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掃討戦 II


         第5話 掃討戦 II



 クロイツの言葉がスピーカーを通して艦内の隅々へと響き渡る


 この言葉によって全ての乗組員は、より一層の緊張感を持つと同時に、皆たくましい顔つきに変わった



「よし!俺たちの手で敵を退けるぞ!!」


「俺たちが生きて帰るんだ!」


「こっちには敵工作船団を退けた艦長が居るんだ!負けやしない」



 それぞれ思い思いの言葉を口にして、自分自身に喝を入れている


 その熱が艦内全域へと広がり、中の温度を上げているように思えた


 実際、上がることはないが、そう思えるぐらいの熱意がみんなから溢れ出ていた



「正面、敵、左方へ移動します!」


「……味方艦から距離を置いて、こっちを引き付けるってか」



 CICでは、観測員からの報告がクロイツとイヴァンに飛んでくる


 敵の動く理由を口にしながら次の行動予測を立てようとしていた、その瞬間。次の報告が入ってきた



「敵、ミサイル発射!弾数5!」


「奴さん……やる気満々だな」


「そうだね。イヴァン、追撃してくれ。こちらもミサイル発射!」


「あいよ、艦長。……敵ミサイルに照準合わせ、近接信管のミサイルで追撃。近距離防衛システムで撃ち漏らしを落とせ!こっちも撃つぞ。巡航ミサイル発射始め!」



 イヴァンの号令で、追撃用ミサイルと対艦用巡航ミサイルが発射された


 モニターに映る敵ミサイルを表す赤く光る光点へ、こちらの発射した青い光点で表されるミサイルが交差し始めた


 発射要員の腕がいいのか、はたまたミサイルの性能がいいのか、ミサイルによる追撃で全機追撃することができた



「艦長、敵ミサイル全機追撃しました!我が方のミサイル、順調に敵艦へ向かっております」


「そうか。敵艦側面に向かい回頭。主砲を敵の土手っ腹に叩き込め!」


「主砲、撃ち方始め(うちーかたはじめっ)!!」



 イヴァンの復唱で主砲からレーザー弾が放たれ敵艦に向かって突き進む


 次々に命中するも敵艦とてバカではない


 電子防壁を側面に集中して展開している


 そのため、フェルムートが放ったレーザー弾は対消滅していく


 敵艦に損傷はない。ただ、その間も巡航ミサイルは突き進んで行く


 絶え間なく撃ち続けられるレーザー弾と、波状に迫ってゆくミサイル


 たった一隻の巡洋艦が行う攻撃が敵をどんどん追い詰める



「攻撃そのまま。観測員、戦線離脱を図る敵2隻はどうなっている」


「はっ!敵艦2、我が方より2万キロの距離に達しようとしています」


「……このままだと逃げられるわけか。早く増援が来てくれないと厳しいな」


「クロイツ、現在対峙している敵から距離をとって、逃走中の敵艦2隻に接近するのはどうだ」


「それだと一か八かの賭けになるな。もし挟み撃ちでもされたら終わりだぞ?」


「……それは百も承知さ。でも、このままだと完全に逃げられるぞ」



 少し考えたクロイツは意を決したようだ


 一抹の不安を顔にしながらも勝負に出ることにした


 そして、クロイツの指示がCIC内に響き渡る



「やってみるか。一か八かの勝負を。機関後進全速!前方敵と距離を取りつつ、現在逃走中の敵艦2隻に距離を詰める。後部ミサイル発射口開口、巡航ミサイル発射!敵に嫌がらせしてやろう」


