束の間の休息
前回の更新の時、次回更新予告を書き忘れたことを深くお詫び申し上げます。
以後気をつけます。
第10話 束の間の休息
今回の事件で連邦に出た被害は甚大だった。
辺境星系防衛艦隊の3分の1が消滅し、その中に艦隊旗艦のワリャーグも含まれている。帝国と境界線を接する辺境星系にとっても、連邦中央にとっても大きな痛手となった。
しかし、一隻の小型艦艇の活躍により工作船を拿捕することができた。拿捕した船の乗組員たちは連邦軍にて取り調べを受けることになった。
彼らの処遇は連邦政府によって決められることになる。
辺境星系防衛艦隊の3分の1を消滅させた敵に対して、一隻で立ち向かったクロイツら特型駆逐艦ヨークの乗組員には、連邦政府より勲章が授与られる事になる。
今日はその授与式の日。授与式は首都星アイテールにて行なわれようとしていた。連邦軍の地上演習地の中央に、特型駆逐艦ヨークが着陸した。降下口よりペルダン艦長を筆頭に副官のクロイツ、砲雷長のイヴァンというふうに続いていく。
艦の前方に特設された表彰台にて、連邦政府主席より感謝の言葉が述べられた。
「御集りの連邦市民の皆様、この度はお忙しい中ご来場ありがとうございます。私は連邦政府主席のロウヒ・ケプラーでございます。今回は非常に悲しい事が起こりました。定期演習中の辺境星系防衛艦隊が何者かの攻撃に会い、その3分の1もの艦船が宇宙へと散ってしまいました。防衛艦隊旗艦ワリャーグと、演習観覧の為乗艦していたネリ軍部大臣が、敵の攻撃により失われました。お亡くなりになった連邦軍人と、そのご家族にご冥福をお祈りいたします。彼らに黙祷を捧げましょう」
式典の前に、連邦主席より今回の事件での犠牲者に対する哀悼の意の表明と黙祷が捧げられた。そして、引き続き勲章授与式へと移っていく。
「気を取り直しまして、この舞台より奥に見えますが、此度の事件を解決へと導いた名誉ある駆逐艦。特型駆逐艦ヨークでございます。そして、今皆様方の目の前に居られるのが此度の功労者であるヨーク乗組員の方々です。僭越ながら連邦市民を代表して、私、連邦政府主席ロウヒ・ケプラーより御礼申し上げます。市民の皆さま、彼らに大きな拍手を贈りましょう!」
ダラダラと続く式典に、1人気怠そうにしている奴がいた。…クロイツである。彼は大衆の面前であるのに少しダラっとした様子で腰掛けていた。その表情は何処か上の空…
(まだ続くの?早く帰ってゆっくりしたいんだけど…。政治パフォーマンスなんて別にいいから、渡す物をとっとと渡してお開きにしてくれよ…)
などと頭の中で愚痴をこぼしていた。
ロウヒ連邦主席の話はまだまだ続いている。
「…この度の敵船拿捕の作戦を立て直接指揮をとったのが、今回が初任官となった新米士官のクロイツ・アルティザン少尉です。彼は先の大戦の英雄、マールス・アルティザンの息子です!さぁ、クロイツ少尉、前へ。…クロイツ少尉、貴官へ連邦名誉十字勲章を授与し、特例として二階級昇進とし、本日付で連邦軍大尉に任官する。これがその勲章と階級章だ。これからも連邦の為、力を使って欲しい。皆さま、壮大な拍手で祝福しましょう!我らが英雄、クロイツ・アルティザン大尉万歳!」
「「「クロイツ・アルティザン大尉万歳!!」」」
