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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第1章 魔剣の使い手

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ユリーシャ邸とユリーシャ

そんなライラリッジにあるユリーシャ邸で俺は暮らしている。ユリーシャの名が付けられているこの邸宅は、もちろん、ユリーシャの個人資産だ。


ここには本館と別館、2つの建物がある。本館の1階は貸し出されていて、レストランや大小の浴場など様々な施設がある。2階はホテル。ここはレガルディアの首都ライラリッジの中心部にあるので、繁盛しているようだ。ここまでは一般人も立入可だ。


3階にはユリーシャ専属の魔法戦士とメイドさんが住んでいる。俺が住んでいるのもここだ。


4階はスイートルームのようなユリーシャの部屋と、俺がトレーニングで使わせてもらっている白の部屋と…あとは何があるのかよく分からん。


別館は女性専用のトレーニング施設だ。当然、俺は使わせてもらえない…仕方がないね。大きさは本館よりもやや小さいくらいだな。


閉館している時に中を見せてもらったのだが、さすがに広いな。別館は体育館のような造りで天井が高い。興味深いのはこの建物が木造だということだ。天井を支える梁はむき出しで、その木の組み方は機能的でありながら凛として美しい。そして、いい匂いがする…木のいい匂いがね。


設備も充実している。メインの広大な空間以外にも部屋がいくつかあり、そこには白の部屋には1台しかないベンチプレスマシンが何台も置いてある。トランポリンやマットまである。なんと言うか…羨ましいですね。もちろん、この別館も繁盛している。


ユリーシャ邸は、美しい庭がある邸宅としても有名だ。この庭は階段式のテラスで3つに分けられている点が興味深い。上から順に水の庭園、花の庭園、そして菜園だ。


水の庭園は何の変哲もない人工的に造られた池と、その脇に置かれた頑丈そうな樽がある庭園だ。ユリーシャ邸の庭の水やりには地下水が利用されている。地下水は冷たい…だから、まずこの池に水を貯めて、水温を上げているのだ。


しかし、池という構造上どうしても藻が発生してしまう。そこでタニシやヌマエビを池に放ち、藻を食べさせているようだ。


もちろん、それだけで水の濁りを解消できる訳ではない。だから、樽の中に小石と砂、炭を入れたろ過装置を作り、これを使って水を綺麗にしているようだ。その水をジョウロに汲み、花の庭園や菜園を潤している。上手いこと考えたもんだ。


花の庭園では季節の花々が咲き誇り、訪れる人が後を絶たない。希望した人にはここで育てられた花や苗が販売されているようだ。商売上手とは、このことを言うのだろう。ちなみにユリーシャが俺を発見したのもこの花の庭園だ。


菜園では、様々な野菜やハーブが育てられている。ここで収穫された野菜やハーブは、『たけのこ日和』や『ラナンエルシェル』で振舞われているようだ。いつも美味しくいただいております。


花の庭園も菜園も、幾何学的な模様が形作る正方形が実に美しい。水を操る技術が、この華麗な庭園を生んだと言っても過言ではないだろう。


今でこそユリーシャ邸と呼ばれているが、もともとは国が管理していた物件の一つで、そのころはレガルディア第12邸宅と呼ばれていた。ここがユリーシャ邸と呼ばれるようになったのは今から約2年前。ユリーシャがここに住むようになってからだ。


つまりここはユリーシャの生家ではない。以前は郊外にある、ここよりも小さな邸宅に住んでいたそうだ。そのころのユリーシャは、只のユリーシャ・レガルディアだった。彼女がユリーシャ・リム・レガルディアになったのは大学を卒業した後、現国王ラザルト・ラム・レガルディアの養子になってからだ。


ラザルト国王には実子が4人いる。にも拘らず養子をとるというのは、俺の感覚からしたら奇妙に思える。だが、ユリーシャに限らず優秀な魔法使いの囲い込みは、これまでにも行われてきたようだ。


なんにせよ、彼女はこのレガルディア王国の王位継承者の一人である。簡単に言うとお姫様だな。カレンが様付けで呼ぶのもよく分かるぜ。もっとも俺は呼び捨てでいいと言われているが…。


絶世の美少女で天才的な魔法使いでお姫様。「天は二物を与えず」とか言うが、あれは大嘘だな。ユリーシャには二物どころか三物も与えているじゃないか…なぜなんだ?


でも、いいことばかりじゃないんだよな…。ユリーシャには、彼女の熱狂的なファンがかなり多くいるのだ。だから、ラザルト国王の養子になることがゴシップ紙で報じられてからは、ユリーシャ・フィーバーになったそうな。


それは今となっては考えられない程の熱狂だった。本来なら、ユリーシャはレガルディア国立魔法大学を卒業してから第12邸宅に引っ越すということになっていたのだが、警護上の理由でそれよりも1年ほど早くここに住むようになった。


しかし、それでフィーバーが収まる訳ではなかった。ユリーシャの生家の周りは、大変な騒ぎのままだったのだ。軍の魔法戦士が警備に派遣されたものの、騒動はなかなか収まらなかった。一連の騒動でユリーシャの母親は体調を崩し、生まれ故郷のミランミルで静養することになった。父親も母親に付き添うため生家を後にした。


不注意が招いた情報漏洩と心ない人々が巻き起こした騒動は、一つの家族を破壊してしまった。王室とユリーシャの熱狂的なファンには批判が殺到し、王室は謝罪に追い込まれた。そして、熱狂的なファンの間では鉄の掟なるものが制定されることになった。


それは「何があっても決してユリーシャ様に迷惑をかけない、暖かく見守る」というものだ。感心ですな。


とは言え、ユリーシャにだって欠点はある。それは魔法オタクなことだ。魔法のことになると話が止まらなくなるのだ。分かりやすく説明することができない訳でもないだろうに…絶対にそうはしない!そして、とても楽しそうによく分からない話を延々とするのだ…。


魔剣があれば俺にもよく分かるように翻訳してくれるのだが…やはり簡潔明瞭に説明してほしいものだ。

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