーは何となく距離を取ろうとするが、空いたもう片方の手が腕を掴んでくるので逃げれない。


「こら。行っちゃだめですよ?」


 そして酔うと年上の幼馴染は大変めんどくさい。「にゃーん」とか言いながら全体重をこちらに預けてくる。重い。「……」。もしかして:ふとった?


「いでぇ!」


 そんな疑問を浮かべたら、かぷ、ではなく、ガブ、と噛まれた。


「んー? なぁにぃ?」

「――」


 そしてこの『何か文句ある?』の笑顔である。文句があっても、言うと噛まれるので、大変理不尽だ。だからイチゾーは「……なんでもねぇでーす」とせめて声音だけに不満を滲ませて空いた手で割りばしを割ると焼きそばに手を着けた。

 太麺にガッツリと濃い目の味が付いている。美味い。美味いが……まぁ、カエデの言う通り外れだ。「な?」。視線に気が付き、なんじゃい、と言ってるニゾーの口の周りが酷いことになってる。口の周りって言うか胸の白い毛も凄いことになってる。ベタベタだ。


「知ってたけど……おっまえほんと麺類下手だよなー」


 何でそうなンだよ。もう怪談の領域だろ、それー。


「ぐな! ぐあぐあ、ぐあ、なっ!」

「あー……うん。まぁなー」


 ペンギンで麺類上手な奴なんていない! と言うニゾーの主張に賛成一つ。

 だから焼きそばの屋台は外れだ。

 幾ら美味しくても、ペンギン向きではない。

 見ればニゾー以外の他のペンギン達も大なり小なり悲惨なことになっていた。「……」。ちょっとした地獄絵図である。

 それでも場はパーティナイトだ。

 どうせ汚れたなら、とペンギンと一緒に地面を転がるブレイクダンスを始める奴が現われたかと思えば『お、そんなら……』と楽器を取り出す奴や、端末をスピーカーモードにしてカラオケのど自慢をやる奴などが現われだした。

 おひねりが投げ込まれ、結構盛り上がっている。


「ねぇねぇ、イチゾー?」

「……はいはい、何ですかカエデちゃん?」


 水飲め、水。顔は赤いし、くっついた肌がやたら熱い。とても楽しそうだが、とても酔っていらっしゃる。


「呼んだだけにゃーん」

「……」


 だから本当にめんどくさい。くっつくな。くっつかないで。手出しさせない(・・・・)癖にくっつかないでよ! そんなイチゾーの願いは口に出していないので届かない。届かないので、カエデは好き放題。

 イチゾーのTシャツの肩をずらして自分(カエデ)が付けた痣を甘噛みしだす。「……」。大人しくしてるなら、まぁ、良いか。そんな結論が出たので好きにさせることに。


「――歌」


 だが、数分で飽きたらしい。


「あン?」

「歌、盛り上がってますねー」

「あー、そうだな。良い感じだなー」

「おひねり、貰ってますねー」

「そうだな。お前も行ったら? 晩飯代くらいなら余裕だろ?」


 イチゾーとカエデは街から街へと移動する狩猟団で育った。

 だから割と音楽には慣れ親しんでいる。子供が元気よく歌うだけでも酔っ払いはお小遣いをくれるのだ。


「んー? 私が行っても良いですけどー……お酒、入っちゃってますし、こういう場所(・・)ならー」

「……まぁ、俺のが良いか」


 カエデちゃんは本格派なので、パーティ会場とかのが良い。大してイチゾー(自分)とニゾーは……ちら、と相棒(ニゾー)に視線を送る。「ぐあ!」。やったんぜ! と素敵な回答が返って来た。なので――


「……なるべく火の傍に来いよ」

「ふふ。わかったにゃーん!」

「……そうですかにゃーん」


 取り敢えず幼馴染を見える場所に連れ出して順番待ちの列に並んだ。








 ――そして翌朝。


「……あたま、いたぃ……」

「……そうですかにゃーん」


 自業自得だにゃーん。


「――」

「いっでぇ!」


 二日酔いの幼馴染により、イチゾーの肩の痣は更に濃くなった。


にゃーん。


ちょっとビッグニュース

何と本作が――書籍化します!!

ありがたいことに「第十三回ネット小説大賞」に入賞してマイクロマガジン社様に拾って貰いました!

ここまでこれたのも、本当に皆さんのお陰で――ん?「第十三回」?十二月に始まるのが「第十五回」で――


はい。

発売日ですが。

今日です!!!!!!

もう電子なら即お手元に来ます!

まぁ、興味があるかたはTwitter(頑な)で『ジャンクバード』検索してみてください。素敵なイラストとか見れますので!!


そんな感じ。

そんな感じなので取り敢えず一日おき更新しますね!

またお付き合いください!!!



そして以下言い訳。

この話を読んだ時「ん?」と思った方もいるでしょう。

そうです。

結構大きな話の変更が入ってます。ヒントは先輩。ちょっと諸々の関係でルートが変わったと思って下さい。

だから前話って言うか第一部のラストがちょっと変わってます。

なんのことかわかんないひとはそのまま楽しんでください!

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おめ、買ったぜー!
買っちゃったよ!疑問も感じずに! 何を言っているかわかんねえかもしれねえが以下略
書籍化おめでとうございま〜す♪
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