「後進全速!後部発射口開口、通常巡航ミサイル発射始め!」



 今まで使ってこなかった艦体後部にあるミサイル発射口から無数の巡航ミサイルが飛び出してゆく


 今回の弾頭は通常弾頭だ


 先ほど使った近接信管ではなく、接触信管を使用している至って普通の弾頭だ


 目標の船体、もしくは追撃兵装に当たらない限り爆発はしない



「前方敵、ミサイル発射しました!弾数10、真っ直ぐ向かって来ます」


「まぁそうくるよな〜……世の中そんなに優しくはないし」


「クロイツ、追撃する。デコイ射出!近距離防衛兵装、展開!撃ち漏らしは許さん。全て叩き落とせ!」


「観測員、友軍艦艇はまだか」


「はっ!当宙域到着まで、およそ10分です」


「そうか。あと10分はこちらで相手するしかないのか」



 正面から襲ってくる敵ミサイルと、なおも逃走を続ける後方の敵艦2隻


 両手いっぱいに敵を抱えている巡洋艦フェルムートは既に限界であった


 敵駆逐艦3隻とこちらの巡洋艦1隻では分が悪すぎる



「みんな、どうにか耐えるぞ。全ての弾を使い果たしても良いから敵を逃さないよう引き付けよう」


「やるだけやるしかないよな。全弾使い果たしても味方艦艇が来てくれりゃこっちの勝ちだ!みんな死ぬ気でやれ!!!」


「艦長、友軍艦艇より通信。予定より早く到着できそうとの事です」


「本当か⁉︎ やったぞ。これならいけるかもしれない」



 少し安堵感を覚えたその瞬間!


 船全体に大きな衝撃を襲った


 それと同時に、艦全体にアラームがけたたましく鳴り響く



「な、何ごとだ……。観測員、報告!!」


「はっ!敵ミサイル、船首左側面に直撃。区画SH-1からSH-4まで甚大な被害が出ています!!死傷者不明」


「イヴァン、大至急、被弾区画へ救護分隊を2個送ってくれ。レータ!被弾箇所の電磁防壁を厚くしろ」


「了解!CIC、医務室。負傷者発生の可能性あり、受け入れ態勢を整えておいてくれ」


「こちら副官レータ。了解しました!」


「医務室、CIC。了解しました」



 イヴァンは医務室へ連絡を入れると、急いで負傷者発生時に救護を行う5人1グループの分隊を編成する


 編成し終えると、マイクを使って指示を飛ばした



「各員に通達。編成した救護分隊2個は被弾区画に向かえ!到着次第、現状報告しろ」


「了解しました!」





 イヴァンの指示を受けた分隊は、駆け足で被弾区画へと向かう


 戦闘時であるため、艦内の気密扉は厳重に閉じられている


 それを開けては閉じ、開けては閉じを繰り返して現場へと急ぐ


 分隊員たちは船外活動用気密スーツを着用し、酸素ボンベやフルフェイスのヘルメットを被っているため移動速度に限界がある


 しかし、彼らは大切な仲間を助けるようと必死になって突き進んで行く


 被弾区画へ近づくにつれて、どんどん気圧が下がっていっているのが身につけている計器を見ると分かる


 艦内は基本的に常時、1気圧(1013hPa)で設定されているが、目標区画へとひと区画近づく毎に0.1気圧づつ下がっている


 計器を見るに目標区画内の状況は悲惨なことになっていると予想される


 1つ言えることは被弾区画の気圧が0に近い、もしくは0であるということだ



「分隊長……気圧計の数値が0に近づいています」


「そんなことは言われなくても分かる!どんなに小さくても希望だけは捨てるな!!仲間を助けることに集中しろ」


「はっ。失礼しました。……あと1区画先が目標区画になります」


「そのようだな。急いで向かうぞ!みんな、気合い入れろ」



 不安に駆られる隊員に分隊長が喝を入れる


 助けられる側にとっても不安に顔を曇らせる奴に助けられるより、希望に満ちた凛々しい顔つきの奴に助けられたいはずだ


 そのような表情であれば、『生きよう』という気持ちも湧いてくるだろう



「区画番号《SH-2》……よし。ここだな。みんな、安全ロープを側面手すりに固定!各自、前にいる奴の確認をしろ。装備品、最終確認!!」



 分隊長の掛け声で、各員手すりにロープを固定すると前にいる人のロープに緩みがないかを確認した


 ロープの確認終了後、各々は身につけている装備品に破損等ないか入念にチェックする


 忘れてはならないのは、今いる区画から向こう側は真空状態である可能性が高いということだ


 万が一、スーツに穴でも開いていようものなら、死に直結する事態になる



「分隊長、全員チェック完了しました!異常ありません」



 確認を終えた分隊は、縦一列に整列して突入態勢を取っている


 いよいよ、救助活動を開始だ



 最後の扉にある取っ手をゆっくりと回転させ、ロックを解除する


 ロックの外れた扉を勢いよく開けると………

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