表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
引きこもり賢者、一念発起のスローライフ 聖竜の力でらくらく魔境開拓!  作者: みなかみしょう
第十六章「南へ……」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

238/397

223.聖竜領のエルフの森の族長が、涙目になっていた。

 マーペラ村での二日ほどの滞在を終えた俺達は、すぐに聖竜領へと戻った。

 二日間、ルゼは医療行為、俺は魔物退治を行った。魔物については朝から晩まで山の中を走り回って目に付いたのを片っ端から退治したから、しばらくは安泰のはずだ。念のため、獣避けのポプリも渡しておいた。


 マーペラ村の村長にはとても感謝され、御礼も申し出てこられたがお断りした。俺達は聖竜領と同じように仕事をしただけだし、今回の活動は金銭を目的としたものではない。


  正直、打算的な言葉を言わせてもらえば、「聖竜領と付き合うといいことがあるよ」というアピールも兼ねている。これはサンドラの意志であり、俺も行動方針として賛成している。近隣との関係は良好であることにこしたことはないからな。


 その辺りの事情を踏まえた上で、見聞きしたものを伝えるべく、俺とルゼは領主の屋敷を訪れていた。


「二人ともお疲れ様。山越えでの移動を引き受けてくれてとても助かったわ」


 お茶の用意された応接で迎えたサンドラが、まずはそう俺達を労った。


「問題ない。なかなか興味深かったぞ」


「はい。私も同様です。おかげでまた聖竜領周辺の地図が大きくなりますね」


 予想していたのだろう。俺達の返答に軽く笑みを浮かべつつ頷いたサンドラが言う。


「中南部の情勢についてはお父様に聞いていたけれど、大体正しいみたいね。第一副帝が即位する前後であった政変の影響があるみたい。戦いはなかったけれど、人の動きがあったから少し不安定なのよね」


「そのようだな。村も土地も貧しい印象はなかったが、治安が良くなさそうだった」


「村同士の行き来も減っているそうですよ。街道の整備が悪くなっているとかで」


 ルゼのいうとおり、マーペラ村から伸びる街道は砂利を敷いたものだった。しかも、雨の影響が残り、そこかしこで土が剥き出しになっている状態だ。


「どうする? 手出ししにくい場所ではあるが」


「今回くらいならアルマスとルゼは自分の仕事をしただけと言い張れるのだけれど、わたしが本格的になにかするには少し準備が必要だわ」


 癖毛に触れながら、サンドラは言葉を続ける。


「私とアルマスから第一副帝に手紙を出しましょうか。二人とも聖竜領南部への開拓について、どこまで干渉すべきか悩んでいる体で。お父様やクロード様へも話を通しておけば、上の方で何らかの動きがでると思うわ」


「権力者から動いてくれるのは頼もしいな。しかし、時間がかかるだろう?」


「あわせて、南部の地域。ロウニィ地方の領主にも手紙を出すわ。挨拶を兼ねたものだけれど、届く頃にはお父様が魔法具で連絡して手を回しててくれるはず」


「頼もしいことだ。こういう時には」


「本当にね」


 しみじみと頷く俺とサンドラ。ロウニィ地方の領主には速やかに何らかの話が届き、俺達が動きやすい状況が整うに違いない。


「お願いばかりで悪いのだけれど、またアルマスには南部に行ってもらいたいの」


「構わないぞ。俺が向こうに行く間に、色々とやってくれるんだろう?」


 その問いかけに、サンドラが申し訳なさそうな顔のまま頷いた。


「本当はマノンのような人がもう一人か二人いれば任せて終わりなのだけれどね」


「俺やサンドラが行った方が話が早いということもある。ここは任せてくれ。それで、同行者はどうするんだ? またルゼか?」


 横で静かに座っていたルゼが目を輝かせた。本当に出かけるのが大好きだな。本業は医師で族長なのに。


「情報収集や問題に対処できる必要もあるから、旅慣れていて、南部の事情にも詳しい人がいいわね。……ドーレスとリリアにお願いしようと思うわ」


「どちらも仕事があると思うが、大丈夫か?」


「大丈夫。南部との行き来はリリアの建築事業とも関係してるし見ておきたいはずなの」


 そういえば、道が出来たら南部から人や材料の輸送をすると言っていたな。今のうちに現地の人々に顔を通しておくのもいいかもしれない。


「ドーレスは旅慣れた商人だから情報集めに頼りになるな。連絡を密にできるよう、魔法具ももっていこう」


「お願いするわ。なにかあれば、アイノさんから聖竜様に伝えてもらうの」


「ああ、それでいい」


 俺とアイノは間に聖竜様を挟むことで会話ができる。場所を選ばないし時間もかからない最速の連絡手段だ。ただ、聖竜様を連絡にこき使うような形になるため、頻繁には使えない。

「わたしの方でドーレスとリリアへ連絡するから二人はゆっくり休んでちょうだい。トゥルーズに頼めば好きなものを作って貰えるから……どうしたのルゼ?」


 話の途中で驚いた口調になったサンドラに導かれるように隣のルゼを見てみた。


「うぅ……もう一回、おでかけしたかったです……」


 聖竜領のエルフの森の族長が、涙目になっていた。

 彼女にとっては残念だが、しっかり自分の仕事をしてもらうとしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。



新作はじめました。宜しくお願いします。

作品リンク→『一部イベント特効ゲーマーの行くVRMMO』



書籍化します。
2025年8月末発売予定です。

作品リンク→『生まれ変わった最強魔術師は普通の暮らしを求めます 』

おかげ様で第2巻が発売中です。
画像をクリックで出版社の紹介ページに飛んでいきます。
html> キャラ紹介
発売日を過ぎてOKが出たので2巻のキャラ紹介口絵です。
読むときの参考にして頂ければと思います。
書籍版、発売中です。宜しくお願い致します。
画像をクリックで出版社の紹介ページに飛んでいきます。
html>
キャラ紹介
書籍販売後はカラー口絵掲載OKとのことでしたので、登場人物紹介を一巻より。
読むときの参考にして頂ければと思います。


ツギクルバナー cont_access.php?citi_cont_id=758394018&s

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