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引きこもり賢者、一念発起のスローライフ 聖竜の力でらくらく魔境開拓!  作者: みなかみしょう
第十七章「聖竜領の春と新しい家」

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273.問いかけると、第二副帝夫妻はこくりと頷いた。

 収穫祭が終わり、季節が秋から冬に入れかわる。といっても、すぐさま急激に冷え込むわけではない。朝に寒さを感じる日が増え、ゆっくりと時がうつろっていく。

 本格的に寒くなる前の今は、過ごしやすい時期の一つだ。


「いやぁー、まさかアルマス殿に応対して頂けるとはおもわなかったよ。日頃の行いだね。ところで、新しい水竜の眷属や南部の地形操作、それと噂の漁港予定地について詳しくぐふっ」

「一度に話すのはやめなさい。それに、今日の用件はそれではないでしょう?」


 聖竜領の応接にて、俺はお茶を挟んで第二副帝クロードとその妻ヴァレリーを迎えていた。


「用件があるなら聞くが、俺でいいのか? なんならサンドラを探してくるが」


 窓の外で散る枯れ葉が季節を感じさせるが、数は多くない。これまで彼らが来るのは、決まって葉が落ちきってからだった。


「いえ、結構。サンドラに対してもこちらで説明するよ。急な訪問なわけだしね」


 クロードの言うとおり、彼らは突然来た。通常なら事前に連絡があるべき人物だというのにだ。

 急な来訪に屋敷内は大慌て。サンドラはリーラと共に領内の視察で不在。たまたま食堂で間食していた俺に声がかかり、応接に招いたという流れである。


「そうだな。ヴァレリーがいるのに急な訪問とは珍しい。相当困った用件が起きたのか?」


 そもそも、彼らが急に訪問するなど、これまでなかった。クロードは暴走気味なところはあるが、妻がしっかり手綱を握っている。聖竜領に来るならしっかり予定が伝わる手はずが整っているはずだ。


「困った、というのは確かだね。正直、未経験のことが起きている」

「それは一体……」

「変に勿体ぶらないの。実は……シュルビアが懐妊したのです」


 それは、納得すると同時に、驚きの情報だった。

 俺はカップを持とうとした手を止めて、軽く一礼する。


「それは、おめでとうございます」

『ワシも祝福するぞい! めでたいことじゃ! いいのう、こういう知らせは!』


 俺以上に聖竜様が喜んでいた。正直、気が早いと思う。


「ありがとう。アルマス殿。我々にとっては初孫になるわけだ。それでだね、例年冬にこちらに来ている分をクアリア滞在に回そうと思うんだ」

「私達もできるだけのことをしようかと思いまして」

「公務の方は平気なのか?」

「平気じゃないね。だから、短期間になる」

「シュルビアには母親をできるだけ付き添わせるつもりです」


 ああ、クロードにはもう一人妻がいるな。そちらがシュルビアの実母だ。色々と頼りになるだろう。


「承知した。サンドラが色々と気遣うだろうが、俺の方もできる限りのことはしておこう」

「うん。それは安心だ。なにせ、アルマス殿はシュルビアの命の恩人でもあるからね。何かあった時、対処してくれるだろう」

「一応言っておくが、俺は医者じゃないぞ?」


 シュルビアを助けることができたのは、たまたまだ。原因が魔法具じゃなければ、お手上げだったろう。


「聖竜領には腕の良いエルフの医師もいるし、魔法草を始めとした薬草もある。何かできないか相談してみるよ」

「感謝致します。アルマス殿。シュルビアがあのような辛い日々を送ると思うと、気が気ではないので」

「ヴァレリーは悪阻が酷かったからねぇ」


 いつも冷静なヴァレリーの方が動揺していた。悪阻というのは人によっては何も食べれなくなったりして大変だと聞く。きっと、苦労したのだろう。

 しかし、もしそうなっても俺にできることはない気もする。


『聖竜様、なにかできないんですか? 母親が穏やかに過ごせて安産ですむ力とか』

『うーむ。気持ちとしてはそうしたいし、あるにはあるんじゃがのう。こう、あんまり大っぴらに個人に力を振るうと影響がのう』


 なにかできるみたいだけど、立場上難しいようだ。


「む。アルマス殿、難しい顔をしているが気にしないでいい。クアリアにはできる限りの人材を派遣しているからね」

「お気遣いだけでもありがたいです。なにかの時には頼らせて頂きますので」

「そうか。めでたいことだけに、つい何かしたくなってしまうな」


 この辺は聖竜様の影響だろう。なんというか、なんというか、上方向からの強い圧力を感じる。祝ったりしろという力を。なにか、俺なりに出来ることを考えるとしよう。


「そうだ。アルマス殿、クアリアに行ったらスルホを尋ねて雑談でもしてくれないかい?」

「スルホと? シュルビアではないのか?」

「彼も大分神経質になっていまして。業務と妻子の心配で、精神的な疲労が激しいのです」

「もしかして、それを聞いて、二人で急に来たのか?」


 問いかけると、第二副帝夫妻はこくりと頷いた。

 まさか妻より先に夫の方が参ってしまうとはな。


「承知した。今度顔を見せるとするよ。少しは気が紛れるような話をしてみよう」


 とはいえ、戦場の話ならともかく、妊娠出産にまつわる話なんか殆ど知らない。……頑張って元気づけてみるか。


「ところでこの件、サンドラに話すと取り乱すと思うんだけれど、どう思うかな?」

「それは、何ともいえないな。とりあえず、知らせもなしに来たことに不満を漏らすんじゃないか?」

「それについては申し訳なく思っております……」


 しばらく第二副帝夫妻がクアリアに滞在するのは悪いことでは無さそうだ。サンドラにとっては、二人の対応をする代わりに、心配事が増えることになるかも知れないが。まあ、めでたいことだし良いだろう。

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