「そして、もう1人。クロイツ大尉を補佐し作戦の遂行を影ながら支えた士官。先ほどのクロイツ大尉とはまさかの幼馴染だそうです。これは珍しいことです。此度の作戦の成功も長く培われた友情の成せた技なのでしょう。特型駆逐艦ヨーク砲雷長、イヴァン・ゲルトナー少尉、前へ。貴官へ連邦名誉十字勲章を授与し、1階級昇進とし本日付で連邦中尉に任官する。これがその勲章と階級章だ。これからも連邦の為、力を使って欲しい。皆さま、壮大な拍手で祝福しましょう!」
……約3時間、ようやく首都星アイテールの地上演習地にて行われた授与式が終わった。
長時間にわたって拘束されたことにクロイツは怒り心頭だった。
「何もこんなに時間をかける必要はないだろ!お陰様で昼寝の時間が台無しだ。この勲章なんていらないね。どうせパフォーマンスでくれてやっただけだろう。…それに何が英雄だ。こんなので英雄視されても困る。これじゃ、あのロウヒ連邦主席の次の選挙の為の道具だ。できれば、ゆっくりと過ごしたいものだね。何もしないでダラダラと…」
「クロイツ、柄にも無く怒ってるね…。ダラダラと過ごすなんて毎日してるだろう。お前が忙しそうにしていたのなんて、士官学校時代のレポート提出の時ぐらいじゃないか?」
「イヴァン、君はわかってないね。あれはダラダラ過ごしてる様に見えるだけなんだよ。私の身体の中では赤血球や白血球達が忙しなく働いているんだから。それに私の頭なんて思考停止したことがないよ。それこそ、そこら辺の人と比べ物にならないぐらいにね。だから、せめて身体だけでも、無駄なエネルギーを消費させない為に、動かさない様にしてあげるってわけさ。」
「…そうかい。まぁ、それはお前の勝手だけどさ、お偉いさんの前でやるのだけはやめてくれ。お偉いさんのあの目で睨まれるだけで寿命が縮む。時と場合はわきまえてくれよ。」
「……努力します。」
授与式が終わり、特型駆逐艦ヨークのクロイツら乗組員は、本拠地である辺境星系の首都星エオスへと帰ってきた。慣れない式典への出席で乗組員共々クタクタだった。
サボリ魔のクロイツは特にクタクタだった。
「…ハァ。ようやく帰ってきたよ、我が愛しのマイルームへ。これで少しの間ゆっくり出来るな。」
そんなのも束の間の、クロイツへ至急、防衛艦隊司令部へ来るよう連絡が来た。
嫌な予感を抱きながら司令部へやってきたクロイツは思いもよらない辞令を受け取る。
[クロイツ大尉を辺境星系防衛艦隊所属の特別偵察艦の艦長として任命する]
と辞令書には書いてあった。
「ハァ…マジですか。上の人は後方勤務へ配属するという考えはないですか。」
しかし、嬉しいこともあった。幼馴染で親友のイヴァンも同じ配属になった。それもクロイツの副官のとして。
「よう!クロイツ。また同じ船だな!これは天の思し召しかもしれんな。アハハっ」
「イヴァン。お前は良いな」
「何がだよ。嬉しいだろ!またお前と一緒ってのが。お前は嫌か?俺と一緒なのが」
「そういう訳じゃないけどさ…。また前線勤務かと思うと気が滅入るよ。私としては後方勤務が嬉しいんだけどね…」
「…やる気なしもここまでくると病気だな」
「別に良いじゃないか!働きたくないっていう己の欲望に忠実なだけさ」
「はいはい。そういうことにしておきますよ。それより、お前は艦長に任命されたのだろう?より一層責任が伴うな!」
「なんでお前、そんなに楽しそうにしてるの…」
ここでも腐れ縁パワーが発揮されたクロイツとイヴァンだった。クロイツとイヴァンの腐れ縁物語がまだまだ続いていく。
ここで少尉時代終了です。
これから大尉時代が始まります。
章としてはまだ半分もいってません。今しばらくお付き合いください。
次話は少し遅れるかもです。
でき次第更新します。




